織田信長が居を構えた安土城(滋賀県近江八幡市)の天守跡を目指し、杖を頼りに大手道を一歩、一歩登ってきた石段も最後のコーナーへ。
一足先にたどり着いた仲間たちの声が聞こえます。石垣を覆っていた木々の間から差し込む日差し。「登りきったぞ」。ホッとした思いと満足感がわいてきました。
5重6階建てだったとされる天守の跡地に立ちました。
眼下の向こうに琵琶湖が見えます。湖畔に広がる水田と民家の集落。前日から立ち込めていた雲の合間からのぞく空の青。それがどんどん大きくなる様子に、帰り道への不安も和らぎました。
目にすることはできませんが、東方には信長のふるさとの尾張や手に入れてきた美濃、そして琵琶湖の向こうには信長が動向を気にしていた越前や加賀の地が広がっています。
信長の掲げた「天下布武」。ネットを開くと、この造語にはいろいろな解釈があるようです。読み方が『てんかふぶ』なのか『てんげふぶ』なのか、その意味も『武力をもって天下統一をはかる』なのか『民の安寧など総合的な力量をもって』なのか。「武ではなく歩である」といった意見も見受けます。
果たして信長自身はここに立ち、どのような思いを巡らせていたのでしょう。作品は10号です。
安土城址の天守跡から琵琶湖畔を臨む