「雑草」とされがちな草にも名前プレートがあります
石垣のシダ類にも説明が
道端や田畑で見かける『雑草』にも、きちんと名前や科目が分かるプレートが立っています。
ここは、学校でも学んだ「日本の植物分類学の父」とされる牧野富太郎(1862~1957)の功績を称え、故郷の高知県が設けた高知市・五台山の牧野植物園。先に高知へ出かけた際に立ち寄り「本来の植物園が、ここにはある」との印象を持ちました。
山の起伏を生かした約6㏊の園内の植物は、約3000種とか。真夏とあって花の姿はあまり見かけませんでしたが、その分、豊かな緑に包まれました。
歩くうち、名古屋の東山植物園などこれまで出かけた植物園との違いにいくつか気づきました。
ひとつは、さほど広くないカンナやバラ、ツツジなどの園がありますが、他園で見かけるような1カ所に何百本、何百株もの花が咲く花園や庭園は存在しないことです。
広いと言っても、東山植物園の4分の1足らずの面積では致し方ないでしょう。そのかわり、小さな庭がいくつかあって、樹木と草が一体になって目を楽しませてくれます。木立のそばで草が勢いよく伸びています。
さらに決定的な違いだと思ったのは、どの草木にも名前を書いたプレートがあることです。立木や大きな草花だけでなく、根元や周りの草にもプレートがあります。
とりわけ、正門から続く「土佐の植物生態園」。いわゆる『雑草』として引き抜かれるであろう、さまざまな草の全てにプレートが立ち、名前を知ることができます。
石垣から顔を出すシダなどにも名前のプレートがありました。
手入れ作業をしている女性職員に目が止まり、声を掛けました。
――あそこの樹木と周りの草との調和がとれている感じですね。
「お客さまが見やすいようにするなどのために、草を取り除いたりはしますが、なるべく自然な状態を残しています」
――僕らが雑草だと思っている草にも名前のプレートがあるのを見て、ここには雑草という概念はないように思いました。
「はい、実は私もここに入ったばかりのころ『雑草』という言葉を口にして、先輩から『雑草というものはないよ。名前もあるのだから』と注意されたことがあります」
とはいっても、樹木も含めて種子や根で生え放題、伸び放題にはできないでしょう。それに草は多年草だけではありません。1年草だと翌年も同じところに生えるわけではないから、プレート板の移動など手間もかかることでしょう。
さすが「植物学者・牧野の植物園」「本来の植物園」ですね。
また訪れたいと思いました。
滝つぼの魚の姿も
オオオニバスにも乗れます
「遍路道」の名前がついた石段の散策路
土佐寒蘭のコーナー