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■■ 2 再会と転機 3
【本書の読み方】
本書は、現代情景と階層部分を並行して話が展開する新しい試みをしています。読みづらい部分もあろうかと思いますので、現代情景部分については【現代】と、また過去の回想シーンについては【回想】と表記します。
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【回想】
一九八〇年代前半のバブルが始まる前のことだった。幸育雄が、社長を引き受けた直後のこと、以前勤務していた印刷会社の主催で講演会が開催される案内書が届いた。『二十一世紀を迎える前に激変する印刷業界の技術と経営』というタイトルで、今後の印刷業界の変化に関する講演らしい。
幸は、仕事が忙しいこともあり、テーマも印刷技術の話のようであまり気が進まなかった。一方で、社長になりたてで、親父である育太郎会長に向かって、それまで父親の経営の古さを主張し続けてきたこともあり、今までの延長線上だけの経営ではいけないと考えていた。
幸い、会場も会社からは近いのでとりあえず足を運んだ。小さな講演会を予想していたにもかかわらず、三百人以上も入る大きな会場に人があふれて、熱気でむせかえりそうであった。しばらくして開演することになったが、満員で、席がなくて立っている人も多数いた。
司会は、幸が昔お世話になった先輩であることもあり、ここに来るまでは気がすすまなかったが、何となく何かを期待できそうに思えた。会場の熱気のようなものが自分にそう感じさせたのかもしれない。主催者の挨拶があったが、昔お世話になった会社の人だから知った顔かと思ったが幸の知らない人であった。
ありきたりの挨拶で、幸にはその内容が頭に残らなかった。司会が、講師のプロフィールを紹介しだしたときには、会社の経営のことを考えていた。司会の声は育雄の頭上を越えていたが、「竹根」とか「アメリカ」という言葉で司会の方に注意が戻った。
――まさか、あの竹根さんではあるまい。あの人は、商社のエリートコースに乗って、バリバリと仕事をしているはずで、今頃は部長さんにでもなっているだろう。銀行マンと言っても通るような雰囲気の人だったので、まさか経営コンサルタントになどにはなっていないだろう。あの人は、経営コンサルタントというタイプではない。経営コンサルタントというのは、どちらかというと詐欺師的なイメージがあり、あのまじめそうな竹根さんのタイプではない。でも、あの竹根さんの兄弟か親戚か何かかもしれない。確か、兄弟はいないと言っていたはずだし・・・――
大きな拍手と共に、講師が登壇してきた。
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