万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の邦人死刑執行が暗示する東アジア共同体の行方

2010年04月03日 16時00分38秒 | アジア
中国、死刑強硬の背景に世論の支持(産経新聞) - goo ニュース
 麻薬取り締まりを厳格化するために、中国当局は、邦人の死刑執行をもって厳しく臨むようです。我が国にも死刑制度はありますので、死刑そのもののを非難することはできませんが、杜撰な中国の裁判と司法に対する政治介入については、中国に対して苦言を呈してもよいのではないかと思うのです。

 民主党政権の鳩山首相は、かねてより、東アジア共同体構想を積極的に進めたい意向を明らかにしています。しかしながら、中国の司法制度の現状をみる限り、たとえこの構想を実現させることができたとしても、その運営の過程でトラブルが続出しそうなのです。経済分野に限定するものであれ、一党独裁制の下で民主集中性を採用している中国が、EU加盟国のように、地域レベルでの”裁判所”の設置に合意し、統治権限の一部を”東アジア共同体”に委譲するとも思えません。法律上のトラブルが発生した場合、中国は、毒入り餃子事件と同様に、自国の法律を盾に強引な解決を図ろうとすることは、充分に予測されます。とりわけ長期にわたり中国政府が反日教育を国民に施してきたことを考えますと、最も不利益を受けるのは、我が国の国民であるかもしれません。

 東アジア共同体構想を掲げる以前の問題として、中国の司法制度が未整備であることは、我が国のみならず、中国と関係のある全ての諸国の不安要因でもあります。司法の独立性や公平性さえ充分に保障されていないのですから。健全なルールや公正な裁判なき東アジア共同体は、”百害あって一利なし”なのではないでしょうか。
  
 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする