教育
【第29条】
1 何人も、次の権利を有する。
(a) 成人基礎教育を含む基礎教育を受けること。
(b) 継続教育を受けること。国は、合理的な手段を通じて、それを漸次利用可能かつアクセス可能なものとしなければならない。
2 何人も、適度に実用的な教育が行なわれる公的教育機関において、公用語または自身が選択する言語で教育を受ける権利を有する。この権利への実効的なアクセス及びその実施を確保するため、国は次の点を考慮に入れつつ、単独の中学校を含むあらゆる合理的な代替教育について検討しなければならない。
(a) 公平性
(b) 実用性
(c) 過去の人種差別的な法及び慣習の結果を是正する必要性
3 何人も、自身の費用で、以下のような私立の教育機関を設立し、維持する権利を有する。
(a) 人種に基づく差別をしないこと。
(b) 国に登録されること。
(c) 同等の公的教育機関の水準に劣らない水準を維持すること。
4 第3項の規定は、私立学校への国の補助金を排除するものではない。
子どもの権利に続いて、教育を受ける権利の保障に厚いことも、南ア憲法の特色である。これもアフリカの社会発展上の課題が教育にあることを反映している。特に、アパルトヘイト時代、黒人の教育を受ける権利が制度的に侵害されていたことへの反省が規定にも込められている。もっとも、本条の内容は先進国にもほぼ妥当するもので、ことに第1項b号で継続教育を受ける権利を保障していることは先進的である。
言語及び文化
【第30条】
何人も、言語を使用し、自身の選択による文化生活に参加する権利を有する。ただし、この権利を行使する者は、この権利章典のいずれかの条項に矛盾する方法では行使しないものとする。
多言語・多文化主義は第一章の創立条項でも明記された南ア憲法の柱の一つであり、国が政策的に推進することが責務とされているが、本条はそれを個人の権利の観点から改めて示したものと言える。ただし、権利章典すなわち憲法第二章の条項と矛盾する権利行使は認められない。具体的には、人種差別的・排他的な形態での権利行使が想定されているであろう。
文化的、宗教的及び言語的共同体
【第31条】
1 一つの文化的、宗教的または言語的共同体に属する者は、当該共同体の他の構成員とともに、次の権利を否定されない。
(a) その文化を享受し、その宗教を実践し、その言語を使用すること。
(b) 文化的、宗教的及び言語的団体及びその他の市民社会を形成し、参加し、維持すること。
2 第1項の権利は、この権利章典のいずれかの条項と矛盾する方法では行使されないものとする。
前条に続く本条は、多言語・多文化主義の集団的な保障条項である。権利行使に当たっては、同様の条件が付せられている。