踊る小児科医のblog

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新型インフルエンザ対策が画餅にならないために

2007年01月20日 | こども・小児科
新型インフルエンザ対策指針の素案が出たようですね。
厚労省のサイトにはまだ掲載されていないようだし、「国民の意見を受け付けた上で、3月に指針をまとめる」ということですから、まだ決定ではありません。元資料がないので、その内容についてはここでは詳しくは触れません。

これまでも、行動計画は厚労省・県からも出ていました。といっても、それを読んで、ではどうすればいいのかという具体的な詳細までは触れられていなかったので、私たちも何も対応できていないような状態でした。

今回の指針案では、実際に第1号患者(ヒト-ヒト感染の)が出た場合に、
・初期にタミフル集中投与
・家庭にも2週間程度の食料備蓄求める
・ワクチン、薬に優先順位をつける
などを盛り込んだものですが、ワクチン接種の優先順位などはこれまでとりあげられていなかったのがおかしいくらいです。

第1号患者がでて、それを素早く発見して封じ込めに成功するなどというのは、実は相当ラッキーな状況が重なった場合に限られていて、新型インフルエンザが他のインフルエンザと一緒に流行したりすれば、いくら専用キットがあっても封じ込めは不可能でしょう。
中国があれほどの事態に陥ってもSARSを抑え込めたのは、季節的な要因があったとしても、かの国の社会主義体制によって超法規的な措置を次々と繰り出すことができたからで、日本で企業などの経済・社会活動を強力に制限するというのは、これから相当な議論となるでしょう。
(下手すると流行封じ込めに成功した場合に、流行しなかったのに損害だけを受けたと訴えられかねない)
本来なら、通常のインフルエンザでも、学校と同じように企業でも出社停止措置をとるようにすべきなのですが、熱があろうが何があっても働くという日本の企業風土が変わらない限り、新型インフルエンザ対策など絵に描いた餅になりかねません。
これから、きちんとした議論と国民的合意が必要になるでしょうね。(法的根拠も)
私たちも、専門家を呼ぶなりしてきちんと勉強して準備を整えておかないと。。

新型インフルエンザ対策関連情報(厚生労働省)
新型インフルエンザ被害予測、10日で12万人(1月17日/NIKKEI NET)