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アスベスト新法における肺がん患者の認定基準~受動喫煙の救済は?

2006年01月21日 | 禁煙・防煙
ここでも何度かとりあげてきたアスベスト問題(と喫煙の関係)。私は呼吸器内科医ではないので専門的な所見や診断についてはコメントできませんが、注目されてきた肺がんの認定基準がまとまって新法の提出が閣議決定されたようです。
アスベスト新法で救済対象、肺がん患者の基準まとめる
アスベスト:肺がん患者に吸引認定基準 環境省と厚労省
アスベスト:救済新法案決定 国民世論が後押し

ポイントは、アスベスト(石綿)吸引のはっきりしない肺がん患者。
(ここでは喫煙や受動喫煙の有無については触れられていないようです)

・アスベスト(石綿)吸引の確認に関わらず、
 胸部レントゲンで明らかな胸膜プラーク+肺の線維化(軽度でも)
 →アスベスト新法の救済対象とする

記事によると、
・アスベストに関連する肺がんの患者数は中皮腫の1~2倍のはずだが、現在は中皮腫のほぼ半分にとどまっている
・アスベスト吸引で、肺がんの発生リスクを2倍、または5倍ほど高まる
とのことです

ところで、表題の受動喫煙との関係について。
以前、アスベストで肺がんは5倍、本人の喫煙で10倍、両者合わさると50倍になるというデータを紹介しました。
受動喫煙によって、肺がんのリスクは同様に2倍程度に高まります。
(もちろんこれらの数字は暴露の度合いによって変わってきます)
どちらも本人の意志に関わらず暴露を余儀なくされて、健康被害(死亡)が生じている。
アスベストによる肺がん患者は現在数百人レベルで、これから増加が見込まれるわけですが、受動喫煙では肺がんを含めた全ての喫煙関連死で毎年2万人もの人が「現在進行形で」亡くなっています。

アスベストについては「疑わしきは救済」して、受動喫煙死は全て国もJTも何の責任もなく放置する。この2つを比較して考えた時に、論理的な整合性がどこにあるのでしょうか。

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