碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「法廷のドラゴン」は 飛び切り異色のリーガルドラマ

2025年01月31日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

上白石萌音「法廷のドラゴン」は

飛び切り異色のリーガルドラマ

 

これまで数多くのリーガルドラマが作られてきたが、上白石萌音主演「法廷のドラゴン」(テレビ東京系)は飛び切り異色の一本だ。

ヒロインの天童竜美(上白石)は、かつて女性初のプロ棋士を期待された将棋の天才。そんな彼女が一転して弁護士となった。

このドラマの面白さは、一にも二にも竜美が法廷を将棋盤に、裁判を対局に見立てて戦っていく趣向にある。

第1話は、押し買いの被害に遭った女性(松坂慶子)が夫の遺品を取り戻す、遺品返還請求訴訟だった。

竜美は、相手が玉を盤の隅に移動させて金や銀で脇を固める「穴熊囲い」の戦法を選ぶと予測。同様の囲いをつくる「相穴熊」で対抗する。だが、飛車に例えた証人という「駒」が悪手となり、苦戦を強いられる。

第2話では大学教授(加藤雅也)の研究を女性清掃員(山口紗弥加)が毀損したとする、損害賠償請求訴訟を担当。

彼女を救うための「捨て身の一手」として、両者が失ったものを比較する戦法に出る。それは、互いの持ち駒を点数化して勝敗や引き分けを決める「持将棋」の応用だった。

難しい裁判とわかっていても、「指す前から勝負が決まっている対局なんてありません!」と竜美。

何でも将棋に置き換える思考は、将棋に詳しくない者にとっても新鮮で興味深い。法廷で上白石が披露する、着物に袴の凛とした姿も見どころだ。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2025.01.29)

 


産経新聞で、「フジテレビ会見」についてコメント

2025年01月30日 | メディアでのコメント・論評

 

 

フジ会見 異例の10時間超

社員関与 改めて否定

「女性のプライバシー優先」

 

週刊文春が昨年12月26日発売号で元タレントの中居正広さんと女性との会食を巡るトラブルを報じた記事を巡り、フジテレビが1月27日に行った記者会見は、日付を超えて10時間以上に及んだ。

報道関係者ら437人が参加したこの記者会見で、多くの人が抱く疑問は解消されたのか。専門家は「中途半端な感じは否めない」などと物足りなさを指摘する。

第三者委へのつなぎ

17日の会見が正式参加を新聞社と通信社の記者に限定し、動画撮影を認めなかったのとは一転して、27日の会見はオープンで、フジテレビがCMなしで午前2時半過ぎまで中継を行った。

冒頭で港浩一社長と嘉納修治会長が辞任を表明。多くの企業CMの差し替えに至った現状への責任の所在を明らかにした。

メディア文化評論家の碓井広義氏は「開き直ってやれることをやった印象で、株主やスポンサーへの誠意を見せたといえなくもない」と一定の評価を下した。

ただ一方で、「3月末に第三者委員会の調査報告書が出るまでの対症療法やつなぎでしかない。2人の辞任は、段階的に責任を取る道を残したとも言える」と指摘する。

週刊文春は昨年12月、中居さんと女性のトラブルの発端となった会食にフジテレビ社員から誘われたと報道した。

これについてフジテレビは昨年暮れから一貫して否定。会見でも港氏が「聞き取りや通信履歴などを調査した」と根拠を述べ、記者からの追及にも揺らがなかった。

この問題で週刊文春電子版は今月28日、会食に誘ったのは社員ではなく中居さんだったと訂正、「お詫び」を掲載した。

ただ、同誌はフジテレビが女性社員にタレントを「接待」させる場を常態的に設けていたとも報じており、これについて港氏は「気が進まない人もいたのでは」と反省の弁を会見で述べた。

番組終了巡り批判

質疑は、令和5年8月に港氏が中居さんと女性とのトラブルを把握しながら、レギュラー番組終了まで1年半がかかった同局の対応に集中。

港氏は「女性のプライバシーを最優先した」と繰り返し、「番組終了で憶測を呼ぶことを憂慮した」「女性に伝わったら、どう刺激を与えるか心配した」などと釈明した。

こうした判断の是非を問う質問も集中したが、「第三者委員会の調査に委ねる」と繰り返した。

碓井氏は「一般常識と違う常識で動いていなかったのかという記者の問いかけに、フジテレビはちゃんと答えられていなかった」と印象を語った。

フジテレビの対応を問題視した企業の動きについて、新社長に就任する清水賢治氏は「配信広告にも影響が出始めている。4月期の改編のセールスは事実上、止まっている」と厳しい状況を語った。

遠藤龍之介副会長も、今秋に同局と東京都が参加するイベント「東京お台場トリエンナーレ2025」について「予定通りできるとは思わない」と述べた。

「あきれたのでは」

港氏が言いよどむと怒号が飛んだり、記者の長い主張に「早く質問を」と進行役が促したりする場面もあった。

「記者の態度や物言いにも、多くの視聴者があきれたのでは」と碓井氏。会見全体について「長い割にトラブルへの会社の関与も、企業風土の問題も不明瞭で中途半端な感じは否めなかった」としている。

(産経新聞 2025.01.29)


さよなら、森永卓郎さん。

2025年01月29日 | 日々雑感
2025.01.28
 
 
 
 
 
28日、
経済アナリストの
森永卓郎さんが、
お亡くなりになりました。
 
2023年12月に
ステージ4のがんを公表。
 
その後も
本の執筆や番組出演など
旺盛な活動を続けていました。
 
享年67。
 
森永さん、
おつかれさまでした。
 
合掌。
 
 
 
 
お元気な頃、番組収録で。


大河ドラマ『べらぼう』は、なぜ「もやもや」するのか

2025年01月28日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

大河ドラマ『べらぼう』は、

なぜ「もやもや」するのか

 

今年のNHK大河ドラマは『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』。

主人公の蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう/横浜流星)は実在の人物です。江戸時代の中頃に「版元(はんもと)」、つまり出版社を経営していました。

重三郎の名前が広く知られているのは、北川歌麿や東洲斎写楽といった浮世絵師を世に出したからでしょう。

また、十返舎一九や曲亭馬琴といった物書きたちも周囲に集まりました。彼らに創造の場を提供していった重三郎は、江戸の名プロデューサーだったのです。

ただ、今回の大河には、何やら「もやもや」するものがあります。

物語の主な舞台は、遊郭(ゆうかく)である「吉原」。

第1話の冒頭で、吉原についての説明がありました。語り手は綾瀬はるかさん扮する、九郎助稲荷(くろすけいなり)です。

「吉原は男が女と遊ぶ町。幕府が公認した江戸唯一の天下御免の色里(いろざと)です」と、笑顔で話していました。

では、「遊ぶ」とはどんなことで、「色里」とはどんな場所なのか。

まるで「皆さん、ご存じですよね」という口調でしたが、日曜夜8時の放送は子供も含む多様な人たちが視聴しています。誰もがご存じではありません。

九郎助稲荷(綾瀬)の解説によれば、当時、吉原には三千人もの「女郎(じょろう)」がいたそうです。

女郎は「遊女(ゆうじょ)」とも呼ばれますが、このドラマでは女郎が使われています。

女郎とは「売春」をしている女性たちであり、幕府が「売買春」を管理するために作ったのが吉原という遊郭です。

家族のために高額な前借金をせざるを得なかった彼女たちは、遊郭で働きながらその返済をしていました。

形式的には、完済すれば遊郭を出られるので、いわゆる奴隷ではないそうです。また、人身売買とも違うといわれています。あくまでも形式上ですが。

しかし、どのような形であれ、売買春は「性搾取(せいさくしゅ)」です。

人間としての総体から「性」の側面を切り離し、それを消費するのが性搾取という行為です。

女郎を単なる性の対象と見るなら、彼女たちの人間性や人格は無関係です。

人間として見ないならば、蔑視や暴力も当然のこととなります。第1話にも、死亡した女郎たちが裸で放置される衝撃的な場面がありました。

ドラマの中の重三郎は、すでに積極的な出版活動に励んでいます。

彼が手掛けた『吉原細見』も、女郎たちを生け花に見立てた『一目千本』も、今では高い文化的価値が認められています。

しかし当時は、あくまでも遊郭の客のためのガイドブックでした。例えるなら、新宿・歌舞伎町の入り口で「風俗情報誌」を売るようなものです。

吉原そのものについても、「花開く江戸文化」といった現代の価値観に基づいて描くことは、どこか危うい。

それが「もやもや」の遠因ではないでしょうか。

 


これまでが〈序章〉かもしれない「フジテレビ問題」

2025年01月27日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

これまでが〈序章〉かもしれない

「フジテレビ問題」

 

患部が露呈した「記者会見」

一連の「フジテレビ問題」の患部が一気に露呈したのが、1月17日の記者会見です。

フジ上層部は、自分たちが置かれた危機的な状況が分かっていないのではないかと感じさせる会見でした。

その会見のやり方や港浩一社長の発言も問題でした。まず、会見では、他の報道機関に対して、さまざまな制限をかけていたこと。

そもそもテレビという映像を使った報道機関にもかかわらず、映像をシャットアウトするなど、本来ではありえないことが起きました。

報道機関としては、他の企業などでの不祥事が起きたときにはカメラを持ちこんで伝えているわけです。

しかし、今回は自分たちにカメラが向けられるとそれを遮断しようとした。つまり、報道機関としての姿勢そのものが問われる、大きな勘違いをしていることまでが明るみになりました。

メディアを制限し、何を聞かれても『調査委員会にゆだる』と繰り返すばかりで、報道機関としての役割を自ら放棄してしまった17日の会見。

フジには検証能力も自浄能力もないと言っているようなものです。こんな会見なら、やらないほうがマシだったかもしれません。

また、阪神・淡路大震災から30年という節目の17日に会見をぶつけてきたことにも違和感を覚えました。

この日にメディアが報じなければならないことはたくさんある。それでフジの問題の扱いが小さくなるという計算があったとすれば言語道断です。

スポンサー企業からの「NO!」

スポンサー企業が離れて初めて重大さに気づき、フジ上層部が慌てているのが現状です。

不祥事発覚などで企業側が個別の番組のスポンサーを降りることはありますが、今回のようにフジテレビという放送局そのものに対して『NO!』を突きつけたのは「前代未聞」です。

フジでCMを流すことが自社のイメージを毀損(きそん)すると判断したナショナルクライアントが、いち早く手を引いた。この流れは止まらず、多くの企業も追随することになりました。

トラブルを把握した時点で、同局が動かなかったということが大きな問題です。これはもう「隠蔽した」と捉えられてもおかしくない動きをしているわけです。

それについて、第三者機関によってきちんと調べたり、事実を確認したりすることが一切なく、まるで何事もなかったかのようにそのままやってきた。

中居さんをめぐる「問題案件」は、確かに正確なことはまだ出てきていませんけれども、伝えられていることから判断しても、大きな人権侵害が起きていたことは少なくともわかります。

ですが、中居さんという人気タレントを守るため、番組や自分たちの会社を守ることで被害者へのケアではなく、問題をすべて押し込めてしまった。

乱暴な言い方をすれば放送局の、テレビ局としての「自滅行為」のような振る舞いだったと思います。

「対症療法」では乗り切れない

昨年末の週刊誌報道があった時点で、第三者機関による調査を行い、それを踏まえて記者会見を開いていれば、こんな形の騒動には発展していなかったかもしれません。

しかも、フジテレビの動きを見ていると、対症療法というか…目の前で起きたトラブルを単に防いでいる感じがします。

問題の根本的な部分を理解しないままに、目の前の攻撃をひとつづつかわすことに注力している。問題を誤魔化したい、隠したいという姿勢が続いているように思います。

27日(月)に行われるという新たな会見が、こうした様々な疑問や指摘にきちんと答えるものでないと、フジテレビの存続にかかわる危機はますます回避できなくなるでしょう。

 


【新刊書評2025】 豊崎由美『どうかしてました』ほか

2025年01月26日 | 書評した本たち

 

 

「週刊新潮」に寄稿した書評です。

 

豊崎由美『どうかしてました』

集英社 1870円

著者初のエッセイ集である。最大の特色は、いかにして「辛口書評家」と呼ばれる現在に至ったのかが明かされることだ。現在の自分と読んだ本をめぐる話の中に過去が浮上してくる。団地っ子だった少女時代。若くして亡くなった姉が本を読む姿。印度哲学科卒業後、活字業界底辺部での彷徨。そして書評という天職との出会いと驀進。それは自分の好きなものを守るために「応援する」仕事だった。

 

河村季里『旅と食卓』

角川春樹事務所 1870円

有名女優との逃避行を小説にした『青春の巡礼』から約45年が過ぎた。80歳となる作家の新刊は、パリ・南仏への旅を綴る随筆集だ。記されるのは美食と美術への関心が中心となっている。トリュフのスープや仔羊のローストなどを味わいつつ、セザンヌやルノアールやゴッホに関わる場所を訪ねて回る贅沢な旅。度々回想されるのは、若き日の世界放浪だ。過去と現在が交差する〝傘寿の巡礼〟である。

 

フランク・テタール:著、蔵持不三也:訳

『地図とデータで見る宗教の世界ハンドブック』

原書房 3850円

現在も続く世界各地の紛争。その実態を読み解く太い補助線が宗教である。権力に利用される形で緊張の原因や紛争の要素となっているからだ。パリ第1大学教員で地政学が専門の著者は、宗教が権力やアイデンティティや地政学などに及ぼす大きな影響を明らかにしていく。たとえば、キリスト教と並ぶ主要な一神教であるイスラム教を知ることで、シーア派の分離や権力闘争の意味も見えてくる。

 

安部公房、三島由紀夫、大江健三郎『文学者とは何か』

中央公論新社 1650円

三人の作家による鼎談や対談が全五編、発表年代順に収められた。昭和33年の鼎談では批評の功罪が話題となる。三島は「小林秀雄というのは偉い人だと思う」と語り、若き大江は「江藤淳を高く評価しています」と吐露する。また41年の安部と三島の対談では、伝統の最高理念を死ぬときに授かると言う三島を、「遅すぎはしないかな(笑)」と安部がからかう。どちらも存命であれば百歳だ。

(週刊新潮 2025.01.23号)

 

 


【気まぐれ写真館】 グラデーションの夕景

2025年01月25日 | 気まぐれ写真館

2025.01.25

 


日刊ゲンダイで、テレビ局「政治家の身内」について解説

2025年01月25日 | メディアでのコメント・論評

 

 

有事の“お守り”?

テレビ局「政治家の身内」ゴロゴロの歪んだ思惑

 

フジテレビ問題がここまで社会を騒がす事態になると、24日に召集される通常国会でも取り上げざるを得まい。

すでに放送行政を所管する村上誠一郎総務相は、フジの「なんちゃって」調査委員会に異例のダメ出し。フジの解体や電波停止処分を求める世論が高まれば、国会議員も無視できないだろう。

ただ気になるのは「身内」の存在だ。テレビ局の社員にはなぜかタレントやスポーツ選手ら有名人、さらにはスポンサー企業の子息・子女や親類が多い。

国会議員の2世もご多分に漏れず、ゴロゴロいる。小渕恵三元首相の次女・優子元経産相はTBS出身。石原慎太郎元都知事の長男・伸晃元幹事長も、日本テレビの政治部記者あがりだ。  

渦中のフジも例外ではない。安倍晋三元首相の甥で岸信夫元防衛相の長男・信千世衆院議員は、元フジの社会部記者。同期入社には加藤勝信財務相の長女もいる。

他にも中川昭一元財務相と郁子前衆院議員夫妻の長女や、中曽根康弘元首相の孫(長女の息子)、つまり弘文元外相の甥で康隆衆院議員のいとこもフジに入社している。

加藤鮎子前こども担当相の姉は元TBS社員だが、夫はフジの総務局長。父・紘一元幹事長の娘婿にあたる。

■「オールドメディア」と批判されるゆえん

「テレビ局が多くの政治家の子供を採用することには、何らかのメリットがあるのでしょう。万が一の有事に備えて恩を売っておく、という考えもあるかもしれません。今まさにその有事がフジテレビに起きています。

もちろん子供を“人質”に取るようなロコツなことはしないまでも、仮に身内の職場が停波に追い込まれるような事態になれば、その判断を迫られる政治家側は躊躇するはず。政治家の子供を抱え込めば“切り札”とは言わないまでも、有事の軽減を期待する“お守り”のような存在にはなり得ます。

メディアには『権力監視』という重要な役割があるのに“政治家の身内が内部にいて、まともに政権批判ができるのか″とも言えますし、逆もまたしかりです。日本の政界とメディアのなれ合い関係を感じます」(メディア文化評論家・碓井広義氏)  

この血統優先の旧態依然とした構図こそ「オールドメディア」が批判されるゆえんだ。もはや「魔除け」をありがたがる時代でもあるまい。

(日刊ゲンダイ 2025.01.24)

 


【気まぐれ写真館】 「神楽坂」界隈

2025年01月24日 | 気まぐれ写真館

 


現代ビジネスで、「フジテレビ問題」について解説

2025年01月24日 | メディアでのコメント・論評

 

中居正広「芸能界引退」のウラで

フジテレビの「自滅行為」と

問われる「責任」

 

タレント・中居正広の女性トラブル問題を発端に、フジテレビが窮地に立たされている。渦中の中居は1月23日に突然、引退を発表した。その一方でフジテレビではスポンサー企業のCMの差し止めや見直しが続いており、その数は75社以上にのぼっている。

中居正広が突然の引退発表

フジテレビの社員が、中居と女性との飲み会をセッティングし、その際に「不適切な接待」があったことが報じられて以降、大騒動となっている。

すでにレギュラー番組が打ち切られることが伝えられていた中居は、1月23日に自身のファンクラブサイトを通じ、芸能活動の引退を突然表明した。

《私、中居正広は本日をもって芸能活動を引退いたします。なお、会社であります【(株)のんびりなかい】につきましては、残りの様々な手続き、業務が終わり次第、廃業することと致します》

文中ではトラブルのあった女性や関係者に向けても謝罪し、ファンに向けては、

《ヅラ(※ファンの総称》の皆さん一度でも、会いたかった 会えなかった 会わなきゃだめだった こんなお別れで、本当に、本当に、ごめんなさい。さようなら…》

と別れの言葉を述べていた。

「中居さんは1月9日に発表された声明の中で、トラブルが合ったことを認めた一方で一部の報道について否定、さらに示談が成立したことを報告していました。ただ、『今後の芸能活動について支障なく続けられることになりました』と記していたことから批判が相次いでいました」(週刊誌芸能記者)

引退発表直後には、中居のオフィシャルサイトもSNSも接続することができない状態に。

「一部では心と身体に傷を負った被害者の悲痛な訴えが報じられました。こうした声や事態を重くみたことで、中居さんは引退を決めたのでしょう。ただ、引退したことで記者からの直撃にも『一般人なので』と取材拒否もできる。会見を開く必要もありません。本人は責任をとったように思わせたいのでしょうが、これは‟逃げ”と捉えられてもおかしくはない」(前出の週刊誌芸能記者)

中居は引退したものの、その発端となったフジテレビでは、引き続きこの問題がくすぶり続けることになるだろう。

女性社員による接待は業界で常態化

そもそも、フジテレビはすでに危機的な状況に陥っている。とりわけ悪手だったのは1月17日に開かれたフジテレビ・港浩一社長の記者会見で、騒動に火に油を注ぐ結果となった。

顕著なのがスポンサーの反応だった。トヨタ自動車や花王、キッコーマンなどの企業が同局でのCM差し止めや見直しを始め、その数は75社以上にのぼった。多くの番組でACジャパンの広告が流れる異例の事態となっている。

「企業は自社のイメージが損なわれることを非常に嫌うため、こうした問題が起きれば当然、自社を守るためにCMを差し止めます。これまでも番組や出演タレントが不祥事を起こした際にはその番組のスポンサーが降板する、CMを差し止める、ということは何度もありました。しかし、今回のように放送局自体に“NO”を突きつけるのは初めてのことです。前代未聞というか、歴史的な事件だと思います」

そう説明するのは、元上智大学教授で、メディア文化評論家の碓井広義氏。

番組のプロデューサーやディレクターらが女性アナウンサーや女子社員らを有名タレントとの飲み会や接待の場に呼ぶことはフジテレビだけではなく、「ほかの局でも行われていた」と複数のテレビ局関係者が明かしている。

だが、社員らは女性に危害が加えられないように、タレントらからの無茶な注文からも庇い、先に帰すなどするのが一般的だ。

しかし、一部にはタレントに「上納」するかのようなやり方で、女性アナウンサーや女性社員を利用していた社員らもいたとみられる。もし、フジテレビでハラスメントのあるような接待が日常的に繰り返されていたとすれば、会社の根幹に関わる重大な事態になる。

さらに、港社長の会見で、中居と女性とのトラブルを昨年から把握していたことも問題をさらに深刻なものとした。

「その会見のやり方や港氏の発言も問題でした。まず、会見では、他の報道機関に対して、さまざまな制限をかけていたこと。そもそもテレビという映像を使った報道機関にもかかわらず、映像をシャットアウトするなど、本来ではありえないことが起きました。

報道機関としては、他の企業などでの不祥事が起きたときにはカメラを持ちこんで伝えていくわけですが、今回は自分たちにカメラが向けられるとそれを遮断しようとした。つまり、報道機関としての姿勢そのものが欠如していた大きな勘違いをしることまでが明るみになった」(前出の碓井氏、以下「」も)

被害社員よりも中居正広を守った

トラブルを把握した時点で、同局が動かなかったということも指摘されている。

「これはもう隠蔽したと捉えられてもおかしくない動きをしているわけです。それについて、第三者機関によりきちんと調べたり、事実を確認したりすることが一切なく、まるで何事もなかったかのようにそのままやってきた。

確かに正確なことは出てきていませんけれども、伝えられていることから判断しても、大きな人権侵害が起きていたことは少なくともわかる。

ですが、中居さんという人気タレントを守るため、番組や自分たちの会社を守ることで被害者へのケアではなく、問題をすべて押し込めてしまった。乱暴な言い方をすれば放送局の、テレビ局の自滅行為のような記者会見だったと思います」

前出の碓井氏は「昨年末の週刊誌報道があった時点で、第三者機関による調査を行い、それを踏まえて記者会見を開いていれば、こんな騒動には発展していなかった」と指摘する。

そのため、港社長による記者会見は、あまりにも短絡すぎたと言ってもいいだろう。自分たちの行為がさらなる危機的な状況を引き起こすことを予見できていなかったからだ。

「フジテレビの動きを見ていると、対処療法というか…目の前で起きたトラブルを単に防いでいる感じがします。問題の根本的な部分を理解しないままに、目の前の攻撃をひとつづつかわすことに注力している、問題を誤魔化したい、隠したいという姿勢が続いているように感じます」

問題の本質がわかっていない社員たち

それは朝の情報番組などからも現れている。記者会見の様子や自社の問題を取り上げてはいるが、それは「見せかけにしか過ぎない」と前出の碓井氏は指摘する。

さらに1月20日の「めざまし8」(フジテレビ系)で同局の酒主義久アナウンサー(37歳)の発言も悪手だった。涙ながらに「13年働いてきて一度も辞めたいって思ったことない」と訴えたことも、さらなる波紋を広げたのだ。

「大好きな会社で先輩も後輩も含めて、大好きな仲間がいろいろ苦しんでいる姿を見て……」などと語ったが、この発言には視聴者から批判が相次いだ。

まさにフジテレビの「古き悪しき体質」を象徴するかのような発言。

テレビディレクターの鎮目博道氏は「この発言自体が時代遅れだ」と述べ、「批判されるべきことを認識せず、ただ会社を守ろうとする姿勢が見えている」と批判する。

今回の騒動は、フジテレビの過去20年、30年の体質が現れていることを示している。20年、30年前であれば取り繕えたことであっても、現代では通用しない。

企業のスポンサー離れが、その現れだ。

経営陣は港社長の記者会見で騒動を収束させようと考えたのかもしれないが、むしろ批判の声は高まり、スポンサー企業はドミノ倒しのように離れた。ここまできてようやく危機感を抱き始めたのではないだろうか。

「関係者によると来月中にもフジテレビで放送されるCMは、ほぼゼロになるのではないか、と懸念されています」(全国紙経済部記者)

当の中居は表舞台で発言をすることもなく、電撃引退。フジテレビはスポンサー企業にも見放され、視聴者からは批判が続く。このままでは局の存続にもかかわるのではないか――。

(現代ビジネス 2025年1月23日)


大河ドラマの「舞台」

2025年01月23日 | 「しんぶん赤旗」連載中のテレビ評

 

 

大河ドラマの「舞台」

 

新たなNHK大河ドラマが始まった。「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」である。

主人公の蔦屋重三郎(横浜流星)は実在の人物で、江戸時代の中頃に版元、つまり出版社を経営していた。重三郎の名前が広く知られているのは、北川歌麿や東洲斎写楽といった浮世絵師を世に出したからだ。

また十返舎一九や曲亭馬琴などの物書きたちも周囲に集まった。重三郎はいわばプロデューサーとして彼らに創造の場を提供していく。

ただ今回の大河には、何やら「もやもや」するものがある。物語の主な舞台が遊郭である「吉原」なのだ。

第1話の冒頭で吉原についての説明があった。語り手は綾瀬はるか扮する九郎助稲荷(くろすけいなり)だ。「吉原は男が女と遊ぶ町。幕府が公認した江戸唯一の天下御免の色里です」と笑顔で言っていた。

では「遊ぶ」とは、「色里」とは何なのか。まるで「皆さん、ご存じですよね」という語り口だったが、日曜夜8時の放送は子どもも含む多様な人たちが視聴している。誰もがご存じではない。

当時、吉原には三千人もの女郎がいたという。女郎は売春をしている女性たちであり、幕府が売買春を管理するために作ったのが吉原だ。

家族のために高額な前借金をせざるを得なかった女郎たちは、遊郭で働きながらその返済をしている。完済すれば遊郭を出られるので奴隷ではないし、売買されたわけでもない。

しかし、どのような形であれ売買春は性搾取だ。人間としての総体から「性」の側面を切り離し、それを消費するのが性搾取である。

女郎を単なる性の対象と見るなら、彼女たちの人間性や人格は無関係だ。人間として見ないならば、蔑視や暴力も当然のこととなる。第1話にも死亡した女郎たちが裸で放置される衝撃的な場面があった。

ドラマの中の重三郎は、すでに積極的な出版活動を始めている。とはいえ、今や文化的価値が認められている「吉原再見」も当時は遊郭のガイドブックであり、新宿・歌舞伎町の入り口で風俗情報誌を売るようなものだ。

吉原そのものについても、「花開く江戸文化」といった現代の価値観で描くことはどこか危うい。それが「もやもや」の遠因ではないだろうか。

(しんぶん赤旗「波動」2025.01.23)

 


【気まぐれ写真館】 散歩の途中で・・・

2025年01月23日 | 気まぐれ写真館

2025.01.22

 

 


「プライベートバンカー」バブル崩壊期の若者たちの 30年後を見るようで…

2025年01月22日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

バブル崩壊期の若者たちの

30年後を見るようで…

唐沢寿明主演

「プライベートバンカー」

 

面白い題材を持ってきたものだ。木曜ドラマ「プライベートバンカー」(テレビ朝日系)である。プライベートバンカーとは、富裕層のための資産管理・運用を専門とする金融のプロフェッショナルだ。

主人公の庵野甲一(唐沢寿明)が際立っているのは、顧客の資産を守るためならどんな雑務も厭わず、あらゆる手段を駆使することだ。

現在の雇い主は外食業界のドン、天宮寺丈洋(橋爪功)。その依頼で、投資詐欺に遭った老舗だんご屋の主人・飯田久美子(鈴木保奈美)を救ったり、天宮寺家の長男で常務取締役の努(安井順平)が抱える愛人問題を解決したりしてきた。

このドラマの特色は、物語を通じて「資産」や「投資」や「相続」に関する制度や仕組みが明かされ、そこから生まれるサスペンスや悲喜劇を堪能できることだ。

また唐沢が演じる庵野のキャラクターが見る側を飽きさせない。銀髪に黒ぶちメガネ。雨傘を手にした英国紳士風のたたずまい。金融の知識や経験から繰り出す奇手・奇策。時々、カメラ(視聴者)に向って独白するが、その本心は見通せない。

そんな庵野を「マネーの師」と決め、弟子入りしたのが、だんご屋の久美子だ。

唐沢と鈴木が並ぶと、往年の青春ドラマ「愛という名のもとに」(フジテレビ系)が思い浮かぶ。バブル崩壊期の若者たちの30年後を見るようで、何やら感慨深い。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2025.01.21)

 


日刊ゲンダイで、「フジテレビ問題」についてコメント

2025年01月21日 | メディアでのコメント・論評

 

 

経営危機も深刻化

果たして国や国会はどう対応?

「フジから免許を取り上げろ」の正論

 

火に油を注ぎ、このテレビ局に真相究明も自浄も任せられないことがハッキリした社長会見。スポンサーは蜘蛛の子を散らすように逃げ出し、恐らく国会でも追及必至、BPOも動き出しそうな中、さあ、政治はどう動く?

  ◇  ◇  ◇

一体、何のための社長会見だったのか。

元SMAPの中居正広の女性トラブルをめぐり、幹部社員の関与が「週刊文春」などに報じられているフジテレビ。昨年来、港浩一社長はじめフジ上層部は「社員の関与はない」と断言し、知らぬ存ぜぬを決め込んできた。先週末の17日にようやく、この問題について会見を開いたものの、あまりにナメた対応に世論は猛反発だ。問題の沈静化どろか、火に油を注ぐ格好になっている。

フジは会見から週刊誌やネットメディアを締め出し、参加できたのは「ラジオ・テレビ記者会」という記者クラブ加盟社のみ。しかも、動画撮影は禁止ときた。テレビ局の会見でテレビカメラ禁止だなんて、噴飯モノだ。会見終了までニュース番組などでの情報発信も認められなかった。では、会見の時間帯にフジは何を放送していたかといえば、トム・ハンクスとメグ・ライアンが共演したラブコメディー映画「めぐり逢えたら」だった。

メディア文化評論家の碓井広義氏が言う。

「フジ上層部は、自分たちが置かれた危機的な状況が分かっていないのではないかと感じさせる会見でした。メディアを制限し、何を聞かれても『調査委員会にゆだる』と繰り返すばかりで、報道機関としての役割を自ら放棄してしまった。フジには検証能力も自浄能力もないと言っているようなものです。こんな会見なら、やらないほうがマシだったかもしれません。阪神・淡路大震災から30年という節目の17日に会見をぶつけてきたことにも違和感を覚えました。この日にメディアが報じなければならないことはたくさんある。それでフジの問題の扱いが小さくなるという計算があったとすれば言語道断です」

■CMは次々と「AC広告」に

フジの港社長は今後、「第三者の弁護士を中心とする調査委員会」を立ち上げると説明したが、時期やメンバーは未定だという。それに、この調査委員会は日弁連のガイドラインに基づく「第三者委員会」とは別物だ。紛らわしい言い方でゴマカしていたが、「第三者の弁護士を中心」とした社内調査では、どこまで独立性が担保されるか分からない。真相究明なんてハナから期待できそうにないのだ。

社長の会見直後からSNSを中心に批判の声がみるみる広がり、スポンサーも蜘蛛の子を散らすようにフジから引き始めた。

すでに大手スポンサーのトヨタ自動車、日本生命保険、明治安田生命保険、NTT東日本などが当面のCM差し止めを決定。フジの放映番組はCMが次々と「公益社団法人ACジャパン」に差し替わっている。 

「スポンサー企業が離れて初めて重大さに気づき、フジ上層部は慌てているのではないか。不祥事発覚などで企業側が個別の番組のスポンサーを降りることはありますが、今回のようにフジテレビという放送局そのものに対して『NO』を突きつけたのは前代未聞です。フジでCMを流すことが自社のイメージを毀損すると判断したナショナルクライアントが、いち早く手を引いた。この流れは止まらず、他社も追随することになるでしょう」(碓井広義氏=前出)

大株主の外資ファンドからの圧力で会見を開いたものの、逆効果でスポンサーが続々と離脱。株価下落や視聴率低下も避けられない。経営危機が深刻化すれば、株主代表訴訟を起こされる可能性もある。

もはや報道機関を名乗る資格はない

発端は中居と女性とのトラブルだとしても、これはフジテレビという組織の問題だ。もはや経営陣が辞めて済む話でもないが、このまま誰も責任を取らなければ、フジを取り巻く環境は悪化する一方だろう。ネットを中心に、「フジから放送免許を取り上げろ」という声も日増しに大きくなっている。

報じられているように、フジ幹部が女性社員をタレントに“上納”することが常態化していたとすれば、重大な人権問題である。そんな暴挙が横行し、見過ごされてきた企業風土は報道機関として適切なのかという疑問が視聴者の間に急速に広がっているし、この問題が表面化してからのフジの対応は組織的な隠蔽と言われても仕方がない。

「公共の電波を預かるテレビ局が取材制限をし、会見の中継もさせないというのでは、国民の知る権利に応えていないことになる。他の企業や政治家の不祥事には、フジも遠慮なくテレビカメラを向けてきたはずです。今後、不祥事会見などで『フジと同様にテレビ撮影はNG』と言われたらどうするのか。悪しき前例をつくったフジには抗議する資格すらないのです。『社会の公器』が聞いて呆れる。フジにはもはや報道機関を名乗る資格はなく、メディアとしての使命を果たすことはできません」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

■ジャニーズと同じ道をたどる

フジはこれまでも「テラスハウス」に出演していた女性が亡くなった件など人権や倫理に関する問題で「放送倫理・番組向上機構(BPO)」からたびたび指摘を受けてきた。今回も、BPOが動き出す可能性がある。

BPOの委員を務めたことがあるジャーナリストの斎藤貴男氏も本紙取材に対し、「この問題こそ、放送界の自主規制機関であるBPOで取り上げるべき」「BPOの審査対象は個別の番組だが、中居さんの出演番組という切り口でフジの問題を取り上げることができるはずだ」と話した。

「人権問題としても、メディアのあり方としても重大な疑義がありますから、今月から始まる通常国会でも取り上げる必要があるでしょう。フジテレビは政治家の子息が数多く入社していることでも有名ですが、そういうコネで不祥事を隠蔽できるような時代ではありません。問題に無理やりフタをしようとしても、世論が許さない。フジテレビが免許事業者としてふさわしいのか、国会できっちり審議すべきです」(五十嵐仁氏=前出)

自民党は第2次安倍政権下で放送法の「政治的公平性」をめぐる解釈変更を画策した。「ひとつの番組でも判断し得るケースがある」と「停波」までチラつかせたものだ。今回は番組どころか、テレビ局全体の問題だが、重大なコンプライアンス違反があった場合、果たしてどう対応するつもりなのか。

ただでさえ少数与党で国会運営は綱渡りなのに、野党の追及は必至だ。創業者の故ジャニー喜多川氏による性加害問題も、国会の野党ヒアリングなどで被害者が証言して事態が大きく動き出した。事務所が性加害を認め、被害者への補償業務も始まった。

ジャニーズの問題は、長年にわたって見て見ぬふりをしてきたテレビも“共犯者”だが、フジテレビは一連の経緯から何も学んでいないように見える。隠蔽体質や後手後手対応、お粗末会見から火だるまになった流れはそっくりだ。

タレントのテレビ出演やCM起用の見合わせが相次ぎ、結局、ジャニーズ事務所は消滅。このまま行けば、フジテレビも同じ道をたどるしかない。

(日刊ゲンダイ 2025.01.20)

 


言葉の備忘録432 人は・・・

2025年01月20日 | 言葉の備忘録

 

 

 

 

人は皆、

与えられた役柄のなかで

生きている。

 

 

山崎 努

『「俳優」の肩ごしに』