風の遊子(ゆうし)の楽がきノート

旅人を意味する遊子(ゆうし)のように、気ままに歩き、自己満足の域を出ない水彩画を描いたり、ちょっといい話を綴れたら・・・

楽書き雑記「大胆なタッチで描いた名古屋・大須の『隠れた名所』個展」

2015-07-14 19:19:27 | アート・文化

    

若者たちや外国からの観光客らで、東海地方有数の賑わいをみせる名古屋・大須の町。
「でも、本当の大須を見てもらえていない気がする」というアマチュア画家が「大須・隠れた名所8景展」と題する水彩画の個展を、名古屋・栄の市民ギャラリーで開いています。

馬場達郎さん。鹿児島県出身。50年前に大須に移り住み、刺繍業を営んでいます。
絵筆を手にしたのは「娘が進んだ名古屋芸術大学の後援会で『壁の華』という美術グループ属したのがきっかけ」だったとか。

いろいろ描いてきましたが「せっかくなら、大須の町を描いたら」の声に、初めて開く個展のテーマが浮かんだそうです。

幕末に役者・芸人らの宿、そして遊郭街ができ、やがて演芸場や映画館なども集まる名古屋唯一の歓楽街に。大戦末期の米軍による大空襲によって町は壊滅しましたが、復興とともに何本ものアーケードのある大商店街として立ち直り、近年は全国各地から若者たちがやってくる繁華街になっています。
こうした時代の変化の中で埋没していくものを描き起こしてみよう、と思ったのです。

展示された作品は20号1枚、30号2枚、40号8枚の計11点。戦前の待ち合わせ場所、大須の変化を見つめてきたであろう大木などの風景に加えて、馬場さんの自画像も。どの作品にも、古希の世代と思わせない勢いを感じます。

馬場さんの作品の持ち味は、スピードと大胆なタッチ。
「かなり厚めの画用紙に木炭でデッサンしたら、水彩絵の具をできるだけ大きな筆や刷毛で一気に塗ります。そして乾いたら洗います。ティッシュや布で何度も洗って塗りの繰り返しです」

「小さな筆だとどうしても絵がこじんまりします。大きな筆で細部を描くことができなかったり、勢いのあまり柱が傾いても気にしません。画用紙のサイズが大きいのも、思い切って描けるからです」

未明の3時ごろに起きて本業の刺繍を始めるまで描いているとか。展示作品は5月、6月、今月上旬まで2か月余で描きあげたそうです。

もうひとつ、馬場さんのこだわり――。
「刺繍の世界にもコンピューターが入ってきましたが、私はそうしたものには頼りません。風や光がコンピューターで描けるとは思えませんから」

  ※作品の一部を掲載します。蛍光灯の光などが入ってしまい申し訳ありません。