K高が文化祭だったので
校門にゲートが出来ていた。
車でここをくぐると
何だかフェスティバル・モードに
入るような不思議な感覚になった。
それは、さながら
神社の鳥居をくぐると
聖域に入るような感じにも似ている。
とすれば、ゲートとは
結界的装置であることに
あらためて気づいた。
人は産道というゲートを通って
この世に誕生してくるので、
その原記憶が
呼び覚まされるのかもしれない。
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『学校臨床の実際』
境界性パーソナリティ障害
4徴候
通常、境界例とかボーダーライン(borderline personality disorder)と言われるこの障害は、これまで30年間、高校生と付き合ってきて、およそ1~2%くらいの頻度で見られたように思う。
これは、認知・感情・対人関係に歪みがあり、自他ともに苦痛を感じるものである。
DSMでは詳しく8つの操作的診断の定義をしているが、この権威でもある市橋秀夫先生からは大学院時代に、「人がすぐに記憶できるのは4つが限界だから、4徴候だけおさえたらいいよ」と教わった。
それで、その頭文字をとってSAMA(サマ)と覚えた。
まずは、Splitting(分裂)がある。
これは、心の中が、二分法的で中庸がな状態で、白か黒か、悉無律(all or nothing)の状態ともいえる。
例えば、子どもが時代劇を見ると、「この人は、いい人? 悪い人?」と訊く。このように間がなく、どちらか両極に価値付けるのは幼児的心性と見做されている。
ボーダーの子にとって、自分の味方はいい人、反する人は悪い人、と極端である。
市橋先生の名著『心の地図』によれば、愛されている良い自分と、愛されていない悪い自分が、統合されないままに分裂しているので、それが外に投影されると、同一人物であっても、自分に都合のよいときは「超いい人」になり、ちょっとでも不都合があると、手の平を返したように「超悪い人」に転じてしまうのである。
健常人ならば、白か黒かではなく、グレー・ゾーンがあるものである。
Abandonment depression(見捨てられ不安)は、周囲の人に抱く感情である。
これは、幼い子が家に一人っきりで置き去りにされたときの心情を想像すると、よく理解できる。最初は不安になって親を探すが、やがて寂しくなって泣き出し、それでも親が現れないと怒りの感情が湧きあがり、その後に空虚感が襲ってくる。
同様に、「見捨てられ不安」も、孤立無援感、空虚感、自棄感、激怒感などが複合している心的状態(complex)なのである。
学童期は心身ともに静穏な時期であるが、思春期に入ると性衝動や自立衝動、攻撃衝動などを内側から経験することになり、外的適応と共に「思うようにならない」事態に直面するので、抑圧されていた「見捨てられ不安」が再燃し、それまでの「良い子」だけでは対応しきれずに「悪い子」が突出してくる。
自他への攻撃性の行動化は、リスカやOD、素行障害となって顕現する。
Manipulation(対人操作)
市橋先生曰く「彼らは相談の名人である」。殊に、救済者幻想(messiah complex)、思春期心性を持っている人がターゲットになり、周囲の人間関係が滅茶苦茶になりスプリットが起こる。
ボーダーの本人には、これは自覚がない。
Acting out(行動化)
これは言葉が成立する時期(3歳)以前の衝動が、言語で表現できないがゆえに行動で表わされる。
頻回自傷、素行障害、摂食障害、などが時に自己顕示的に見られる。
病理
他にも、ボーダーには、特有の他罰的物言いがあったり、病識・治療動機が欠如していること、などが臨床像として特徴的である。
思春期以降の発症がほとんどで、75%が女子である。有病率は2%ほど。
来談の契機は、高校生では「気分が落ち込む」とか「友達関係がよくない」というのが多く、不登校や性的逸脱、DVなども少なくない。
一親等親族の発症が5倍高いという報告があるので、家族歴は3代聴取するとよい。
抑うつ状態や睡眠障害がある場合は、ドクターに薬物療法をお願いするが、学校では療育的関与、リハビリ的心理療法が必要である。
ただし、この障害の中等度以上のものは、養護教諭や教育相談係のレベルで扱えるものではないので、ベテランのスクール・カウンセラー(SC)に任せるべきである。
カウンセリングは、受容したり、支持したりするのではなく、むしろ、「今、ここで」の原則で、適応するための社会スキルや対人スキルを身につけさせるようにすることが主となる。