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スウェーデン憲法読解(連載第2回)

2014-11-21 | 〆スウェーデン憲法読解

第一章 国家体制の原則(続き)

第四条

1 議会は国民の最高の代表機関である。

2 議会は、法律を制定し、国税について議決し、国の資金の利用方法について決定しなければならない。議会は国の統治及び行政を監督する。

 本条から先は、立法・行政・司法の役割分担を簡潔に総説する条項が続く。スウェーデンも基本的には三権分立制であるが、本条に明示されるように、議会を頂点とした議会中心主義の分立である。
 その議会は、単なる立法機関ではなく、税金とその使い道を決定するという役割が明確にされている。このことは、民主的な議会制では当然のことであるが、福祉国家としてあえて重税を課して社会サービスを充実させるスウェーデンではとりわけ税とその使途をめぐる議会の責任は重要である。そうした権限を担保するためにも、議会には統治全般、中でも行政への監督権が明示されている。

第五条

王位継承法に従い王位を継承する国王又は女王は、国の元首である。

 スウェーデンは立憲君主制を採用し、王は国家元首の位置づけを明確にされている。王位継承法上、王位継承順位一位は単純に王の第一子(女性を含む)とされ、男女平等が確保されている。

第六条

政府は、国を統治する。政府は、議会に対し責任を負う。

 この規定により、国家元首たる王は、君臨すれども統治しない存在となる。スウェーデンでは議院内閣制を採るため、統治権を持つ政府とは基本的に内閣である。

第七条

国に、地方レベル及び地域レベルの自治体を置く。

 スウェーデンは連邦制ではなく、地方と地域の二層の地方自治制を採る。この点は日本と同様であるが、スウェーデンでは二層自治が憲法上明示されている。

第八条

司法について、裁判所を置き、公行政について、国及び地方の行政機関を置く。

 司法と国及び地方の行政に関する権限分配規定である。

第九条

裁判所及び行政機関並びに他の行政上の任務を遂行する機関は、その活動において、すべての人の法の下の平等を考慮し、客観性及び公平性に配慮しなければならない。

 裁判所に限らず、行政機関にも裁判所に準じた客観性・公平性を要求する本条は、スウェーデン独特のものである。行政の任務・権限が大きくなり、行政機関が様々な行政的審査・決定もする状況下では、参考になる規定である。

第一〇条

スウェーデンは、欧州連合の加盟国である。スウェーデンは、国際連合及び欧州評議会の枠組並びに国際的な協力における他の関係に参加する。

 本条は国際協力に関する規定である。スウェーデンは欧州連合(EU)加盟国であることを憲法上宣言しつつ、国連その他の国際機関を通じた国際協力に積極的に参加することを表明している。

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