
【レイ・ブラッドベリとアラーキー。共に偉大なるロマンティスト。】
80年代後期“ゆーろびーと”等ダンスミュージックからの進化系としてハウスが生まれ、染色体エラーのように(ブライアン・イーノ言語ではない)別のニュアンスのアンビエントが生まれた90年代初頭。
それまで行き詰まっていた音楽は、また新たな鼓動と刻をきざみはじめた。なんかそんな感覚。
その後いろんな音楽に出会ってきたけど、再度染色体異常発生。
2000年に現れた「エレクトロニカ」には、「ああ、そうだったのか」とヒザを打つような盲点を突かれた想いがあった。ダンスフロアと無縁でありたいじぶんみたいな者へも、そのスティルに身近に寄り添ってくれる音がたくさん産まれた。
無言の共鳴を、音の響きで伝えてくる。いつも見上げてしまう空みたいな領域が、そこには広がっていた。
植物のような音は枝葉を広げていく。大きな森を成していく。
エレクトロニカと一言では書けても、そこには実にさまざまな表現があって、素晴らしい作品はたくさんあった。じぶんが買ったり聴いたりしているのは、その一部にしか過ぎない。
細野さんが90年代アンビエントを「オーシャニック・フィーリング」(大洋感覚)と語ったのは、メディスンコンピレーションが生まれた1993年のことだが、そんな言い方をぼくはむしろエレクトロニカが産まれて以降の中に思う。
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身近な人への贈り物に秋冬用のCDを作りたいと思って選曲をしているうち、おすすめエレクトロニカ曲集にするかな、と当初の趣旨を変更しつつある。
最初は赤い公園やアナセマなど、ここ数年のなかで出会った曲を拾い集めてCDにしようとしていたのだが、繊細で美しいエレクトロニカには秋や冬という季節にぴったりなものが多いので、贈りたい音もそっちに傾いてきてしまった。
まだ決定はしていないが、数曲をまずはクリッピングした。教授の2000年以降の素晴らしい作品、デヴィッド・トゥープ、Bvdub、Loscil等々・・・そして逸脱していく。
CDに焼く分数や曲順など全体をまとめる必要もあるから、これがこのまま1枚にはならないけれど。。。。
エレクトロニカ、と言うとあたかも新しいように思えるが、根底にある魂のうるみはイーノならびにヨーロッパ音楽と水面下でちゃんと繋がっている。そこがなおいっそう心に訴える。
■Boards of Canada 「Under the Coke Sign」2005■
この曲を聴くと、大竹伸朗さんの『全景』展を観た東京都現代美術館の外に出たときのシーンが甦る。
そのとき耳内に鳴っていた音。
季節は秋で陽はすでに短くなっており、外に出るとすでに周囲は暗く、えらくさぶかった夕暮れ後。
そんな道を歩きながら、夜のとばりのなか明滅する信号機や通り過ぎるクルマのランプがにじむさまを視ていた。
その頃聴いていたCD、ボーズ・オブ・カナダの「トランス・カナダ・ハイウェイ」。
クラフトワークの「トランス・ユーロッパ・エクスプレス」を模したタイトル。
このミニアルバム全体が軽やかなショックだったが、1分ちょっとの曲になびく風の音は今でも自分的にはインパクトの強い曲であり続ける。


