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大阪で濃厚という単純な言葉では済まない、私の今の生きる核である5年を過ごし、愛する人と街を残し去ることの郷愁に髪引かれながら、1996年4月に再度東京に戻る。
そこから1年、茅場町で仕事をしたら、今後は赤坂に引越し。
荷物をほどく間も無く、1年経ったら、再度茅場町へ。
再度荷物をまとめて移動・・・。
1998年4月、再び茅場町に戻る。
そこでは、ラジカセから日中ラジオが流れていた。
自分が回したのか周囲が回したのかは不明だが、インターFMを流していた。
1987年以降、NHKとFM東京しか無かったFMは多局化に進む。
やたらと「JーWAVE」を持ち上げる人が多かったように思う。
自分は、どの局でも良いが、FMは次第にひたすらだらだらした放送に変わっていった印象が深かった。
誰も期待していないのに、DJ男女2人のくだらない会話が流れるFMは、自分には聴くに値しなかった。
「そんなくだらない会話は聴きたくねえよ」。
***
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1998年4月から新しい場所で流れるインターFMに、次第に惹かれていく自分。
無駄な会話は一切なく、良質な音楽を流していた。
毎日毎日、仕事のかたわらで流れる放送。
このインターFMが良かったのが、いくらしつこいと言われても、良い曲は何度も何度も掛けていたところ。
仕事をしつつ、英語を聞き分けながら、当時インターネットは今ほどでも無い頃、次第に好きになっていった曲をメモし出す。
自分がインターFMを聴き込んでいたのは1998年4〜12月の9箇月間のみ。
メモした曲は、どんどんと溜まっていった。
1998年年末には、集大成としてのインターFMベスト40みたいな放送があって、それを録音したが、良質の曲に満ちていた。
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その中の1曲だが、アラニス・モリセットの「サンキュー」。
この曲でのアラニスの歌い込みの力には正直参った。
自宅でこの曲を聴く際には、大音量で聴いた。
この曲の素晴らしさを体感するには、ヒビ割れる位に大音量で聴くことが、この曲の良さをより引き出せる。
「サンキュー」というタイトルには、今まであったことを様々思い出す隠喩を思わせた。
秋から冬へ。
新たに2万程度する、持ち歩けるFM付きのカセットレコーダーを購入して、街を歩き、公園に佇みながら、好きな曲を聴いた。
身に染みる「サンキュー」は、1998年という自分にとって稀有な年の記憶と強烈に結びついている。
■アラニス・モリセット「サンキュー」」 1998年■