内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

四年前論文指導した学生からの嬉しい知らせ

2023-09-12 16:28:58 | 哲学

 二日前にとても嬉しいことがあった。
 いつものように朝大学のアドレス宛のメールをチェックしていると、件名が Remerciements となっているメールが一通届いていた。誰からだろう開けて見ると、四年前の2019年11月から翌年6月末まで、マイスター・エックハルトの説教と禅仏教の教説における「離脱」(放下)についての卒業論文を指導した他学部の学生からのメールだった。人文学科に所属するその学生が私を最初に訪ねてきたときのことは、2019年11月12日の記事でかなり詳しく話題にしている。
 論文指導の最後の三ヶ月ほどは、コロナ禍で大学が封鎖されていたので、指導はもっぱらメールで行ったが、今数えてみたら二十回以上やり取りをしていた。学部の卒企業論文としては出色の出来であった。その論文作成の経緯については、2020年7月3日の記事で詳しく説明している。
 一昨日届いたメールによると、2020年秋からの一年間はハイデルベルク大学の哲学・神学セミナーに参加し、2021年秋からはまたストラスブール大学に戻ってきて、哲学部の修士課程登録、今年の6月に修士論文「マイスター・エックハルトの著作における魂の根底に関する語彙の研究」を提出して、修士号を取得、この秋からは、さらにエックハルト研究を深めるべく、同哲学部の博士論文課程に登録したという。
 メールは、エックハルト研究へと最初に導いた私に対する以下のような誠意のこもった感謝の言葉で結ばれていた。

Par ce courriel, je voulais vous témoigner ma reconnaissance et ma gratitude, car c’est sous votre direction que j’ai été introduit à la pensée eckhartienne, mais aussi aux penseurs de l’école de Kyoto, dont la lecture (en particulier cette de Keiji Nishitani) a largement participer à constituer ma culture philosophique. La découverte du corpus eckhartien a été un moment important de mon cursus universitaire également, et je prépare actuellement un projet de thèse sur le vocabulaire eckhartien qui sera dirigé par Edouard Mehl.

 添付されていた修士論文は150頁に迫る実に立派な研究である。
 日本学科で指導できる修士論文は私の専門から離れたテーマのことが多く、こっちも勉強しながら熱心に指導したとしても、このようなかたちで実を結ぶことはこれまでなかったし、今後もまずないであろう。
 それだけに、この学生からの予期せぬメールはことほか私を喜ばせた。