10月24日
田中一村展の前期の最終日。作品の入れ替えがあるので、前期に行きたかったのですが、なかなか時間が取れず
無理かと思いましたが、午前中に和服の棚の配送がすんで、大方整理して午後出かけることができました。
若い頃の南画。
すばらしい。その筆のタッチ一つで描く。生き生きと躍動感のある枝や葉。とても十代とは思えない絵と書。
峻烈。描いているところが浮かんできそうなスピーディなタッチ。心に刺さるようなそんな線。それはゴッホの絵を見た時に
感じる感覚と似ていた。そして最後の奄美大島での暮らしはゴーギャンを思い浮かばせました。絵はルソーを連想させるものも。
出だしからパッションがほとばしり出ていて画壇から離れ、自己を貫いた生涯をたどりました。
エネルギッシュでパワフルな神童と言われた若いころの絵はあまり見たことがなかったと思いますが、素晴らしかったです。
古さを感じさせない色あいや個性的なフォルムや構図も。ペパーミントグリーンが光り、そして梅の枝や竹の葉の抽象画のような
描いている一村から直接何かが伝わってくるような絵画。とにかく毛筆のタッチが素晴らしいです。
白い花が輝きを放つ空間。ヤマボウシだったのですね。今まで見てきた絵から急に視界が開けたような新鮮な絵でした。
心機一転して再スタートしたこの絵が入選したのは川端龍子主宰の青龍社展でしたが、川端龍子と意見が合わず画壇を離れてから
は不遇でした。この絵が見たくて前期の展覧会に滑り込みました。と思ったら「白い花」は何点もあり、大きなこの絵は
後期も展示されます。
また、白い梅の襖絵ではまるで雪のように花が降って来そうでした。個人蔵とは贅沢な。
一村はお礼や、描いてあげたい人に絵を贈っていたようで今回はそういう作品も多く出されていて
とても貴重な展覧会でした。描いてあげる人が特定されていた全く商売とは違う絵の描き方でした。
一村の人生を映し出すように絵が流れて行きました。
神童と言われた子供時代。謎の芸大2ヶ月での退学。謎の多い生涯ですが、苦労も多かったようです。
別の仕事をしながら、スポンサーを頼りながら絵を描き続けたその後の生涯でした。
死後間もない頃初めて紹介された日曜美術館の番組はかすかな記憶があります。
自然、海や小石、里山、植物と鳥たち・・
この世界が描かれていました。鳥たちも幸せそう・・ 私は一村を孤高の画家とは思わない。何かそういう世界に
囲まれて生きていたと思います。たとえアカショウビンが岩の上に一羽ですくっと立っていても孤独ではないと
思いました。一村も寂しさはあったかもしれないけど孤独ではなかったような・・・
現代にこんな画家がいたとは・・
鳥や花の種類も多く見るのも楽しかったです。
軍鶏は若冲の方が迫力がありました。
トラツグミもかわいくて・・
うるさい尾長も楽しそう・・・
南国のアサギマダラ・・・
古さを全く感じない一村の絵。芸大の同期には東山魁夷がいたとのこと。
圧倒された展覧会でした。
参考)
決着の地 東京・上野で刻まれる新たな一村像 (Art Plaza Times)
「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」東京都美術館 着物でミュージアム Vol. 38 (ほとんどの作品が写っています。)
Oct. 24 2024 Ueno