「週刊新潮」に寄稿した書評です。
宮崎駿
『宮崎駿イメージボード全集1 風の谷のナウシカ』
岩波書店 4620円
映画製作におけるイメージボードとは、作品の世界観やビジュアルを共有するために描かれるスケッチや絵だ。宮崎駿にとっては映画全体の雰囲気や魅力を自身が探るためのものでもある。公開を前提に描かれていないからこそ、創造の原点に触れることができる貴重な資料だ。本書は『風の谷のナウシカ』全131枚を完全収録。原画と同じか近いサイズの精緻な図版が見る者の想像力を強く刺激する。
早乙女宏美
『ストリップ劇場のある街、あった街~浅草・新宿・船橋・札幌の〈ピンク文化〉とそれを支えた人びと』
寿郎社 2750円
1984年、著者は日活ロマンポルノで映画デビュー。2年後、ストリップ劇場の舞台に立ち、21年間にわたって出演を続けた。やがて劇場の歴史を知るために各地を訪ね、人を探して話を聞いてきた。本書はその集大成だ。ストリップショーの盛衰を実感する浅草。歌舞伎町の風俗産業と劇場の関係。札幌に唯一残っていた劇場の創設から閉館まで。人間的な、あまりに人間的な業界の実相がここにある。
市古憲寿『昭和100年』
講談社 2310円
今年は「昭和100年」にあたる。社会学者の著者が、今も残る「昭和」を縦軸に、オリンピックや万博といった「昭和」的なメガイベントを横軸に、過去と現在を検証していくのが本書だ。170年にわたって人類の未来をプレゼンテーションしてきた万博は、今回何を提示できるのか。科学や宇宙が明るい未来を語った時代は再び訪れるのか。著者が発見した昭和の「しぶとさ」がじわりと立ち上がる。
(週刊新潮 2025.01.30号)