My Audio Life (趣味のオーディオ)

真空管オーディオを中心に、私のオーディオチューンアップについて書いています。最近はPCオーディオにも取り組んでいます。

6C33C シングル・アンプ(FOX-BAT)の進化 ~シングル・カソード/ヒーター化~

2019-11-09 12:35:13 | 真空管アンプ

以前のブログに書いた通り、この6C33C-Bの球アンプは大飯喰らいで発熱が半端ないです。そのためこのアンプの稼働は冬場と決めています。

これからの冬場に向けて、このアンプにさらに手を加えるところは無いかと、ここ1ヵ月以上ずっとこのアンプ本体と回路図を眺めながら考えていました。

その結果、低消費電力化と更なる音質改善を図ることが出来ましたので紹介します。

 

<具体策>

①シングル・カソード化

まず第一にこの消費電力、発熱を抑えることです。高発熱は球の寿命に対しても良くないかも知れません。

そこで、思い立ったのが、6C33Cのシングル・ヒーター化です。

この球は、ロシアのMIG-25戦闘機にも使われたくらいなので、信頼性のためヒーターがダブルになっていて片方が切れても、動作する様な構造になっています。

 

Web上でこの球に関する投稿を漁っていると、シングル・ヒーター、シングル・カソードの製作例を目にします。

何でも、オーディオ用途で使うには、シングル・カソードのほうが「利有って害無し」とか。

消費電力も削減が出来るし、寿命が来てももう片方のヒーターが使えるので寿命が2倍? Datasheet上では6C33C-BのOperation timeは750Hrとなっています。意外と短い?

6C33Cのデータ・シートにも、ダブル・カソードの場合とシングル・カソードの場合、両方のV-I特性が載せてあります。 左がダブル・カソード、右がシングル・カソードです。

最大プレート損失はダブル時の60Wからシングル時は45Wに減少します。

シングル・カソードにした時のロード・ラインを引いてみました。

OPT1次側インピーダンスは、正弦波の電圧比より算出。

すると、ナント! オリジナルよりも綺麗なところに来るではないですか! アレ?って感じです。

改造はいたって簡単で、現在ヒーター6.3Vが並列になっている所を片側にするだけです。 

バイアス電圧は-70V、プレート電流は140mAで調整しました。プレート電圧は222V。

 

②コンデンサの交換

お得意のカソード・パスコンの換装です。

1)初段

ATOM250uF/16Vを手元に有ったFRAKO 470uF/16Vに交換。

2)ドライブ段

ニチコン47uF/160Vを手元に有ったBMI 56uF/350Vに交換。

ここでの音質変化は大きく、籠りが無くなりクリアーになりました。

3)出力段

ATOM 100uF/50Vに手元に有ったATOM 100uF/100Vをパラに追加。

いつものパラ作戦です。

 

③6C33C-Bを新品に交換。

データ測定品を入手済みだったスペアに交換。ペア取り品。

ピンはいつも通りの方法で磨きました。

 

<結果>

①消費電力の違い

オリジナルのダブル・ヒーター

ヒーターのみ(117W)      稼働状態(194W)

          

シングル・ヒーター

ヒーターのみ(73W)      稼働状態(138W)

         

稼働状態で約3割の電力を削減する事が出来ました。


②周波数特性 (8Ω抵抗負荷)

オリジナル

(正弦波)  

20Hz                      1kHz                    40kHz

    

(矩形波)

100Hz                   1kHz                     20kHz

    

 

シングル・ヒーター

(正弦波)

ダブル・ヒーターと同じでしたのでデータを記録していません。

(矩形波)

100Hz                    1kHz                       20kHz

           

矩形波でも変化なく同等です。 


<音質>

まさに美音です。歪が少ないのでしょう。

特にストリングスやピアノの音が綺麗です。

ひとつひとつの音の分離、粒立ち、響きが良く、音の伸びもあり、聴いていて心地よいです。

音に澱みがなく、透明感があり、今まで埋もれた音も聴こえてきます。

音量を大きくしても五月蝿くなく疲れません。ゆったりと時間が流れる感じです。

例えば「SAXPHONE COLOSSUS/SONNY ROLLINS」の1曲目のシンバルの音が手持ちのアンプで一番綺麗です。 

また「 I've Got You Under My Skin/DIANA KRALL」の遠くで鳴っているハープの音やオケの細かい音を聴きとる事が出来ます。ストリングスと他楽器の配置も良いです。

これがシングルアンプの音なのでしょう。

オリジナルのダブル・カソードよりもさらに美音になった様に思います。


ただ、これだけを聴きいているとあっさりしすぎて魅力に欠け、飽きてしまいます。だんだんとつまんなく思えてきます。なんだかなぁ~って感じです。

オーディオって難しいですね。美音なだけじゃダメなんですね。

ここですよね、ココ!。現代のデジタル・ハイレゾとヴィンテージのアナログの違いって。

音楽性とか魅力的とか味わいとか躍動感とかワクワクする感じが。

 

矩形波応答波形で見てもわかる通り、低音にパンチ、押し出し感がありません。

ロックやポップを主に聴く私は、5998やKT88 PPの様に力強く、バイト感、押し出し感のある音が好みです。

多少歪感のあるザリッとした感じが合っています。美音過ぎると味気なく何となく物足りないです

まあ、好みや聴く音楽の違いにも依るでしょう。

 

最後に稼働中の写真です。

ヒーターが片方だけだと少し寂しい気もします。


ここで紹介したアルバム: 

SAXOPHONE COLOSSUS
Prestige
Prestige

この1曲目のシンバルの音です。

抜けよくクリアーに響くこと、また金属質過ぎず木製スティックの質感もある事などです。

 

When I Look In Your Ey
Unive
Unive

この6曲目でのストリングスの響きと最後のハープの音です。ハープは左後方で鳴っています。

ストリングスとピアノ、ギター、ベース、ドラム、ボーカルの位置関係やバランスも評価どころです。

また、8曲目のブラシ・ワークも評価どころです。

13曲目のオケの音とボーカルとのバランスも良いですよ。オケにボーカルが浮かび上がります。

 

コメント
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