たにしのアブク 風綴り

87歳になります。独り徘徊で5☆7☆5を呟く。

藤沢周平作品「秘太刀馬の骨」を読んだ

2019-01-07 09:31:11 | 本・読書

大活字本で読む時代小説シリーズ、
「隠し剣孤影抄」<上下>に続いて、
藤沢周平作品「秘太刀馬の骨」です。

大派閥の頭領にのし上った小出帯刀は敵も多く、
後ろ暗いことにも手を染めている。

かつて栄華を誇った大派閥の領袖、
望月四郎右衛門隆安が路上で暗殺された。
その暗殺剣が「馬の骨」という秘太刀ではなかったかという。

望月家老の二の舞を恐れる帯刀は江戸から、
甥御で神道無念流免許取りの石橋銀次郎を呼び寄せ、
「馬の骨」の遣い手探査に乗り出す。

その探査の案内人として、
近習頭取に取りたてた浅沼半十郎に命じる。



秘太刀「馬の骨」は不伝流の矢野道場に密かに伝わると噂されている。
門弟のうち一人のみ伝授されているとのという。
編み出し祖父矢野仁八郎、受け継いだ父には、
5人の高弟が居て現存している。

内藤半左衛門58歳、いまなお普請組の外勤を務める。
沖山茂兵衛50歳がらみ、大納戸を束ねている。
北爪兵九郎30歳半ば、御番頭という重職にある。
長坂権平、痩せた兵員方の役人。
飯塚孫之丞28歳、近習組。
矢野家当主の藤蔵、家僕の兼子庄六か。
庭先に稽古場道場を持つ。

銀次郎は半次郎を仲介にして一人ずつ試合を挑み、
「馬の骨」を見極める策をめぐらす。
果たして秘太刀「馬の骨」を受け継いだのは誰か?

それに半十郎には杉江という、
潔癖過ぎて馴染めない小太刀遣いの妻が居る。
銀次郎に振り回される夫を冷たく見守っていたが……



銀次郎は試合で自ら傷つきながら結局、
「馬の骨」を突き止めることはできなかった。
御側御用人の石渡新三郎が帰国し、藩主の国入りも迫っていた。

帯刀は護身役に一人の剣客を傍に置くようになった。
ある夜、帯刀は護身役を伴って、
かつての不正の顛末を知る、
米問屋の元番頭の住む家を訪れようとしていた。

家から黒い人影が走り出た。
庭先から悲鳴が上がり、
護身役が影を追って走り去った。

庭には帯刀が、影を追った護身役が、橋の脇で、
首が骨まで絶たれていた。
現場に来た半十郎、孫之丞らは、一目でわかった。
これが「馬の骨」だ。

果たして遣い手は誰だったのか。
秘剣ミステリーの謎解きは読み手に預けられた。

「秘太刀馬の骨」はオール讀物に、
90年12月号から92年10月号まで断続敵に連載された。
書籍化にあたって一部終章が書き加えられている。