内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

教員日誌 ― 神風特別攻撃隊に見られる殉死の論理と倫理と心理

2021-06-23 23:59:59 | 雑感

 今日、午前中、卒業小論文の口頭試問一件。日本学科の研究室で行う。論文は、神風特別攻撃隊に見られる天皇・国体のための殉死の倫理の歴史的起源と形成過程、近代における殉死の美化と規範化の論理、隊員個々における殉死の倫理の内面化過程、この三つのテーマそれぞれについて章を立てて考察したもの。書き始めるのが遅く、提出が締め切りに間に合わないというので、書けたところまでを締め切り日に提出させ、完成版は二日後に提出させた。粗も目立つが、問題と真剣に向き合い、特に第三章における隊員たちの内面の葛藤についての考察には見るべきものがあった。
 口頭試問は、まず学生のプレゼンテーションが十分程度、そして審査官の講評、質疑応答というのが基本的な流れだが、今日のプレゼンは二十分に及び、いささか冗長であった。しかし、論文で取上げたテーマについて熱心に調べ、文献を読み込み、取上げた問題に正面から取り組んだことを示す内容ではあった。私からの講評と質問もかなり長くなり、全部で一時間ほどかかった。
 大学への行き帰りは徒歩。片道四十分ほどかかる。帰り道に、来年度の授業を行う教室がある建物の場所を確認するために寄り道をする。というのは、今年度までずっと使ってきた教室の多くが入っていたプレハブ校舎が取り壊されるからである。学科のある建物のすぐ脇にあって便利ではあったが、その安普請の粗末な建物が私は大嫌いだった。来年度から私が使う教室はすべて地理学部と政治学院の本拠地内にあり、日本学科があるキャンパスからは徒歩数分かかるが、私の自宅からはその分近くなるので喜んでいる。建物も石造りの重厚な建築で大学の名により相応しい。
 卒業小論文の口頭試問はあと二件。今週金曜日と来週水曜日。学科長の引き継ぎ、学科会議、個人面談等、まだ若干の仕事が残っているが、ようやく夏休みが近づいてきた。