フィデル・カストロはある意味で、最後の革命家であった。武力革命家という意味においてである。彼がゲリラ活動から武力革命を成功させ、その後半世紀以上革命体制を持続させた手腕は比類なきものだったが、このような形態の革命はもはや過去のものである。
その点、筆者は革命の方法として、Ⅰ民衆蜂起とⅡ集団的不投票の二つを提唱しているが、歴史的な革命のほとんどがⅠ型であり、カストロが主導したキューバ革命はその最後の輝かしい成功例であった(拙稿参照)。
このタイプの革命に伴いがちな権威主義的革命体制の出現はキューバも例外に漏れず、今日まで多くの政治犯・亡命者を出してきたことは事実である。ロシア革命のキューバ版である。相棒だったチェ・ゲバラが生きていればキューバはもっと違っていただろうという見方もあるが、どうだろうか。
社会主義キューバは後ろ盾ソ連を失った後もしぶとく生き延びてきたが、それはゆっくりしたスピードながら、なし崩しの市場経済化・対米融和へ向かうことによってであり、すでに開始されているポスト・カストロ時代にはその流れは加速するだろう。
いずれにせよ、Ⅰ型革命の時代はほぼ終焉したと見る。となると、いよいよⅡ型革命の出番とである。
この型の革命にはカストロやチェ・ゲバラのようなカリスマ的革命家を必要としない。無名の民衆が集合的な革命家である。それだけに机上の革命構想に終始したり、せいぜいゼネスト程度で収束してしまうかもしれない。しかし、失敗の先にこそ成功あり、である。