内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

精神安定剤としての国語辞典

2023-09-03 23:59:59 | 雑感

 心がざわざわしたり、自分が今どこにいるのかわからなくなって心細いとき、そんな心を鎮めたり落ち着かせたりするのに、習慣的に行っていることがある人も少なくないのではないかと推察します。
 私の場合、その日そのときの心の状態いかんに関わらず、毎日のジョギングに心のリセット効果があります。コロナ禍以前十一年間余り続けていた水泳にも同じ効果がありましたし、今もあることをこの夏の一時帰国中に確かめました。ジョギングや水泳以外の運動でも同様な効果が得られることでしょう。
 楽器ができる人は何か演奏することでやはり気持ちが落ち着くということがあるでしょう。書道にもきっとあるでしょう。ちょっとドライブすることで、気持ちがすっとするという人もいるかも知れません。私が知らないだけで、他にもいろいろあるだろうと想像します。
 私にはもう一つ、心を鎮めるのにときどきしていることがあります。習慣的にというほどではないのですが、ふと思い立ってすることがあります。国語辞典を読むのです。
 必要に応じて辞書を引くというのではなく、無作為に開いたある頁に並んでいる諸項すべてを順に読んでいくのです。そうすると、不思議と心が落ち着いてくるのです。
 一つ一つの言葉が、現実に使用される文脈から離れて、静かにそこに立っているそれぞれの姿を眺め、それぞれの「性格」を表している語釈を一つ一つ読んでいくと、それらの言葉に自ずと愛おしさのようなものが感じられてきて、心が鎮まるのです。
 それに、「へぇ~、こんな言葉があるのか」と発見もしばしばありますし、日常使用している語、わざわざ辞書で引いてみるまでもない自明な(と思っている)語についての説明を読んで、新たに学ぶこともあります。
 どの辞典でもよいのだと思いますが、私が今手元に持っているのは『新明解国語辞典』の最新版第八版(二〇二〇年)です。かの有名な第四版に比べると、すっかり穏健派になってしまいましたが、それでも他の辞書には見られない語釈がまだまだあって、それはそれで楽しめます。
 今回の一時帰国中に購入した三つの国語辞典、『角川必携国語辞典』(一九九五年)、『三省堂国語辞典』(第八版、二〇二一年)『明鏡国語辞典』(第三版、二〇二〇年)が新たに書棚に加わります。
 あまり好ましいことではないのかも知れませんが、国語辞典を読む時間が増えてしまうかもしれません。