東京大学の研究グループは、睡眠中に脳の回路がどのようにクールダウンされるのかを解明したと発表しました。
学習したことや記憶の多くは、脳の海馬でニューロン同士のつながりが強まる長期増強(LTP)が生じることによって保存されます。この時脳回路の活動レベルも上昇し、LTPはあるレベルに到達すると飽和してしまい、それ以上は記憶できなくなります。
そのため海馬には、LTPの飽和を避ける「クールダウン」機構があると約70年前から予想されていました。
研究グループは、海馬から睡眠中に発生する「シャープウエイブリップル(SWR)という脳波に着目しました。まず睡眠中のマウスの興奮後シナプス場電位(fEPSP)を記録したところ、睡眠の経過とともにfEPSPが減弱していました。
fEPSPはニューロン同士のつながりの強さを示すことから、睡眠中にニューロン間のつながりが自然と弱まることが確認できました。次に睡眠中に生じるSWRを選択的に阻害したところ、fEPSPは減弱しませんでした。
またSWRを7時間阻害し続けると、十分な睡眠をとっているにもかかわらず、マウスの脳回路の興奮性は高いままで、正常レベルへクールダウンされることは有りませんでした。このマウスに実施した物体位置認識試験から、学習成績が低下し寝不足のような状態であることが分かりました。
これらの結果は、SWRを発生する(脳波上の睡眠状態を再現する)ように作成した海馬スライス標本でも観察されました。以上から、SWRは海馬のニューロン間のつながりを弱めることで、海馬の神経回路をクールダウンしていることが明らかになりました。
記憶に関わったニューロンを標識できる遺伝子改変マウスからスライスの標本を作製し、SWR発生時のニューロンの活動を詳細に調べました。その結果、眠る直前に学習した情報をコードするニューロン群では、クールダウンは生じませんでした。
つまりSWRは、記憶とは無関係な成分を減らして、記憶のキャパシティを確保することが分かりました。この睡眠時の自発的なプロセスによって、記憶が睡眠中に効率よく整理されていることが推察されます。
また睡眠中にSWRを阻害することで睡眠不足の状態を十分再現できることから、睡眠の目的の一つに「SWRを出して脳の回路をクールダウンすること」があるといえます。自閉スペクトラム症や統合失調症の患者、および高齢者の脳において、SWRの発生低下や脳回路の過剰興奮が起こることが知られています。
研究グループは、これらをSWRの観点から検討し、治療法の確立を目指すとしています。
学習したことや記憶の多くは、脳の海馬でニューロン同士のつながりが強まる長期増強(LTP)が生じることによって保存されます。この時脳回路の活動レベルも上昇し、LTPはあるレベルに到達すると飽和してしまい、それ以上は記憶できなくなります。
そのため海馬には、LTPの飽和を避ける「クールダウン」機構があると約70年前から予想されていました。
研究グループは、海馬から睡眠中に発生する「シャープウエイブリップル(SWR)という脳波に着目しました。まず睡眠中のマウスの興奮後シナプス場電位(fEPSP)を記録したところ、睡眠の経過とともにfEPSPが減弱していました。
fEPSPはニューロン同士のつながりの強さを示すことから、睡眠中にニューロン間のつながりが自然と弱まることが確認できました。次に睡眠中に生じるSWRを選択的に阻害したところ、fEPSPは減弱しませんでした。
またSWRを7時間阻害し続けると、十分な睡眠をとっているにもかかわらず、マウスの脳回路の興奮性は高いままで、正常レベルへクールダウンされることは有りませんでした。このマウスに実施した物体位置認識試験から、学習成績が低下し寝不足のような状態であることが分かりました。
これらの結果は、SWRを発生する(脳波上の睡眠状態を再現する)ように作成した海馬スライス標本でも観察されました。以上から、SWRは海馬のニューロン間のつながりを弱めることで、海馬の神経回路をクールダウンしていることが明らかになりました。
記憶に関わったニューロンを標識できる遺伝子改変マウスからスライスの標本を作製し、SWR発生時のニューロンの活動を詳細に調べました。その結果、眠る直前に学習した情報をコードするニューロン群では、クールダウンは生じませんでした。
つまりSWRは、記憶とは無関係な成分を減らして、記憶のキャパシティを確保することが分かりました。この睡眠時の自発的なプロセスによって、記憶が睡眠中に効率よく整理されていることが推察されます。
また睡眠中にSWRを阻害することで睡眠不足の状態を十分再現できることから、睡眠の目的の一つに「SWRを出して脳の回路をクールダウンすること」があるといえます。自閉スペクトラム症や統合失調症の患者、および高齢者の脳において、SWRの発生低下や脳回路の過剰興奮が起こることが知られています。
研究グループは、これらをSWRの観点から検討し、治療法の確立を目指すとしています。