庭戸を出でずして(Nature seldom hurries)

日々の出来事や思いつきを書き連ねています。訳文は基本的に管理人の拙訳。好みの選択は記事カテゴリーからどうぞ。

アラン

2007-01-29 12:50:21 | 拾い読み
「『何事も信じない人』は稀だ。何事も信じないのがむづかしいからではない。欺かれずしかも人を信じきるのがむづかしいのである。これは自分で見たままの人間を愛することだ」
<Aラン(本名エミール=オーギュスト=シャルチエ)


『俘虜記』を一往読み終えた。これは末尾、秋山俊の解説にでてくるアランの言葉だが、彼は「ともあれ、次のようなアランの冒頭の言葉は、それがそのまま大岡昇平の心の形をいうものだといっても、おかしくはない。」と記している。

この本では「サンホセ野戦病院」の章以降、嫌悪すべき類型的日本人が次々登場するが、確かに彼の人物描写には「自分が見たままの人間を愛する」空気が漂っていて、私の胸に爽やかな読了感を残している。

人を愛しながらその本質を見誤らない・・・先達の大岡評の正しさが少し分かったような気がする。


コメント
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