碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「サギデカ」木村文乃が圧巻 これから佳境のリアルドラマ

2019年09月19日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

 

「サギデカ」木村文乃が圧巻

これから佳境のリアルドラマ

 

漫画や小説が原作のドラマも結構だが、たまには面白いオリジナル作品を見てみたい。そんな人たちに勧めたいのがNHK「サギデカ」だ。

人公は特殊詐欺捜査が専門の警部補、今宮夏蓮(木村文乃)。悪質な詐欺組織を追っている。主な被害者は老人たちで、家族がトラブルに巻き込まれたと言って欺く基本的なものから、「地面師」グループによる犯罪に巻き込まれたケースまで、展開される詐欺事件はいずれもリアルだ。

夏蓮は捜査の過程で、電話で相手をだます優秀な「かけ子」だった加地颯人(高杉真宙)と出会う。「自殺したくなるほど働かせて微々たる給料しか払わない、合法なだけでケチで冷たいブラック会社より、ウチのほうが社員思いで合理的」だと言い張る加地。「やるんだったら本当にガメツイ年寄りをピンポイントで狙いなさいよ!」と怒りをあらわにする夏蓮。この取調室の場面は、木村が主演女優としての存在感を示して圧巻だった。

実は夏蓮にも加地と同様、過酷な過去があることが分かってきた。加害者と被害者。犯罪者と警察官。単純な対立軸だけでは見えてこない、社会や人間の深層に迫ろうとするこのドラマ、脚本は文化庁芸術祭大賞「透明なゆりかご」の安達奈緒子である。詐欺組織を率いる「番頭」(長塚圭史)や、その上に君臨する「首魁」(田中泯)との戦いもこれからが佳境だ。

(日刊ゲンダイ 2019.09.18)