碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「だから私は推しました」は ヒロインの心理描写が丁寧

2019年08月15日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


NHK「だから私は推しました」は

ヒロインの心理描写が丁寧


放送中の「だから私は推しました」は、地下アイドルを推す(熱烈に応援する)オタク女子の話だ。主人公の遠藤愛(桜井ユキ)は一見どこにでもいそうなOLさん。最近失恋したが、原因のひとつはSNSでの過剰な自己アピールと「いいね!」の承認欲求だった。

一方の栗本ハナ(白石聖)は、地下アイドルグループ「サニーサイドアップ」のメンバー。ただし、歌もダンスも不得意な上に、コミュ障気味という困ったアイドルだ。そんなハナを見て、愛は思う。「この子、まるで私だ」と。そして全力で応援する日々が始まる。

まず、このドラマで描かれる「地下アイドルの世界」が興味深い。ライブの雰囲気、終演後の物販や交流、厄介なファンの存在、アイドルたちの経済事情など、かなりリアルだ。

脚本は森下佳子のオリジナル。昨年放送された「義母と娘のブルース」同様、ヒロインの心理が丁寧に書き込まれている。

また、徐々に自分を解放していくアラサー女子をメリハリのある芝居で好演している桜井ユキ。自分に自信の持てない弱気なアイドルがぴったりの白石聖。女優陣も大健闘だ。

それに、もしかしたら年末の「紅白歌合戦」に、劇中歌「おちゃのこサニサイ」を引っ提げて、サニーサイドアップが登場するかもしれない。もちろん会場には、サイリウムを一心に振りながらハナの名を呼ぶ、愛の姿があるはずだ。

(日刊ゲンダイ 2019814