万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

軽々しく使ってはならない地域主権という言葉

2010年04月28日 15時46分10秒 | 日本政治
地域主権改革3法案、参院で可決 今国会成立へ(朝日新聞) - goo ニュース
 ”地域主権”という言葉は、それ自体が矛盾に満ちています。何故ならば、主権という言葉は、国家に備わる全ての権力と権限の源泉であり、それ故に、地方を統合する役割を果たすと観念されているからです。

 主権概念の生みの親であるボダンがこの概念を唱えた理由もまた、封建制下において領主の間で分散していた諸権力を、主権の下に纏めることを意図したからです。つまり、もとより主権とは、集権化を意味しており、”地域”という言葉とは相いれないのです。地域主権という言葉を矛盾なく使おうとしますと、それは、連邦制への移行を意味することになります。連邦制ともなりますと、それぞれの地方が、固有の主権を持つことになりますので、潜在的には、地方の独立という事態も視野に入ってきます。

 地方に主権を付与するという文脈で、民主党政権が、地方主権という言葉を使うとしますと、単一国家から連邦国家へ移行を示したとも解釈されかねません。憲法は、連邦制を定めていませんので、この法案もまた、違憲となる可能性があります。こうした重大な意味を含む政治用語は、軽々しく使ってはならないと思うのです。

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