写真は昆明の街角で子守りをする女性。ジーンズにサンダル履きの人が多く、このような女性たちを、よく見かけた。
平日の公園に行くと、子供を連れた若い女性が集っている。彼女たちは陽気にアイスキャンディーを食べながら、おしゃべりに夢中。子供がもよおすと、トランポリンの網の隙間などでも平気でさせたりして、ぎょっとすることもあった。その人たちのマナーに、昆明はどうなっているのじゃ、と頭を抱えたものだが、よくよく話を聞くと、子育てママではなく、子守りに雇われた出稼ぎの女性たちだった。
日本円で月6000円も出せば、住み込みで子供の面倒を見てくれるとあって、共働きの家では、わりと気軽に子守りを雇う。
【女の子も売られる】
誘拐事件では昆明市が全国的にも突出しているが、省全体の人数も相当なものだ。2000年から2005年までにわかっているだけで、若い女性と子供をターゲットにした未解決の誘拐事件が2646件起きているというのだから。
さらに、捕らえた容疑者は6169名、壊滅させた誘拐団は648、救出した女性と児童は4795名に達するとのことだ(雲南省公安機関の調べ。女性の事件は後で述べる。)
他省でも誘拐事件による人身売買は頻発しているが、その意味合いは地域によって異なっている。
1998年から2005年まで広西省、安徽省、河南省で誘拐、または現地の医局員、農村助産婦より買いとった女の嬰児200余名が、河北省、山東省、河南省にある南楽、清豊、内黄、湯陰などの地に売られていた。60数名からなる誘拐団が摘発されて、明るみとなったのである。
この事件では雲南のケースとは違って女の子が主に売られている。また売り手も買い手も、どちらかといえば貧しく、外部の街から閉ざされた寒村である。
事情通の中国の人にこの辺りの状況を聞いてみた。彼は
「まず広西省などの少数民族地区では一人っ子政策がゆるいので、計画外に生まれた子も少なくありません。その子供らを経済面で多少なりとも裕福な地域に売ることがあるのではないでしょうか」と推測する。
中国の、とくに農村部では老後の保険制度が未整備なので、人々の老後の不安は計り知れない。だから男女平等思想が根づいたところでは、女の子も老後の頼りとされているのだという。つまり売られた女の子は将来の介護の担い手であり、経済を担う働き手として期待されているのだ。
あと、もう一つ理由がある。将来の「嫁」だ。中国では清朝以前はとくに嫁取りにはお金がかかった。だから貧しい農村では、なかなか嫁がもてない。そこで昔から、より貧しい家などの女の子を予め家に置いて、将来の息子の嫁として確保する「童養媳(トンヤンシー)」と呼ばれる習慣があった。
もちろん、嫁とするまでの幼少時も無駄飯を食わせるものかと、牛馬のようにこき使う。このような時代錯誤の慣習が根強く人々の意識に染みついている地域もまだまだあるのである。
(次回は幼い子供ではなく、嫁となる女性を誘拐する事件の話です。お付き合いください。また、こんな話が聞きたいな、というリクエストがありましたら、お寄せください。)
平日の公園に行くと、子供を連れた若い女性が集っている。彼女たちは陽気にアイスキャンディーを食べながら、おしゃべりに夢中。子供がもよおすと、トランポリンの網の隙間などでも平気でさせたりして、ぎょっとすることもあった。その人たちのマナーに、昆明はどうなっているのじゃ、と頭を抱えたものだが、よくよく話を聞くと、子育てママではなく、子守りに雇われた出稼ぎの女性たちだった。
日本円で月6000円も出せば、住み込みで子供の面倒を見てくれるとあって、共働きの家では、わりと気軽に子守りを雇う。
【女の子も売られる】
誘拐事件では昆明市が全国的にも突出しているが、省全体の人数も相当なものだ。2000年から2005年までにわかっているだけで、若い女性と子供をターゲットにした未解決の誘拐事件が2646件起きているというのだから。
さらに、捕らえた容疑者は6169名、壊滅させた誘拐団は648、救出した女性と児童は4795名に達するとのことだ(雲南省公安機関の調べ。女性の事件は後で述べる。)
他省でも誘拐事件による人身売買は頻発しているが、その意味合いは地域によって異なっている。
1998年から2005年まで広西省、安徽省、河南省で誘拐、または現地の医局員、農村助産婦より買いとった女の嬰児200余名が、河北省、山東省、河南省にある南楽、清豊、内黄、湯陰などの地に売られていた。60数名からなる誘拐団が摘発されて、明るみとなったのである。
この事件では雲南のケースとは違って女の子が主に売られている。また売り手も買い手も、どちらかといえば貧しく、外部の街から閉ざされた寒村である。
事情通の中国の人にこの辺りの状況を聞いてみた。彼は
「まず広西省などの少数民族地区では一人っ子政策がゆるいので、計画外に生まれた子も少なくありません。その子供らを経済面で多少なりとも裕福な地域に売ることがあるのではないでしょうか」と推測する。
中国の、とくに農村部では老後の保険制度が未整備なので、人々の老後の不安は計り知れない。だから男女平等思想が根づいたところでは、女の子も老後の頼りとされているのだという。つまり売られた女の子は将来の介護の担い手であり、経済を担う働き手として期待されているのだ。
あと、もう一つ理由がある。将来の「嫁」だ。中国では清朝以前はとくに嫁取りにはお金がかかった。だから貧しい農村では、なかなか嫁がもてない。そこで昔から、より貧しい家などの女の子を予め家に置いて、将来の息子の嫁として確保する「童養媳(トンヤンシー)」と呼ばれる習慣があった。
もちろん、嫁とするまでの幼少時も無駄飯を食わせるものかと、牛馬のようにこき使う。このような時代錯誤の慣習が根強く人々の意識に染みついている地域もまだまだあるのである。
(次回は幼い子供ではなく、嫁となる女性を誘拐する事件の話です。お付き合いください。また、こんな話が聞きたいな、というリクエストがありましたら、お寄せください。)