内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

森閑日誌 ― 未明の森の中、響き渡る鳥の声、遭遇する動物たち

2021-06-22 19:15:37 | 雑感

 ここ十日くらいのことだ。早朝ウォーキング・ジョギングの距離が目立って伸び、10~12キロくらいになっている。ジョギングの占める割合が増えた結果である。これくらいの距離になると、オランジュリー公園内あるいはその周辺では二周しなくてはならない。しかし、同じコースを二回走るのは面白くない。そこで、コースを変えて足を延ばすことにした。
 具体的には、ロベルソーの森の中を走り抜け、ライン川岸まで出て、対岸の彼方にシュヴァルツヴァルトを遠望しながら、走りやすくはない砂利道の土手を少しだけ走って、また森に戻り、往きとは別のコースを通って帰ってくる。自宅から森までの往復が約6キロ、森の中およびライン川沿いに4~6キロ、距離の増減はその日の気分と体調と日中の予定と相関的である。
 午前四時に出発する。一年で最も日が長いこの時期のよく晴れている日でもまだ暗い。森に着くころ、ようやく空が白みはじめる。しかし、森の中の鬱蒼とした樹々の下の遊歩道は薄暗いままで、目が慣れないと路面がよく見えない。鳥たちは早起きだ。いったい何種類いるのか知らない。森中に響き渡る彼らの美声をシャワーのように浴びながら、人気ない薄明の中を歩き、走っていると、どこかこの世ならぬ場所に入り込んでいくかのようなちょっと不思議な気分になる。
 突然、遊歩道を取り囲む樹々の下草の暗がりの中を素早く移動するなにものかの音に驚かされる。おそらく、森に生息する小動物だろう。ときには、地に落ちた枝を踏みつけて、もっと大きな音を立てて間近を移動していく生き物に遭遇する。姿は見えない。おそらく鹿ではないかと思う。以前、日中に森を散歩していて目の前を横切るのを何度か見かけたことがある。彼らにしてみれば、自分たちだけだと思っていた未明にヒトが間近にいるのに仰天させられたのだろう。
 森に入ると、自ずと走りたくなる。未明の森の少し湿った清涼な空気を吸い込みながら走っていると、自分としてはかなりペースを上げたつもりでも、市内の一般路上でのように苦しくならない。こんなに走れるのだと自分でも驚くほどだ。森に生かされている、そう感じる。