これは小葉紫檀「黒主」の胴の一部です。
これはいわゆるアフリカ小葉紫檀です。
随分密度が違いますね。
現在、世界で一番樹齢の高い木は、5000年ぐらいそうです。
割と多いのは杉、メタセコイア属、---屋久杉なども含まれますね。
桧などもかなり樹齢の高い方ですね。
東大寺の大仏殿なども最初の物はメインの4本の柱は、80メートルくらいもあったようです。
80mの1っ本物(いっぽんもの)など考えられませんが、もしかしたら当時はあったのかもしれません。
奈良時代や平安時代の次々と遷都する都を作るためにも、沢山使われてしまったのかもしれません。
二胡に使う木は花梨が一番大きく育つでしょう、というか大きなものが残っています。
私が作った花梨の一枚物のテーブルで一番大きな物が、幅900ミリを超えていました。
木目を数えてみたら500を超えていました。
沢山大きな木が取れるからでしょうか、花梨材の二胡は比較的安く作れます。
反対に今一番取れないのは、というより伐採禁止ですから、やはりインドの小葉紫檀(レッドサンダー)でしょう
普通まず私たちが見ることのできる小葉紫檀、は丸太でだいたい、太いところで、150ミリ。
このくらいで、大体樹齢300年は越えています。
同じ小葉紫檀でも、スリランカやインドの南部の物は、今や完全に伐採禁止とされています。
この木が美しいということで、中国の、明清の時代に、王侯貴族の家具類にかなり使われてしまっています。
江戸時代に日本にも少しは入って来たようですが、日本に入って来たものの80%くらいは手違い紫檀チンチャンです。
チンチャンの方は、まだ少しは大きくなり、直径で600ミリぐらいの物も在ります。
明治期に三味線がたくさん作られ、その中でも最高の物とされたのが、このインドの小葉紫檀、コウキ(紅木)です。
二胡に作ってやはり音色が良いねと言われるのは、この小葉紫檀が一番かもしれません。
油分がとても多く、そして鉄分も多いために、木は乾いていくうちにどんどん黒く酸化していきます。
樹齢の割に、成長が遅く、そして夏冬の気候変化が少ない地方でとれたためか、乾燥してもそれほど狂いは生じません。
しかしいかんせん成長が遅く、年に0.5ミリくらいきり成長しないようです。
ですから、普通、二胡の胴を作る一枚の板が55ミリ前後としても、その一枚で約100年は経っているのです。
木を製材して丸太の中で実際に使えるのは普通30%くらいです。
直径30センチの木があったとして、皮に近い所の50ミリは、皮やその下のシラタと言ってふわふわしたところ言ってみれば人の脂肪みたいなもので使えません。
使えるのは真ん中部分の100ミリくらいだけなのです。
それにしても乾燥や製材などで、またさらに減ってしまいます。
特に300ミリの小葉紫檀等、今では見た事もないです。
先日、作り上げた、小葉紫檀の二胡をとった木も、直径では270ミリ細い所で、250ミリ、
真ん中の芯は大きく洞が入っていて使えるところはほぼ20%くらいでした。
そうそう、この木は樹齢800年くらいだろうねと、木場のオヤジさんと話していたのですが、
これは訂正ですね、私が年輪を数えたところ、使える分だけで約300年ぐらいでした、ただ芯のところが洞で抜けていますので、
そこが200年分くらい、そして周辺部が、100年分くらい、まあ600年から650年ぐらいと思ってよいかもしれません。
いずれにせよ皆さんが使っている二胡の木は、花梨にしても数百年育ってきた木なのです。
今、植えたとしても無事に育って、数百年後ではないと使えないのです。
その数百年の命が皆さんの二胡には込められています。
これは良い二胡これは悪い二胡などと迂闊に言ってほしくないのが私の気持ちです。
ましてや何年か弾き込めば皆さんの気持ちもその中に込められると考えていいと思うのです。
楽器はたくさん弾き込めば、その分成長もするのです。
どこの誰が作ったなどと言うのは関係無いと言っても良いでしょう。
二胡という楽器の形になって皆さんの手元に来た以上、ほッぽり出して良いとは思わないのです。
まず一台をちゃんと弾き込んでいくというのが、木の樹齢と言う尊厳に応える人の二胡弾きの気持ちであってほしいのです。
まず探し、たくさん弾いてみてご自身に響き合う物があったら、その一台をたくさん弾き込みましょう。
勿論、皆さん我が胡、と名前を付けているくらいです、どんな子も、どんな胡も、病気にもかからず怪我もしないでで育ってくれれば
こんな良い事はありません。
でも、今のように湿度も温度も高い、夜は寒いなどと言う時期には人の子も、二胡も病気っぽくなりやすい時期でもあります。
しかしこんな時期だからこそ、音が音色がと言わずに、きちっと調整して、たくさん弾き込んでやると、とても強い子に育つのです。
たくさん弾いてやってください。