10年も前の作品で、直木賞候補になったらしい。先日、古書店に行けども目的の本はなくて、105円でこの本、他を買った。
たまにはやらかめの本も読むべ・・・と買って、これはなかなかに正解でしたね。面白かったです。主人公リョウは20歳、大学にもめったに行かず、バーテンのバイトをしている。客として現れた中年女性に誘われ、女性相手のcall boy=売春夫を始める。りゅうはさまざまな女性のさまざまな欲望に出会ううち、その果てを見たいと思うようになる。
リョウの真面目な女友達が警察に通報し、経営者は逮捕され、リョウにはリュックサックいっぱいの現金が残されて小説は終わる。小説の中に流れる時間はたった一夏、その夏はリョウにとってあまりにもたくさんのことがあった、ひりひりとするような日々だった。
性描写が秀逸、読者はそれを読みながら、人間存在の深淵をも覗き込む。手順を書くだけの凡百の小説とは明らかに一線を画す書き方。さすが直木賞作家。どんな過激な場面も、澄んだ湖のようにいやらしくないのは、主人公が冷静で、それを彫琢した文章で読ませる職人技の所以か。
なんかこれを原作にして漫画にもなったそうです。筋立ては破たんがなく、登場人物のキャラも書き分けられていて、これが原作なら、漫画家も描きやすかったのではないかと思う。