碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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多部未華子にピッタリの意欲作「これは経費で落ちません!」

2019年09月05日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「これは経費で落ちません!」は

多部未華子にピッタリの意欲作

 

ドラマ10「これは経費で落ちません!」の舞台は中堅のせっけん会社。森若沙名子(多部未華子)は経理部員だ。


毎回、沙名子が何らかの不正や疑惑に気づくことで物語が動きだす。経費で購入した高級ブランド品や撮影機材の私的流用。取引先との契約更新を利用した不正。請求書や領収書に隠された真実を見抜く力が抜群なのだ。

とはいえ同じ会社の人間がしたことであり、時には深く追及しないほうがいい場合もある。沙名子は「うさぎを追うな!」と自分に言い聞かせたりするが、やはり不正を放ってはおけない。それが「経理部の仕事」だからだ。また、そんな沙名子のおかげで、当事者が決定的なダメージを受けずに済むこともある。このあたりの“機微”の描き方も見どころのひとつだ。

沙名子が持つ生真面目さ、情に流されない正義感、そして本当の意味の優しさ。そんなキャラクターが多部未華子にピッタリで、一昨年の秀作「ツバキ文具店~鎌倉代書屋物語~」(NHK)に並ぶ適役といえる。朝ドラ「つばさ」でヒロインを務めたのが10年前。アラサーとなり、さまざまな大人の女性に挑戦する攻めの姿勢に拍手だ。

そうそう、先週の放送にベッキーが登場した。彼女が演じる小ズルイ社長秘書と、経理部の新メンバー・麻吹(江口のりこ)との、ハブとマングースのような壮絶バトル。ぜひ続きが見てみたい。

(日刊ゲンダイ 2019.09.04