京王電鉄「雨にぬれても」篇
日常のありがたさ思って
映画「明日に向かって撃て!」が、日本で公開されたのは1970年2月のことだ。伝説のギャングを演じたポール・ニューマンとロバート・レッドフォードはもちろん、2人に愛されたキャサリン・ロスの笑顔も忘れられない。
50年後、雨が降る夕暮れ。駅前の路上で一人の少女(清原果耶)がギターを抱えて歌っている。しかも、あの映画の挿入歌、B・J・トーマスの「雨にぬれても」ではないか。世代と選曲のギャップが意外で、懐かしいバカラックのサウンドに、つい足を止めてしまいそうだ。
「頭に雨つぶが落ちてくる。そんな憂鬱にも私は負けたりしない」という歌をバックに映し出されるのは、線路を守る人、車両を点検する人など、列車の安全運行を陰で支える人たちの姿だ。ふと日常が日常であることの有難さを思う。
少女の歌は続いている。雨も相変らず降り続いている。でも彼女が言うように、止まない雨はない。
(日経MJ「CM裏表」2020.02.09)