万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

”友愛”は平和を約束しない

2010年04月14日 15時38分10秒 | 国際政治
中国艦隊10隻が沖縄近海通過=潜水艦2隻、浮上航行-動向を注視・防衛省(時事通信) - goo ニュース
 鳩山首相は、政権発足に際して、”友愛”を基本方針に据えて外交を行うことを表明しました。しかしながら、”友愛”は、必ずしも”平和”を約束しないと思うのです。

 平和とは、国家間の関係がたとえ敵対的であっても、武力衝突が起きない状況を作り出せば、曲がりなりにも保つことができます。例えば、バランス・オブ・パワーとは、相互の力関係が拮抗していれば、戦争は抑止されるという考え方であり、核の抑止力も同様です。たとえ敵対関係にあっても、平和を維持する方法はあるのです。一方、友愛となりますと、これは、極めて主観的なものの考え方となります。国家が相互に相手国に対して友愛を感じることが、戦争を避ける唯一の方法ということになるからです。この考えに基づきますと、平和を実現するためには、全ての諸国が、お互いに相手国に好意を持たなければなりません。友愛とは、主観に基づく感情の論理なのです(人間には好悪があるので、本当は、感情を条件とする平和の方が難しい・・・)。

 それでは、現実はどうでしょうか。たとえ、日本国が、”友愛”を掲げて平和を訴えても、他の周辺諸国が我が国に対して好意を抱き、共に平和を築こうとする意思に欠けていては、友愛の論理は成り立ちません。また、現実に存在する国益の対立も、友愛では解決しません。実際に、一方通行の”友愛”は、他国の覇権主義を助長し、むしろ、平和から遠ざかる状況を作り出しているようです。日米同盟が揺らぐ一方で、中国の艦隊が示威活動を行い、韓国もまた、竹島に対して強硬な措置を打ち出してきています。友愛は、平和の維持を一種の感情としての主観に帰することによって、むしろ、平和の基礎や主権平等の原則を壊しかねないのです。

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コメント (4)
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