作者の事実上のデビュー作、新人賞を受賞した作品
なんとか読みたくて探し、文庫本を購入してしまった
表題作のほかに初期の短編佳作が4作品
武家と町人がそれぞれに織り成す物語
表題作は、新人賞になかなか届かない自身の心を
少しだけ違った視点で書き進めている
推敲に推敲を重ねた小説が受賞せずに
「勢い」で書いたという作品が受賞作となったところは
ただ機が熟しただけのかどうか、神のみぞ知るところ
受賞作のなかで、何度も何度も選に漏れる主人公がつぶやく
「いまのいままで、どうしてこんなにツキがないんだって不貞腐れて
たが、そうじゃねぇ。描きたい絵が描けて、親方やら孝蔵さんやらに
恵まれて、しっかり女房に病気ひとつしねえ子供がいて、きっちり
おまんま食えて、みんな嬉しそうに笑ってらあ・・・・・・。」
大した学校を出たわけでもなく、他人より余計に勉強したわけ
でもない自分が、こうして世間並み以上の暮らしを続けていられる
だけでありがたいことだなぁと素直に感謝してしまった
氏の小説を読んでいると、関西人の自分まで江戸下町に住んで
深川の八幡様に守られているかのように思えてしまう
自分を守ってくれているのは、今でも大蔵谷の八幡様のはず
大蔵八幡神社のお守りをいつも持っているのだから