いきなりですが、皆さんはご蔵書をどのように保管されていますか。立派な書庫をご所有の方もいらっしゃるかと拝察いたしますが、そういうきわめて恵まれた場合を除けば、大抵は自宅のいずこかに置かれた書棚にご蔵書を並べられているでしょう。私の場合、すべて仕事部屋の書棚に並べています。
読書好きと本好きとは、同じことようですが、やはりちょっと違っています。前者は、読むのが好きということですから、読めればいいわけで、図書館で借りた本でも満足は得られるわけですが、後者は、読むことも好きだけど本そのものが好きなのであって、だから、お気に入りの本は手元に置いておきたいということです。
私はどちらかというと後者です。図書館が嫌いなわけではなく、以前はよく利用し、特に、閉架式の書庫に許可をもらって入ったときは、ずらりと並んだ何十列もの書架の間をまるで探検隊になったような気分で歩き回り、未知なるもの発見の期待で胸が高鳴ったものです。
でも、借りた本は返却期限までに返さなくてはなりませんし、禁帯出でその場で閲覧するだけの本は、研究上そうせざるを得ない場合、それでも目的を達したことにはなるわけですが、その本を愛してしまっている場合、それはまるで無期懲役刑に服して刑務所に入っている恋人に面会に行くようなもので、いつも一緒にいたいのにいられないという欲求不満は募るばかりです。
ここまで書いて、アレっ、こんなこと書きたかったんじゃなかったのだけれど、と気づきました。書きたかったのは、自宅の書架に並べられている本との付き合い方とでも言えばいいでしょうか。
仕事柄、職業上日常的に必要な書籍類は仕事机から立ち上がらずに、あるいはそこから離れずに届く範囲に集結させています。その我が「精鋭軍団」は、そのときどきの必要に応じて編成替え・配置転換等はありますが、原則として、仕事机を中心として半径一メートル以内につねに配備されており、「有事」にはいつでも出動できるよう、彼らは日頃から訓練を重ねています。
他方、「君にはなんとなく傍にいてほしいから」くらいの気分で購入した本の場合、いざその本を探そうとするとすぐに見つからないことがあります。それらの本にしてみれば、自分とのことは、「ゆきずり恋」あるいは「その場限りのお遊び」だったのねと、いつも私の傍に侍っている本たちを嫉みたくもなるでしょう。
そんな本たちの機嫌を直してもらうために、彼らをときどき仕事机の上に招待することにしました。そのために、ちょっと本屋さんみたいに、彼らの表紙が見えるように立てかけられるアクリル製の本立てを最近買いました(この記事の冒頭の写真をご覧あれ。クリックすると拡大されます)。それらの本をそのアクリル製の本立てに立て掛けて仕事机の上に置いておくのです。そうすると、仕事中も自ずと目に入ります。仕事の合間にふと手にとってみたりします。
そうすると、それらの本との間に、束の間ではありますが、ちょっと親密な気分が醸成されたりします。