吾妻の山々も
雪化粧をし、
すっかり冬めいてきた。
巷では、
コロナ、インフル、マイコの
“トリプルデミック”が
流行っており、
身内の者も罹って
難儀をしたという。
*
きのうは、
叔母・叔父さんたちと
常連の三星懐石での
会食会だった。
叔母二人とは
幼い頃、同居していた
気心の通う間柄なので、
二時間のあいだ
笑いっぱなしだった。
特に、八十になったばかりの
タカちゃんは、
ピン芸人顔負けのオシャベリなので、
ハラが捩れるほどに
笑わされた。
常連店の座敷ならではの
無礼講だったから、
哄笑でもって
愉快な叔母の笑劇場を満喫できた。
…
先付けは、
揚げ胡麻豆腐。
お喋りの叔母さんが
いきなり山葵でむせて
ヒヤリとしたが、
気だけは若いので
「婆さん。あるあるだねぇ…」
と、自虐ネタで
笑わせてくれた。
スーパーでも
胡麻豆腐は買えるものだが、
それを片栗粉をつけて
「揚げ出汁豆腐」にする
という発想はなかなか
家庭では浮かばないが、
今度、やってみようと思った。
…
八寸は、
焼き白子、烏賊の黄身焼き、
海老の含め煮、生麩田楽、
干柿の天麩羅。
先月のフレンチ同様、
鱈の白子に
まったく臭みがないので、
それなりの下拵えが
施されているのだろう。
烏賊はお造りでも出された
身のぶ厚い樽烏賊で
モッチリと噛み応えがあった。
先日の京都での
『美濃吉』『熊彦』『錦水亭』の
八寸にも引けを取らぬものであった。
…
煮物椀は、
錦真蒸、紅葉麩、
黄柚子・・・の牛乳仕立て。
最高の一番出汁に
わずかに牛乳が加わって
モダン且つ華やいだ
吸い地であった。
…
お造りは、
縞鯵、樽烏賊、紅葉鯛、鮪。
シマアジは、
透明な身に
銀皮の跡が残り
美しく見栄えも佳かった。
…
蒸し物は、
鮟肝、生麩、トリュフの
餡かけ茶碗蒸し。
蛸唐草の碗蓋を取ると
ふわりとトリュフの艶冶な香りが
立ち昇った。
まったりした味わいの鮟肝は
恰もフォアグラのような食感だった。
翡翠のような銀杏も
碗の底に潜んでいた。
…
焼き物は、
寒ブリに寒大根の
バルサミコ仕立て。
鰤ダイコンは
鉄板の取り合わせである。
バルサミコもモダンな
風味である。
…
〆は、
香り豊かな
切干大根のご飯。
叔母曰く
「ちょっとずつ、
ゆっくり食べると
おなか一杯になるねぇ・・・」
まさに、同感。
…
主菓子は、
紫芋と手亡(白隠元豆)の羊羹。
穏やかな甘味に癒され、
そこに、お薄を喫すると
法悦の心地よさに
陶然となった。
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今回は、
年長叔母の
ご馳走振舞いだったので、
「ゴチになりやす!!」だった。
持つべきものは、
ケチでない“小金持ち”の
叔母さんたちである(笑)。
「2000万の通帳が
どっかいっちゃった・・・」
だの、
「手元にいつでも使える200万、
現金で隠してある・・・」
だの言うので、
「死んだら、家(や)探ししよーッ!!」
と、年少叔母と大笑いになった。