万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

復興構想会議―独り歩きする有識者会議

2011年04月15日 10時59分57秒 | 日本政治
震災復興税を提起 構想会議議長「国民全体で負担」(朝日新聞) - goo ニュース
 昨日、菅首相の肝いりで設置された復興構想会議の五百旗頭議長が、早々に、復興プランではなく、震災復興税を提案したことが、マスコミを通して大きく報じられています。復興構想会議には、財政にまで踏み込む権限が与えられているのでしょうか。

 有識者会議という方法は、以前から、民主主義の迂回路として警戒されてきました。復興構想会議では、”いかなる党派や勢力にも偏らない”とする基本方針が掲げられてはいますが、そもそも政府による人選の段階で偏りが生じることは、幾度となく指摘されてきた問題点です。実際に、この会議でも、思想的に偏りのあるメンバーの名も見受けられますし、人選の理由も充分に国民に説明されてもいません。また、”被災地主体の復興を基本として国としての全体的計画をつくる”とする基本方針に至っては、自家撞着としか言いようがないのです(被災地代表は知事レベルに留まる…)。

 そもそも、我が国では、復興プランに関して、政府と国会、政治と行政、国と地方のどのレベルがどうのような権限をもち、どのような経路で決定に至るのか、明確に制度化されていないことも、不透明な部分で有識者会議が独り歩きする原因でもあります。国のイニシャチヴと負担で復興に関するプランを策定するならば、少なくとも、(1)地方自治体レベルでの被災地住民の要望のとりまとめ、(2)国レベルでの各自治体の要望調整、(3)専門家といった有識者への諮問、(5)国レベルでの財政調整とプランの策定、(6)被災地住民と国民への提案と承認、という民主主義の原則に即したプロセスを経るべきであると思うのです。

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工場の西日本移転案―東海・南海・東南海地震発生のリスク

2011年04月14日 15時37分13秒 | 日本経済
緊急提言5:工場を西に、サービスを東に――産業再配置による電力制約の緩和策【野口悠紀雄コラム】(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース
 福島第一原子力発電所の事故は、首都圏を含む関東地方一帯に、深刻な電力不足をもたらしました。その解決策として、工業を西日本に移転し、サービス業を東日本に集中させてはどうか、という提言があるようです。

 電力不足問題の解消策として、一定の効果は期待できそうなのですが、西日本移転にもリスクはあります。それは、近い将来、西日本にも、東海、南海、東南海地震、あるいは、直下型の大規模な災害が発生する可能性が極めて高いことです。電力対策として、西日本に製造拠点を移しても、再度被災しては、せっかくの投資が無駄になってしまいます。しかも、西日本に製造業が集中している状況で、大規模地震が発生しますと、我が国の製造業は、一度に停止か、壊滅状態に陥ります。東日本大震災では、西日本の工場での生産量を増やすことで、経済活動を何とか持ちこたえることができましたが、西日本に集中させた後には、この代替機能も働かなくなります。

 今後、1000年ほどはM9級の大地震が襲来しないとしますと、確率論からしますと、東北地方の方が安全ということにもなります。日本列島は、どこであっても地震リスクから逃れられないとしますと、リスクは分散させる方法も一案であると思うのです。

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放射能汚染水の拡散予測よりも防止策を

2011年04月13日 16時24分47秒 | 日本政治
放射能汚染水の拡散予測を公表 文科省など(朝日新聞) - goo ニュース
 福島第1原発の1号機と3号機が水素爆発を起こし、建屋が崩壊した際に、放射性物質を放出しながら、その拡散予測を怠ったことが、国民の生命と身体を軽視したものとして、問題視されております。この非難に反応してか、文部科学省は、海洋汚染については、拡散予測を公表するそうですが、報じられていた拡散防止策は、どうなってしまったのでしょうか。

 高濃度汚染水の流出が止まらなかった一週間ほど前には、流出場所の周辺に、フェンスを張りめぐらすといった、防止策が検討されていたと記憶しています。その後、高度汚染水の流出は止まり、低濃度汚染水の放出が行われたのですが、今のところ、政府が、積極的に拡散防止策に乗り出したというニュースは聞こえてきません。周辺にフェンスを設置し、その内側に、沸石といった放射性物質除去材などを大量に散布すれば、かなりのパーセンテージで、放射性物質を吸収できるはずです。また、現在も汚染水が放出されているならば、フィルターを通して放出すれば、除去効果はさらに上がります。政府や東電が、何らの防止策もとらないとなりますと、被害を受ける漁業関係者の方々に対して、無責任な態度と言わざるをえません。

 諸外国からも、海洋汚染の懸念が寄せられておりますので、拡散予測の公表だけでは、日本国政府が、汚染の拡大を放置している印象を与えることになります。汚染国としての責任を果たすためにも、政府は、放射性物質が広く海洋に拡散する前の放出段階で、できる限り押さえ込むべきと思うのです。

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郵便不正事件―検察と厚労省が交差する闇

2011年04月12日 15時57分30秒 | 日本政治
元主任検事に実刑判決 証拠改ざん事件 懲役1年6カ月(朝日新聞) - goo ニュース
 本日、郵便不正事件を担当した元主任検事に対して、地裁が、証拠隠滅罪の罪で実刑判決を言い渡したそうです。検察への信頼性を失墜させた、前代未聞の事件とされていますが、もうひとつの重大な犯罪については、何故か、この事件の陰に隠れがちです。

 もうひとつの重大な犯罪、それは、厚労省による偽の証明書の発行です。本来は、こちらの事件の方がメインであったはずなのですが、検察による証拠隠滅と村木氏の冤罪に焦点が移り、国民の関心から遠ざけられてしまいました。政府の行政機関が、偽造文書を発行したことは、検察による証拠改竄と同レベルの重大な犯罪であり、前代未聞であることには変わりはありません。しかも、この事件、「凛の会」のみならず、複数の福祉団体や企業11社が関わっており、大規模な組織犯罪の可能性も否定できないのです。上村元係長の単独犯というシナリオが事実であるならば、偽の証明書は、いとも容易く作成されたことになります。また、単独犯であったとしても、厚労省の責任は重く、当然に、無罪が確定した村木氏にも上司としての監督責任はあるはずです(局長印の管理を含めて・・・)。

 この事件は、検察と厚労省という、二つの政府組織が、国家の信頼を著しく傷つけた重大な事件でありながら、全容は、未だに解明されておりません。国会やマスコミが、何故、この闇に迫ろうとしないのか、不思議でならないのです。

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原発アンケート―”新型への建て替え”を選択肢に加えては

2011年04月11日 15時41分40秒 | 日本政治
資源ウォーズの世界地図 さよならウラン、こんにちはトリウム 米中印が続々参入…福島原発事故で浮上した未来の原発(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース
 福島第1発電所で事故が発生して以来、原子力発電には逆風が吹いています。昨日も、都内で大規模な反原発デモが行われたと報じられていました。

 原子力発電の反対派は、電力会社は、”儲け主義”に走り、安全を犠牲にしてきたと主張しています。危機を増大させた東電の対応が非難を浴びるのは当然としても、原子力発電には、安価で大量の電力を造り出し(ただし、事故を起こすとコストが跳ね上がる・・・)。、人々の生活を支えてきたというメリットもあります。電化製品の普及によって、仕事や家事の負担は軽くなりましたし、情報化社会の実現も大量の電気供給あってのことです。そうであるからこそ、リスクを認識しつつも、我が国のみならず、各国とも、原発を建設してきたのです。

 事故を受けて、アンケートによる世論調査も行われており、全廃から新規増設容認まで、数の増減を問う選択肢が挙げられていますが、”新型原子炉への建て替え”、あるいは、”安全性と制御・処理技術の向上を条件とした容認”という、技術レベルを問う選択肢もあってよいのはないでしょうか。実際に、はるかに安全性の高い第3世代プラスが実用化され、第4世代の原子炉も開発段階にあるそうです。近い将来、原発にまつわる諸問題を技術的にクリアできれば、原子力は、自然エネルギー技術の活用と並んで、人類が直面するエネルギー問題解決の一助になる可能性も否定できないと思うのです。

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中国に対する黄砂対策費を原発対策費へ

2011年04月10日 15時49分32秒 | 日本政治
中国の日本食品禁輸措置、12都県に拡大(読売新聞) - goo ニュース
 中国は、福島第一原発の事故について、ことの他、神経を尖らせているようです。昨日の報道によりますと、放射能汚染に関連して、”中国は、これまで以上の行動をとる権利がある”といった強硬発言もあったそうです。

 大震災の発生によって、我が国は、深刻な放射能汚染の問題に直面することになりました。放射能汚染対策の緊急性を考えますと、中国の黄砂対策として鳩山前首相が約束したという協力資金は、国内の原発対策に振り向けるべきではないかと思うのです。2010年5月に、鳩山前首相は、「鳩山イニシャチブ」として1兆7500億円という巨額の拠出を表明し、黄砂対策もまた、この一環として位置付けられています。中国自身が、福島原発からの放射性物質の飛来に警戒しておりますし、世界第2位の経済大国に成長したのですから、中国政府も、この日本国政府の申し入れを承諾するはずです。

 国際社会では、大気、水質に拘わらず、環境汚染は、基本的には汚染国の責任で処理すべきとされています。黄砂もまた、有害物質や放射性物質を含んでいるとされているのですから、相互に、環境汚染に対する第一義的な責任を持つべきなのではないでしょうか。

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リビアの誤爆問題―敵味方を見分ける標識を

2011年04月09日 15時59分26秒 | 中近東
誤爆続くリビア空爆、NATOに限界 安保理議決の制約(朝日新聞) - goo ニュース
 内戦状態にあるリビアでは、NATO軍が、反政府勢力の部隊を誤爆するという事件が相次いでおり、反政府側の怒りと不審を買っているそうです。この問題、NATO軍が識別できるように、反政府側に属することを示す、何らかの標識を付ければ、解決する可能性があります。

 一般の戦争では、双方とも、兵士は自国の軍服の着用しており、また、戦車なども機種が違いますので、外観から敵味方を判別することは難しくはありません。一方、内戦の場合、特にリビアの現状では、反政府側の主力部隊は、カダフィ軍側から離脱した人々で構成されていることに加えて、敵側から奪った兵器を使用しているため、容易に両者を見分けることができないのです。このため誤爆が後を絶たず、今後とも、犠牲者が多数にのぼる怖れもあります。

 報じられるところによりますと、トルコ政府が、将来的な民主化に向けて、停戦案の提示を準備しているとのことです。独裁体制を維持したいカダフィ勢力側が、この提案を受け入れるかどうかは未知数ですが、まずは、誤爆を回避するために、敵味方を確実に識別する措置を講じるべきなのではないかと思うのです。なお、古典的ながら、標識とは、敵には分からないものがよいのかもしれません。

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防災の街づくり―車避難によるリスク対策を

2011年04月08日 11時42分28秒 | 日本政治
避難所に悲鳴、逃げる車「津波怖い」(朝日新聞) - goo ニュース
 昨日の余震により、被災地では、再び津波の悪夢が蘇り、高台へ逃げようとする自動車で道路が渋滞するという事態も発生したようです。今後、災害に強い街づくりを考えるに際して、車避難のリスク対策も重要な課題となると思うのです。

 先の東日本大震災では、宮城県南部海岸を襲う大津波の様子が中継されましたが、この映像は、車による避難には、重大なリスクがあることを警告していました。先頭を走っていた車が止まると、後に続く車も停止せざるを得ず、後方の車ほど、避難が遅れて津波に呑みこまれる可能性が高くなるのです。街中の狭い道路であれば、このリスクは、格段に高まります。避難警報が出されても、避難手段や経路そのものが確保されていませんと、実際の被害を防ぐことができないのです。

 今後の津波対策としては、最短距離で高台に通じる直線道路を整備・拡張するか、避難経路を分散させるか、あるいは、車を用いない避難方法(避難用バスの常備、避難塔、津波シェルター…)を考案すべきではないかと思うのです。二度と、津波による悲劇が繰り返されないように。

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米軍の支援活動―初めての日米同盟の発動か

2011年04月07日 15時54分08秒 | 日本政治
沖縄、米軍への共感じわり 被災地で活躍「頼りになる」(産経新聞) - goo ニュース
 在日米軍基地の問題をめぐり、軋轢が絶えない沖縄県でも、東日本大震災をきっかけとして、米軍への共感と理解が広まっているそうです。

 もし、日米同盟が存在していなかったとしたら、10万人の自衛官を被災地に派遣することになった今回の大震災は、安全保障上の危機に繋がる可能性もありました。そうして、何よりも、被災地における米軍の献身的な救援活動は、多くの日本人の命を救うことになったのです。国民の多くは、戦後最大の危機に際して示された米軍の厚意と活動に深く感謝しています。基地問題を抱える沖縄県でも、反米感情を吹き飛ばしてしまったのですから、長年続けられてきた言葉による説得でも為し得なかったことを、今回の支援活動は、わずか一カ月足らずで成し遂げてしまったことになります。

 危機への対応という意味において、大震災における米軍の支援活動は、安保条約締結以来、初めて本格的に同盟が”発動”された事例として、長く記憶されることになるかもしれないと思うのです。

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汚染水放出―説明と配慮不足が招く全漁連の怒り

2011年04月06日 15時50分10秒 | 日本政治
「許し難い行為」全漁連会長、汚染水放出に抗議(読売新聞) - goo ニュース
 東電が、昨日から、何らの事前報告もなく、低濃度の放射能汚染水の放出を開始したため、全漁連の怒りは頂点に達しているようです。風評被害も相まって、原発事故の漁業への打撃は深刻です。

 全漁連が憤るのも、政府や東電が、正確な情報を、国民に伝えてこなかったことも原因しています。本日のニュースでは、一号機の燃料棒は7割が損傷しているのではないか、との見解が報じられておりました。このニュースから推測しますと、放水による原子炉の冷却を優先しないと、格納容器から溶けだした放射性物質が大量に漏れ出し、拡散するという事態を招きかねない状況にあるのかもしれません。にもかかわらず、政府や東電は、情報を小出しにする一方で、安全を強調するのですから、国民の多くは、安易な海洋汚染の許容と受け取りかねないことになります。

 汚染水の放出に先だって、東電は、漁業関係者や国民に対して、やむを得ない措置であったことを丁寧に説明し、全漁連に対しては、発生する被害に対して補償の用意があることを伝えるべきでした。マイナス情報を隠すよりも、正直に公表し、合わせて対応策をも提案すれば、よほど、国民の協力や理解を得られるのではないかと思うのです。

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電力使用制限令―危機の本質は産業の衰退と空洞化

2011年04月05日 15時16分54秒 | 日本政治
今夏、電力使用制限令を発動へ…石油危機以来(読売新聞) - goo ニュース
 海江田経済産業省は、福島第1原発の自己による電力不足への対応として、夏場のピーク時における電力使用制限令の発動を検討しているようです。しかしながら、この対策、危機の本質を見誤っていると思うのです。

 電力不足によって生じる最大の危機は、産業の空洞化です。電力の供給が不十分な状態が長期化すれば、既存の工場の稼働率が低下すると共に、新たに工場を新設することも難しくなります。東電の管轄地域全域にわたって、産業地帯としての立地条件が失われる怖れがあり、企業の中には、海外に生産拠点を移す動きも出てくるかもしれません。現に、日本企業の工場誘致を表明している国もあります。この結果、当然に、失業者も増加し、我が国の経済規模は、縮小に向かうことになります。

 政府が第一になすべきことは、電力供給量の減少による産業の衰退と空洞化を防ぐ方策を考え抜くことであり、統制経済よろしく電力使用制限令を出しても、何らの問題解決にもならないのです。電力供給量の低下への対応は、民間企業のサバイバル作戦にも負うところが大きいのですから、政府は、民間との協力の上でこの危機を乗り越えるべきと思うのです。

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原子力研究―制御・処理方法の確立を

2011年04月04日 15時27分14秒 | 日本政治
温室効果ガス排出削減目標、25%見直しも(読売新聞) - goo ニュース
 福島第1原発事故の影響は、エネルギー政策全般に及んでおり、我が国のみならず、世界各国において、原発見直しの運動を引き起こしているようです。今回の事故は、原子力が抱える様々な問題点をも浮き彫りにすることになりました。

(1)困難な核反応の制御
 原子炉は、緊急時には制御棒によって運転が停止されますが、その後の崩壊熱の冷却には時間がかかり、冷却機能が機能不全となると、放射性物質を大量に放出するリスクに晒されます。この問題は、新式の原子炉の導入により、現在は、解決されているそうです。

(2)放射性物質の無害化と除去
 核反応に伴って放出される放射性物質は、現状の技術レベルでは、完全に無害化および除去することができません。この問題を解決するためには、医薬品開発、濾過技術、バイオ・テクノロジー、環境技術といった多様な先端技術や自然の力を利用して、研究・開発を重ねてゆく必要があります。

(3)放射性廃棄物の処理
 福島第1原発では、使用済み核燃料を収納しているプールの管理が危機を高めることになりましたが、使用済み核燃料の安全な再処理技術もまた、開発途上にあります。将来的には、再処理を繰り返すことで、ほとんど無害な低レベル放射性廃棄物化することができるそうですが、未だ研究・実験段階です(高速増殖炉「もんじゅ」などもこの研究の一環…)。

 つまり、原子力は、利用面が先行し、制御・処理面が追い付いていない、アンバランスな状況にあるのです。今回の事故を受けて、原子力の全面廃止も主張されていますが、中途半端で放り出しますと、制御方法や処理方法が確立しないまま、汚染物だけが地球上に残されることになります。原発事故で放射能汚染が広がった我が国は、むしろ、原子力の制御・処理面の研究に、率先して取り組むべきではないかと思うのです。

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厚労省は体内被曝防止剤の早期承認を

2011年04月03日 16時12分04秒 | 日本政治
「安定ヨウ素剤」増産したいが… 日本、埋蔵世界一、「壁」は停電(産経新聞) - goo ニュース
 福島第1原発における事故が発生して以来、放射性物質に関する国民の関心は、否応なく高まることになりました。連日のようにマスコミでも取り上げられ、放射性物質の名を聞かない日はないぐらいです。

 数ある放射性物質の中でも、特にヨウ素131とセシウム137については、水溶性であるためか、空気、食物、水などを通した摂取が心配されています。ヨウ素131については、「安定ヨウ素剤」を予め飲んでおけば、甲状腺がんになるリスクは低減し、半減期も短いこともあり、対策次第で健康被害を避けることができます。「安定ヨウ素剤」は、国内の製薬会社で製造・販売されており、品薄とは言え、入手する機会があります。一方、半減期が30年と長いセシウム137については、日本国内では、厚労省の承認薬はないようです。アメリカでは、2003年にドイツの製薬会社で開発されたRadiogardaseという薬をFDAが承認しており、一定の安全性は満たしているようです。

 我が国では、原発事故は”あり得ない”ということを前提としているため、こうした薬品の開発や承認には、消極的であったようです。しかしながら、人が管理している以上、100%安全ということこそ、”あり得ない”のですから、医薬品面での準備を怠るべきではなかったと思うのです。原発事故の処理は長期化する見通しも伝えられていますので、厚労省は、国民の健康被害を抑えるべく、被曝対策の医薬品の承認を急ぐべきなのではないでしょうか。

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福島第1原発事故―海洋汚染に危機感を

2011年04月02日 15時49分58秒 | 日本政治
2号機施設破損、高濃度汚染水が直接海へ(朝日新聞) - goo ニュース
 本日のニュースによりますと、福島第1原発2号機の取水口付近にあるたて抗に亀裂があり、高濃度の汚染水が漏れ出し、直接海に流れ込んでいるようです。原発から50キロ沖での汚染も報告されており、海洋汚染の拡大が懸念されます、

 実際の汚染度は別としても、ロシアなどでは、日本産の海産物を輸入禁止措置にする動きがあるそうです。他の諸国でも、日本食に対する警戒感が広がっているようで、風評被害を放置しますと、水産業や食品産業に打撃を与えることになります。加えて、海洋汚染の原因国ともなりますと、国際的に環境意識高まるなかで、厳しい非難を受けることも予測されます。

 施設を徹底的に調査し、全ての亀裂を無人ロボットなどを使って至急に修復すると共に、濾過施設の設置や海洋での浄化措置(海藻が有効?)の検討など、直ぐにでも取り掛かれる対策はあるはずです(フランスからも、汚水処理の専門家の方々が来日しておられる・・・)。日本国の信用を失墜させないためにも、政府も東電も、冷却作業と並行して、全力で海洋汚染対策に取り組むべきと思うのです。

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計画停電―経済界は節電プラス供給能力拡大で対応を

2011年04月01日 15時32分43秒 | 日本経済
経済界の節電目標「前年比25%減」 業界ごとに計画へ(朝日新聞) - goo ニュース
 大震災の発生に付随して起きた福島第1原発の事故により、国民の多くは、電力供給の減少が、如何に経済にマイナス影響を与えるのかを知ることになりました。計画停電による経済活動の縮小は、雇用問題への波及も懸念されています。

 現代社会とは、雇用も含めて、エネルギー供給によって支えられているようなものです。普段は誰も意識していませんが、1億3千万人が仕事を持ち、生活を送っていけるのも、充分なエネルギーが供給が約束されてのことなのです。ところが、今回の事故で、現代社会は、エネルギーの供給能力問題に正面からぶつかることになりました。つまり、エネルギー供給に上限ができてしまったのです。このことは、経済や産業にとりまして、深刻な障壁が出現したことを意味しています。

 経団連では、25%の節電計画を立てているようですが、節電と並行して、この障壁を乗り越える策を練ることはできないのでしょうか。東電の事業者としての対策の他に、民間の企業でも、電力ではない他の動力への転換、自家発電機の導入促進、様々な発電施設や機器の活用といった対策はとれるはずです。生産と雇用が縮小しては、国民の生活不安が高まりますので、ぜひとも、供給能力拡大にむけて頑張っていただきたいと思うのです。

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