報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰りの旅路」 2

2023-03-24 16:16:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月30日18時11分 天候:晴 東京都墨田区押上 東武鉄道とうきょうスカイツリー駅]

〔♪♪♪♪。まもなく、とうきょうスカイツリー、とうきょうスカイツリーに到着致します。お出口は、左側です。とうきょうスカイツリーから、京成線、都営地下鉄浅草線はお乗り換えです。……〕

 下車駅が近づいてくる。
 確かに座席は鬼怒川温泉駅から満席に近くなり、私の隣の席も埋まったが、その客は北千住駅で降りていった。
 それ以来、隣の席は空いたままだ。
 後ろの席で、高橋とリサが後ろから無言の圧を掛けていた感はあったが、スルーしておこう。

 愛原「よし。降りる準備するぞ」
 高橋「ハイ」

 今は新しくなった駅のホームに、列車が滑り込んだ。

〔ご乗車ありがとうございました。とうきょうスカイツリー、とうきょうスカイツリーです。京成線、都営地下鉄浅草線はお乗り換えです。……〕

 私達はここで電車を降りた。
 東京でも有名な観光地、東京スカイツリーの最寄り駅であり、日曜日の夕方ということもあってか、駅は多くの利用客で賑わっていた。

 リサ「お腹空いたな……」
 愛原「菊川に着いたら、ファミレスにでも行こうか」
 リサ「おー!」

 お昼にソースカツ丼を食べたリサだが、夕方は夕方で腹が減るらしい。
 再びGウィルスが活性化したことで、エネルギーの消費量が大きくなったか。
 今のリサはGウィルスに、Tウィルスが結合した状態だということも分かっている。
 Tウィルスが死滅したというのは、Gウィルスと結合していない部分。
 寄らば大樹の陰とばかりに、Gウィルスと結合したTウィルスについては死滅していなかった。

 リサ「トイレに行ってくる」

 エスカレーターを下りてコンコースに出ると、リサがトイレに向かった。
 それからしばらくして戻ってくると……。

 リサ「外、風強いからブルマ穿いてきた」
 愛原「ああ、そう」
 高橋「2~3日間穿きっ放しじゃ、臭うんじゃねーの?w」
 リサ「ムッ

 バチッ

 高橋「いってーな!」

 リサ、高橋に強い静電気をお見舞いする。

 愛原「さっさと行くぞ」

 駅の外に出ると、ピュウッと強い風が吹いてきた。
 これは、ビル風だろうか?
 東京スカイツリーの麓にいるが故の……それとも、ただの強い風か?

[同日18時40分 天候:晴 同地区 都営バス業10系統車内]

 駅前のバス停から、都営バスに乗り込んだ。

 リサ「お兄ちゃん。今度はわたし、先生の隣がいい」

 バチッ

 高橋「火花散らして、脅迫すんじゃねー!」
 愛原「まあまあ。今回くらいはいいだろ」
 高橋「はあ……」

 私とリサは2人席に座り、高橋はその前の1人席に座った。

 愛原「い、いいかリサ?このバスは水素燃料で走るタイプだ。水素も火花で引火して爆発する恐れがあるから、電撃はダメだぞ?」
 リサ「先生が浮気しなければ大丈夫だよ」
 高橋「浮気してねー俺、オメーから火花食らったんだが?」
 リサ「お兄ちゃんは別」
 高橋「あー、そうかよ」

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは発車の時刻になると、前扉を閉めて発車した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは東京都現代美術館前、豊洲駅前、勝どき橋南詰経由、新橋行きでございます。次は言問橋、言問橋でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は、本所吾妻橋でお降りください。次は、言問橋でございます〕

 リサ「本所吾妻橋……」
 愛原「どうした?」
 リサ「あの、鬼斬り先輩が住んでいるところ……」
 愛原「ああ、同じ区内だったな。まあ、バスの中にいれば大丈夫だよ。それに、こんな暗くなる時間だ。そんなに出歩いているとは思えんよ」
 リサ「そうかな……」
 高橋「つーかよ。オメーの電撃をもってすれば、刀程度のヤツ、ビリビリにできんじゃねーの?」

 するとリサ、目を丸くした。

 リサ「むふー!そうか!」
 愛原「あー、ケンカは禁止な。PTA会長代行として、見過ごすわけにはいかん」
 リサ「……はーい」

[同日18時55分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営バス菊川駅前バス停→ジョナサン菊川店]

〔「菊川駅前です」〕

 バスがバス停に到着する。
 私達は中扉かうら、バスを降りた。
 地下鉄の乗り換え駅や、他のバス路線への乗り換えもできる為、下車客はそれなりにいる。
 その分、乗車客も多いのだが。

 愛原「じゃあ、飯食いに行くか」
 リサ「りょ!」
 高橋「うっス!」

 私達は交差点を渡り、ファミレスに向かった。

 高橋「おっ!?」

 路地からボボボと改造マフラーから排気音を吹かして、遊び車が出てくる。
 駐車場の出口は路地に出る形になるので、そこから大通りに出ようとしているわけだ。

 高橋「今どきランエボか。やるねぇ!」
 愛原「そうなのか。最近は外国人が多いらしいな?」
 高橋「そうっスね。埼玉とか千葉とか……あの辺行くと、おめー何人?って感じの外人が乗ってたりします」
 愛原「今の日本人は、カネが無いからな……」

 店の中に入る。

 店員「いらっしゃいませー」
 愛原「3名です」

 というわけで、空いているテーブル席に着く。

 愛原「人数は3名な?」
 高橋「はい」

 テーブルの上のタブレットに、人数を入力する。

 愛原「何がいい?……って、リサはステーキになるよな?」
 リサ「いい?」
 愛原「いいよいいよ。鬼に『肉禁止』なんて言おうものなら、暴走決定だもんな」
 リサ「さすが先生!」

 因みに本所吾妻橋近辺で、栗原蓮華と会うことは無かった。

 愛原「まずはビールだな」
 高橋「うっス」
 リサ「まずはビールだね」
 愛原「リサはドリンクバーにしとけよ?」
 リサ「……はーい」

 高橋がタッチパネルを操作する。

 愛原「俺はハンバーグでいいや」
 高橋「了解っス。ハンバーグっスね」

 注文が一通り終わると、リサはドリンクバーへと向かった。
 ビールはロボットが持ってくるのではなく、これは店員が持って来た。
 アルコールだからだろうか。

 愛原「リサ、明日から学校行くのは大丈夫だな?」
 リサ「うん、大丈夫」

 善場主任の話だと、リサの新しい制服は既にマンションに届いているという。

 愛原「前のサイズの小さい制服はリユースできるようだが、体操服がな……」
 リサ「小さいブルマ穿いて、ハミパンとか、お尻食い込みとか先生好きでしょ?」
 愛原「読者に誤解されるから、やめなさい」
 高橋「いや、もう手遅れっス」

 明日、私と高橋は報告、リサは登校だ。
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“私立探偵 愛原学” 「帰りの旅路」

2023-03-24 10:26:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月30日13時30分 天候:晴 福島県南会津郡南会津町(旧・田島町) 会津鉄道会津田島駅]

 道の駅から旧・田島町の街中までは、30分くらいである。
 但し、今はバイパスがあるからスムーズに行けるのであって、旧道の峠は狭く、軽やかに行ける状態ではないのだそうだ。
 街中のガソリンスタンドで給油し、満タンの状態でレンタカー会社に車を返す。
 それから、会津田島駅まで徒歩で向かった。

 愛原「まだ少し時間があるな」

 私は改札口の上の時刻表を見て呟いた。

 愛原「15時ちょうど発、特急“リバティ会津”114号、浅草行きだ」
 高橋「この足で、ねーちゃんとこに報告を?」
 愛原「いや、今日は日曜日だから、報告に行くなら明日だろう。別に、今日来いとも言われてないし」
 高橋「ああ、そうっスね」
 愛原「それより、まだ少し時間がある。駅の中にいればいいだろう」

 駅構内にも物産館はある。
 さすがにホームには行けないようだ。
 何故なら、会津田島駅は列車ごとに改札口を開けるシステムになっており、列車の無い時間帯は改札口が閉じられている。
 地方のローカル駅では、よく見かける光景だ。
 もちろん無人駅ならそんなことはないし、そんなに大きくない駅の、駅員配置駅であるパターンである。
 浅草行きが出ているからか、ここでも東京スカイツリーの案内が出ていた。

 愛原「善場主任にお土産でも買って行くか?」
 高橋「前に、『贈収賄罪に問われますよ』って言われませんでしたっけ?」
 愛原「善場主任も、元鬼なら、酒ガブガブ行けると思うんだけどな……」
 高橋「そういや、あのねーちゃん、全然酔いませんね!?」
 愛原「そうなんだよ」
 リサ「じゃあ、わたしが飲む!」
 愛原「オマエはあと3年待て」
 リサ「えー……。わたし、本当は先生より年上……」
 愛原「人間のままだったらの話だろう?ダメダメ」
 高橋「先生の命令は絶対だぜ?」
 リサ「ぶー……」
 高橋「俺達が自分達用に買えばいいんですよ。で、ねーちゃんも『一杯どう?』みたいな感じで」
 愛原「おっ、それはいいな!高橋、冴えてる!」
 高橋「いやァ……」(〃´∪`〃)ゞ
 リサ「そんなァ……」(∀`*ゞ)
 愛原「リサは褒めてない」

[同日14時50分 天候:曇 同地区 同駅→会津鉄道会津線1144M列車最後尾車内]

〔「15時ちょうど発、特急“リバティ会津”114号、浅草行きの改札を始めます。ご利用のお客様は、改札口までお越しください」〕

 こういう放送が流れて、私達はキップを手に、改札口に向かった。
 自動改札機は無く、ブースの中に駅員が立って、キップを切っている。
 私達もこれでようやく、ホームへ行けるわけである。
 1番線に行くと、3両編成の特急が停車していた。
 途中で前に3両を連結するので、都内へは6両編成で向かうことになる。

〔♪♪♪♪。ご乗車ありがとうございます。この列車は特急“リバティ会津”114号、浅草行きです。……〕

 座席は全部指定席なので、キップが買えれば、席にあぶれることはない。

 愛原「ここだな」

 私は進行方向左側の窓側に座り、リサと高橋はその後ろに座ってもらった。
 まあ、往路と同じ席順である。
 私は座席に座ると、スマホから善場主任に、これから帰京する旨の連絡をメールで入れておいた。
 リサは座席のテーブルを出し、その上に駅で買った飲み物や食べ物を置いている。

 高橋「先生。今回の降りる駅は、とうきょうスカイツリー駅前なんスか?」
 愛原「そう。そこから、バスに乗り換えできるじゃん」
 高橋「ああ!」

 往路は朝早かったので地下鉄で行ったが、帰りはバスならまだ走っている時間帯だし、あとは帰るだけなので、遅延とかも気にする必要はない。

[同日15時54分 天候:曇 栃木県日光市藤原 野岩鉄道・東武鉄道新藤原駅]

 

 列車が新藤原駅に到着する。
 ここから南は、終点の浅草まで東武鉄道の線路になる。
 その為か、ここで乗務員交替が行われ、停車時間も3分ほど取られていた。

 愛原「ちょっと、飲み物買ってくるわ」
 高橋「お供します!」
 愛原「……せんでいい」

 今のところ、まだ私の隣には誰も座っていないが、鬼怒川温泉駅辺りから混んで来る可能性はある。
 だから、まだいないうちに買ってきておこうかと思ったのだ。

 愛原「んん?」

 雨は降っていないのだが、空はどんよりと曇っていて、風も若干強い。
 ホームの自販機に向かう。

 リサ「先生!」

 後ろからリサの声がした。

 愛原「リサ!」
 リサ「わたしもジュース買う」
 愛原「会津田島で買ってたんじゃなかったのか?」
 リサ「ペットボトルの方はまだ残ってるよ。だけど、缶の方がね」
 愛原「何だ、それ……」

 ホームの自販機で私は缶コーヒーを買い、リサはジュースを買った。
 ヒュウッと強い風が吹いている。

 愛原「リサ、スカート気をつけろ。俺以外には見せたくないんだろ?」
 リサ「もちろん。……よく分かったね?今はブルマ穿いてないって」
 愛原「うおっ!?……温泉入る時は面倒だから穿かないとか言ってなかったっけ?」
 リサ「そうだったかな……」

 因みに下がスカートではなく、ショートパンツの時はそもそもブルマを穿かない。
 私達だけではアレなので、高橋にも買って行ってやった。

 愛原「お待たせ。オマエの分も買って来たぞ」
 高橋「あっ、あざっす!下今市駅で買いに行こうと思ってたんスけど……」
 愛原「一服するだけでせいぜいだろう?それに、鬼怒川温泉以南は混むだろうし」
 高橋「はあ……」

〔「お待たせ致しました。15時57分発、特急“リバティ会津”114号、浅草行き、まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 乗務員は車掌も交替するので、車掌の声も変わる。
 そして信号も開通したのか、列車は定刻通り、東武鉄道の線路を走り出した。
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“私立探偵 愛原学” 「次なる道の駅」

2023-03-23 21:33:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月30日11時25分 天候:曇 福島県南会津郡南会津町 道の駅きらら289]

 桧枝岐の道の駅を出た私達は再び、国道352号線を北上した。
 その途中に林道へ入る交差点があるのだが、入口は警察官によって塞がれていた。
 『緊急につき、全面通行止め』という看板も立っていた。
 どうやら、未だにBSAAが捜査を続けているらしい。
 地元警察との合同だろうか?
 しかし、民間委託の私達の仕事はもう終わりだ。
 その交差点を通り過ぎる。
 途中で今度は国道の番号が401に変わり、それを少し進んで国道289号線との交差点を右に曲がる。
 曲がるとすぐにトンネルがあるのは、こちらはバイパスだからだ。
 旧道はもう少し先にあって、そちらはそちらで地元住民の生活道路として残されているが、廃業したガソリンスタンドがあったりと、旧道化の影響が出ているという。
 そのバイパスと旧道が合流する辺りに、次の道の駅はある。

 高橋「着きました」
 愛原「はい、ありがとう」

 高橋は駐車場に車を止めた。
 トンネルを抜けた所にあるくらいだから、この道の駅も山に囲まれている。

 愛原「早速、温泉に入ろう」
 高橋「またお背中、お流し致します!」
 愛原「ありがとう」

 私達は車を降りた。
 そして、建物の中へと入る。

 リサ「先生。温泉入った後は、お昼だよね?」
 愛原「まあ、そのくらいの時間にはなるな」
 リサ「それなら、ここで食べる?」
 愛原「ここで食べるのが無難だろうな」
 リサ「やった!」

 リサは何かお目当ての物でも見つけたのだろうか?

 愛原「それじゃ、風呂から出たら、またここでな」
 リサ「分かった」
 愛原「ここも露天風呂があるようだが、女湯から大声で声を掛けないように」
 リサ「う、うん。分かった……」

 私と高橋は男湯に、リサは女湯に移動した。

 高橋「はっ!この不肖の弟子!高橋正義が!愛原学大先生の御背中を!恐れ多くも、流させて頂きたく存じます!イヨーッ!」

 ポン!(洗面器の底を叩く音)

 愛原「恥ずかしいから、そういうのも禁止!」
 高橋「えーっ!」
 愛原「『えーっ』じゃねぇ!」

 それでも私は、一応高橋に背中を流してもらうことにした。
 そんな茶番という名の通過儀礼が終わって、ようやく温泉に入れた。

 愛原「ふーっ!」
 高橋「結構、いい旅っスね」
 愛原「そうだな」

 露天風呂にも移動する。
 幸いもう雨は止んでいるので、雨に当たることはなかった。

 愛原「しかし、さっきの隊長の話、まだ分からないところがあるな」
 高橋「何スか?」
 愛原「上野って医者が医療ミス起こして、東京から桧枝岐まで逃げてきたというのは、まあまだ分かる」
 高橋「はい」
 愛原「リサは、その上野って医者の娘ってことになるのかな」
 高橋「そうかもしれませんね」

 リサがもしも人間のままであるのなら、50歳くらいである。
 上野という医者が桧枝岐村に流れ着いたのが50年前で、そこの未亡人と再婚したのなら、確かに年齢の辻褄は合う。
 私の夢では他にも娘達が何人かいて、全員が白井に捕まったのだろう。
 白骨死体は上野医師や、その妻と見て間違いない。
 どうして、白井が上野達を襲ったのかということと……。

 愛原「栃木の上野利恵達との関係だな」

 上野医師の娘達の中に、利恵はいなかっただろう。
 そうなると、別の兄弟のコか。
 上野医師に兄弟がいたとして、そこから生まれた娘なのだとすれば、確かにリサとは従姉妹同士ということになる。

 愛原「段々分かってきたな。あとは、白井がどうして上野医師を襲ったのかだ」

 こればっかりは、本人を捕まえないと分からないか?
 その白井が今、どこにいるのかが不明だからな……。

[同日12時30分 天候:曇 同道の駅]

 風呂から出た後は、休憩コーナーで少し休む。
 マッサージチェアがあったので、これを利用してみる。

 リサ「うぅ……!触手の出入口がグリグリ……」
 愛原「おい、触手なんてまだ出せるのか?」
 リサ「出してみる?」
 愛原「いや、ここでは出すな!」

 マッサージチェアで体をほぐした後は、食事処へ。
 食券方式であった。
 だいたいの道の駅の食事処は、食券制度であることが多いか。

 愛原「何がいい?」
 リサ「わらじソースカツ丼」
 愛原「了解。高橋は?」
 高橋「じゃあ、俺もそれを」
 愛原「分かった。俺は天ざるそばにしよう」

 私は食券を買うと、カウンターに出した。
 あとは、空いているテーブル席に座る。

 愛原「リサ、フード被ってるけど、角が隠せないのか?」
 リサ「ああ、大丈夫。癖で被ってるね」

 リサがパーカーのフードを取ると、確かに2本に増えた角が隠れていた。
 但し、牙は隠せないようだが、このくらいなら、まだ誤魔化しが効くだろう。
 しばらくして、注文した物が運ばれてきた。

 リサ「『今日のお兄ちゃんの昼食はカツ丼。刑事ドラマ風に演出してあげた』」

 リサはミニチュアサイズの電気スタンドを取り出すと、それを高橋の前に置いた。

 リサ「美味いか?」
 高橋「何なんだよ?」
 愛原「高橋、警察の取り調べ中にカツ丼食べたことは?」
 高橋「いや、無いっスよ」

 これが現状。

 愛原「カツ丼といえば、卵とじというイメージがあるが、ソースカツも悪くなさそうだな?」
 高橋「ええ、そうっスね」

 尚、リサはソースカツ丼にも七味唐辛子を掛けて食べていた。
 鬼は辛党だというが、どうやら本当のようである。
 それでも、デザートにソフトクリームを食べたがる辺りは、完全に鬼ではないとも言えるし……。
 まあ、綱渡り状態ではあることに間違いないようだ。

 高橋「先生、この後は?」
 愛原「会津田島に向かうぞ。車返さないといけないしな」
 高橋「確かにそうですね」

 当然ながら、返却の前にガソリンを満タンにしなくてはならない。
 幸い街中ということもあり、そこにガソリンスタンドは何軒かあるようだ。
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“私立探偵 愛原学” 「桧枝岐村からの帰路」

2023-03-21 20:14:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月30日10時00分 天候:曇 福島県南会津郡桧枝岐村 道の駅『尾瀬桧枝岐』]

 旅館をチェックアウトした私達は、車に乗り込んで国道352号線を進んだ。
 案の定、5分と掛からず、道の駅に到着する。
 日曜日ということもあり、駐車場には他県ナンバーの車が多く見受けられた。
 そしてその中に、都内でも見覚えのある車を見つけた。
 それはBSAAの医療車だった。
 くすんだ緑色に、大きく赤十字のマークを付けている所は自衛隊の救急車と酷似している。
 日本のBSAAは殆どが自衛隊からの出向者で構成されていることから、こういう車両も自衛隊から出向しているのかもしれない。
 で、実際の自衛隊のそれとの見分け方は、ナンバープレートや所属が明記されていることだろう。
 自衛隊のナンバープレートと違い、しっかり陸運局からのそれを付けている。
 もちろん、8ナンバーだが。
 そして、ボディにもBSAA-JFAと書かれている。
 JFAとは、『Japan Far East』の略である。
 極東支部日本地区本部のことだな。

 愛原「高橋、あそこの近くに止めてくれ」
 高橋「分かりました」

 雨は上がっているが、まだ空はどんより曇っている。
 BSAAの車の近くに止めて、そこから降りると、私達の存在に気付いたBSAA隊員も車から降りてきた。

 BSAA隊長「この度は、御足労ありがとうございます」

 BSAAの軍服を着た隊長が敬礼をした。

 愛原「こ、これはどうも、ご丁寧に……。それで、今日は何の御用でしょうか?」
 隊長「単刀直入に申し上げます。そこにいるリサ・トレヴァー『2番』の遺伝子を採取させて頂きたいのです」
 愛原「遺伝子を採取???」
 隊長「ここでは何ですから、車の中へ」

 さすがに目立つからか、一般人達がこちらを見ている。

 愛原「は、はい」

 荷台のハッチを開けると、中は救急車のそれとあまり変わらなかった。

 隊長「愛原さんが見つけてくれた白骨死体との関係性を調べたいので、遺伝子採取にご協力をお願いします。具体的には、採血をさせて頂ければと思います」
 愛原「そういうことですか。リサ、いいか?」
 リサ「先生の命令なら聞くよ」
 愛原「じゃあ、協力してやってくれ」
 リサ「分かった」

 もし私やリサの夢が正夢なのだとしたら、あの白骨死体達は白井が率いるUBCSに殺されたリサの両親なのかもしれない。
 しかし、ここで疑問が残る。

 愛原「私の推理では、あの白骨死体は人間だった頃のリサの両親ではないかと考えています」
 隊長「それを確認したいのです」
 愛原「だとしたら、1つ疑問が残るんですよ」
 隊長「何でしょう?」
 愛原「桧枝岐村は落人伝説が残る村で、村民達の殆どはその子孫だと言われています。その為、苗字も3つしかないと言います」

 もちろん、公務員など(小中学校教師、消防職員、医療関係者、郵便局員やインフラ事業、ライフライン事業関係者など)、他地域から来て働いている者は除く。

 隊長「そうですね」
 愛原「しかしリサの人間だった頃の苗字は、『上野』です。違う苗字の人間が住んでいたなら、この村では目立つと思うのです」
 隊長「そうですね。だからこそ、村外れの林道の、それも脇道を入った所に住んでいたのではないでしょうか」
 愛原「いやいやいや!林道って言ったら、林業関係者が主に使う道じゃないですか。いくら林道の本道からは見えない所とはいえ、そんな所に家を建てて住んでいたら、それはそれで目立ちませんか?」

 この村では、林業も主たる生業の1つだろう。
 そして、それこそ地元民の仕事であると思うのだ。
 にも関わらず、よそ者がそんな所にいたら……。

 隊長「こちらの調査では、それが許されていたのではないかと見られています」
 愛原「許されていた?どういうことですか?」
 隊長「これは50年くらい前の話になるのですが……」

 1970年代の頃だ。
 この村に、1人の医者がやってきた。
 東京の病院で働いていたのだが、医療ミスで患者を死なせてしまい、それからしばらくして、妻も病気で亡くなったので、その菩提を弔う旅をしていて、この村に流れ着いたのだと、村人に話したのだそうだ。

 愛原「その医者、もしかして白井という……」
 隊長「いえ、上野という名前だったそうです。白井とは直接何の関係もありません」
 愛原「何だ……って、上野!?」

 この村で受け入れられたのは、通り掛かった際に、山仕事をしていた村人が急病で倒れていたところを助けたばかりか、村長(桧枝岐村の村長ではなく、地区長という意味)の病気も治したのが理由だった。
 上野はこの村に住むつもりは最初は無かったが、村長(地区長)が大事な医者をこの村に留める為、村の未亡人を宛がい、外堀を埋める形で結婚させ、この村に住まわせたのだという。
 尚、現在この村は無医村ということはなく、旅館ひのえまたの近くに診療所がある。

 隊長「はい」
 愛原「ここで、リサのルーツが出てくるのか……」
 隊長「そのようです」
 愛原「だとしたら、堂々と村の中心部に住めばいいのに、どうしてあんな場所に?」
 隊長「今はもうとっくに時効を迎えていますが、医療ミスということで、刑事事件で捜査が行われていたようです。警察に逮捕されるのを恐れていたのではないでしょうか」
 愛原「マジか……」

 地区長や住民は、それを知っていたのであろうか?
 仮に知っていたとしても、無医村だったこの村に、念願の医者を留まらせる為には、村ぐるみで隠ぺいくらいはしたかもしれない。
 さすがに今は隠せないだろうが。
 で、白井はそれを嗅ぎ付けて、やってきたというわけかな。
 でも、どうして上野医師の所だったのだろう?
 私がその疑問を投げると、まださすがにそこまでは分かっていないようだった。

 隊長「今のところ、こちらで分かっているのは、これだけです」
 愛原「ありがとうございます」

 リサは採血を受けた。
 以前にもされたように、10本くらいは取られていた。

 隊長「ありがとうございました。ではまた何かありましたら、ご協力のほど、よろしくお願い致します」
 愛原「いいえ、恐れ入ります」

 これで話が終わり、私達は解放されたのだった。

 愛原「それじゃ、次の道の駅に行くか」
 高橋「はい」
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“私立探偵 愛原学” 「桧枝岐村での一泊」 2

2023-03-21 15:05:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月29日21時00分 天候:晴 福島県南会津郡桧枝岐村 旅館ひのえまた5階・客室]

 リサ「ヘリコプターが飛んでるよ?」

 リサが客室の窓から上空を見上げている。

 愛原「BSAAか?ヤバいことになってるのかもな」
 高橋「暗くて、よく分かんないっスね」

 高橋が双眼鏡で見てみた。

 愛原「まあ、BSAAだろうな。こういう山奥の村で、こんな時間に定期的にヘリが飛んでるとは思えない」
 高橋「確かにそうっスね」
 愛原「それと、さっき地図で見てみたんだが、旅館の前の国道352号線。これって新潟県方面に伸びてるじゃん?」
 高橋「そうっスね。魚沼市です」
 愛原「その途中から伸びている、この県道……の跡って、霧生バイパスなんだよな」
 高橋「今でも立入禁止区域になっている、霧生市の跡っスね」
 愛原「もしも俺やリサが見た夢が正夢だとすると、人間だった頃のリサが白井達に捕まった後、陸路で霧生市の研究所に行くことは可能なわけだ」
 高橋「そうっスね」
 リサ「でも、私は覚えてない。特に、変異してからは……」
 愛原「まあ、しょうがない。無理して思い出す必要は無いだろう。それよりも……」

 その時、また私のスマホにメール着信が入った。
 それは善場主任からだった。

 善場「明日の午前10時に、村内の道の駅『尾瀬桧枝岐』にて、BSAAと合流し、協力をお願いします」

 とのことだった。
 村内の道の駅には往路で立ち寄ったが、案外広い敷地であった。
 迷わずに合流できるか心配だったが、BSAAの車が駐車場で待っているという。
 BSAAの車なら目立つから確かに迷うことはないが、目立ち過ぎて通報されやしないかと別の心配をしてしまう。

 愛原「明日、道の駅でBSAAと合流して欲しいとのことだ」
 高橋「道の駅っていうと、昼飯食った所っスか」
 愛原「そうだ」
 高橋「何をさせられるんスかね?」
 愛原「さあな。でもまあ、所詮は民間の探偵業者だ。そんな俺達に小難しく、かつデンジャラスな仕事はさせないと思うがな」

 もう少し詳しく状況を聞きたいとか、そういうことではないかと思う。
 もしくは現場保存せず、勝手に穴を掘ったことを咎められるのだろうか?
 しかし警察と違って、BSAAはあくまでバイオテロの鎮圧や予防に勤しむ国連機関だからなぁ……。

 愛原「ま、とにかく、俺達の仕事は明日もあるってことさ」
 高橋「はあ……」
 愛原「そうと決まったら、早めに寝ることにしよう。酒も無し」
 高橋「どうします?もう1回、風呂に入ってきます?」
 愛原「あー、そうだな……」
 リサ「ここ、ゲームコーナーとか卓球とか無いからねぇ……」
 愛原「ホテルじゃないからな。まあとにかく、せっかく温泉旅館に泊まってるんだ。もう1回入ってから寝るとするか」
 高橋「うっス」

[10月30日07時00分 天候:雨 同旅館5階・客室]

 愛原「うーん……うーん……」
 リサ「先生……
 高橋「先生……
 愛原「だっはぁーっ!」

 私は地獄に堕ちる夢を見た。
 そこでは鬼のリサや、鬼化した高橋に追い回された。
 こういうの、衆合地獄って言うんだっけ?
 渋谷の若者のファッションをした鬼達に責められる地獄って。

 愛原「くぉらーっ!」

 私は両側から抱き着くリサと高橋にゲンコツを食らわせた。
 と、同時に枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす。

 高橋「おはざーっス!」
 愛原「おはざーっスじゃねぇ!男に抱き着かれて、いいわけねーだろ!」
 リサ「わたしはいいよね?」
 愛原「ラムちゃんみたいな鬼に抱き着かれて、電撃食らわされる夢を見たんだが?」
 リサ「まーっ!?」
 愛原「ったく、もう!ほら、さっさと起きるぞ!」
 高橋「へーい!」
 リサ「へーい!」

 リサと高橋は私の布団から出た。
 リサも浴衣を着ているが、それがはだけて、下の黒いスポプラや黒いショーツが見えてしまっている。
 寝る時は乳首が擦れて痛むというので、スポプラを着けているという。

 愛原「まあ、おかげで寝坊はしないがな」
 高橋「俺のおかげっスか!?」
 リサ「わたしのおかげだよね!?」
 愛原「枕が変わると、抵抗なく起きられるというからな。それだろ」
 高橋「えーっ?」
 リサ「えーっ?」

 私は洗面道具を手にすると、洗面台に向かった。
 客室にはトイレと洗面台が付いているが、浴室は無い。

 リサ「わたし、トイレ」

 リサはトイレに向かい、高橋は窓際の椅子に座って、一服を始めた。

[同日08時00分 天候:雨 同旅館1階・宴会場]

 顔を洗った後は、朝食を食べに向かった。
 会場は夕食会場と同じ、1階の宴会場だったが、襖で仕切られて、まるで個室のように利用できる。
 旅館では珍しく、朝食でも鍋が付いていた。
 これは味噌汁だという。
 これまた具材には、キノコが使われていた。
 あとは鮎の甘露煮とか。

 愛原「今気づいたんだが、外、雨降ってるんだな」
 高橋「そうっスね。昨夜はいい天気だったのに……」
 愛原「まあ、福島じゃ、結構通り雨とか降るらしいからな。昔、福島競馬場に行った時、そこの常連のオッチャンに言われたよ。『弁当忘れても、傘忘れんな』って」
 高橋「なるほど。そういうもんスか」
 リサ「TKG!TKG!」
 愛原「ん?これ、温泉タマゴじゃね?……ああ、そうか」

 卵かけごはんって、私は生卵を掛けて食べるものだと思っていたが、よくよく考えてみたら、別に半熟卵でもいいんだな。

 高橋「先生?」
 愛原「いや、何でもない」
 高橋「それで、チェックアウトとかはどうします?」
 愛原「10時に道の駅で待ち合わせだろ。ここから道の駅って、結構近いよな?」
 高橋「まあ、車で5分くらいってとこっスね」
 愛原「それなら5分前行動ということで、ここを9時50分に出よう」
 高橋「了解っス。まだゆっくりできますね」
 愛原「うん」
 高橋「朝風呂は入らないんスか?」
 愛原「もうここの風呂は2回入って、お腹一杯だからね。それに、時間が許せば、道の駅の温泉にも入ってみたいし」
 高橋「ああ!あの、何とか289って所の……」
 愛原「そう!それ!」
 高橋「分かりました。そこに行ってみましょう」

 来た道を戻るのなら、また立ち寄ることになりそうだから、ついでに入るといいだろう。
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