五月から本格的に単身赴任となっている
関西での勤務は二十数年ぶりのことになる
思えば、いわゆる青春時代の大半は関西にいたはずだ
ただ、父の青春時代は明石から三ノ宮の間で完結しており
大阪には縁がない
今回、大阪にいて神戸地区も担当するということで三ノ宮や
元町に出向くことも多くなってきた
そこで不思議なことが起こる
先週、たまたま三ノ宮で昼食をとったあと、次のお客さんに
向かうべくサンチカをあるいていた
ふっと通り過ぎた女性の横顔が視界のすみに
あっ
振り向いた先、もう2~3mも先に行っていただろうか
中学生のころ、好きだった女性が颯爽と歩いていた
黒いカットソーに白い帽子、もう確認のしようもないのだが
確かに、確かに彼女だった
立ち止まって固まっていた視線の先で、彼女は少しだけ
後ろをみてくれた
恐らくショーケースに並んだケーキに目が行ったのだろう
もう一度、あの目元が・・・彼女だった
父の同級生であるから年齢も年齢のはずだが、そんなに
老けた様子はなかった
ほんの一瞬のこと
実のところ、彼女との思い出などはほとんどない
同じクラスだったし、二人でクラス委員をしていたけれど
たくさん話した記憶がない
40年の時を経て、なぜ偶然に遭うのだろう
いや、すれ違ったのだろう
時として人間は恐ろしいほどの偶然に見舞われる
あの頃読んだ遠藤周作の短編をもう一度読んでみたくなった
卒業式が終わったあとに撮らせてもらった一枚の一緒の写真
初夏の神戸が帰ってきた父にくれたサプライズだったのかも