写真はシャングリラ周辺の山々にひっそりと咲くサクラソウの一つ。水辺に群落している。
【春を報(しら)せる花】
江戸時代に旗本らの間で熱狂的に愛され、品種改良も進んだ日本サクラソウ。現在、関東各地でその展示会が催され、園芸家の庭々でも可憐な花を咲かせていますが、そのサクラソウの原産地といわれているのが雲南省北西部です。
昆明の春は二月、満開の八重桜で始まりますが、世界遺産・麗江を臨む玉龍雪山や白族の都・大理の名峰である蒼山連峰、またチベット族の多く暮らす白馬雪山など標高4000メートル級の山々の春は6月。一斉に高山植物が可憐な花を咲かせ、お花畑となります。そこで「報春花」つまり春告げ花と呼ばれているのがサクラソウです。雲南の八大名花の一つに数えられています。
野生のサクラソウが湿地帯の片隅で濃い霧に巻かれながら、濃緑の葉の頭上で、深紅の花を鈴のように咲かせる様子はひかえめで可憐な少女のようでした。この花が咲くころ、山々では伝統的な春まつりや競馬まつりが開かれるのです。
ただし、その土地に住む園芸家ならともかく、一般の人、とくに若者に花の名を聞いても、ムダでした。彼らにとって野に咲く花はすべて「花」という名前だったのです。
ちなみに誰が名付けたのか雲南の八大名花というものがあります。
椿[茶花]、白木蓮[玉蘭]、つつじ[杜鵑]、サクラソウ[報春花]、百合、蘭[蘭花]、青いケシ[緑絨蒿]、リンドウ[竜胆]。
上記は雲南に野生のまま存在しているので、自然のなかで見つけたときには本当に感動しました。これらは雲南各地の園芸家にもたいそう大切に育てられ、つつじや椿は昆明なら金殿などの庭園で、蘭なら家族のものに疎まれながらも、家全体を温室状態にして育てている人に少なからず出会いました。ですがサクラソウ園芸家には雲南では今のところ、出会ったことはありません。
実は私の父は熱狂的なサクラソウ愛好家です。そのため、昆明を訪れた父とともにサクラソウ探しに奔走したことがありました。
「 報春花を見たことありますか?」と聞き回ったところ、一般の人が指し示す先に咲くのは、サクラソウとは似ても似つかぬ「ヒメソケイ」。ロウバイのような花で春の日差しが感じられだす3、4月、黄色の花を樹上で咲かせます。昆明植物研究所のコンピュータの中でようやく学名として「報春花=サクラソウ」を見つけたのですが、それほど昆明ではなじみのない花でした。
ちなみに父の調べによると北京での「報春花」はロウバイ。考えてみれば春を告げる花が各地で異なるのは当然といえば当然なのかもしれません。
【春を報(しら)せる花】
江戸時代に旗本らの間で熱狂的に愛され、品種改良も進んだ日本サクラソウ。現在、関東各地でその展示会が催され、園芸家の庭々でも可憐な花を咲かせていますが、そのサクラソウの原産地といわれているのが雲南省北西部です。
昆明の春は二月、満開の八重桜で始まりますが、世界遺産・麗江を臨む玉龍雪山や白族の都・大理の名峰である蒼山連峰、またチベット族の多く暮らす白馬雪山など標高4000メートル級の山々の春は6月。一斉に高山植物が可憐な花を咲かせ、お花畑となります。そこで「報春花」つまり春告げ花と呼ばれているのがサクラソウです。雲南の八大名花の一つに数えられています。
野生のサクラソウが湿地帯の片隅で濃い霧に巻かれながら、濃緑の葉の頭上で、深紅の花を鈴のように咲かせる様子はひかえめで可憐な少女のようでした。この花が咲くころ、山々では伝統的な春まつりや競馬まつりが開かれるのです。
ただし、その土地に住む園芸家ならともかく、一般の人、とくに若者に花の名を聞いても、ムダでした。彼らにとって野に咲く花はすべて「花」という名前だったのです。
ちなみに誰が名付けたのか雲南の八大名花というものがあります。
椿[茶花]、白木蓮[玉蘭]、つつじ[杜鵑]、サクラソウ[報春花]、百合、蘭[蘭花]、青いケシ[緑絨蒿]、リンドウ[竜胆]。
上記は雲南に野生のまま存在しているので、自然のなかで見つけたときには本当に感動しました。これらは雲南各地の園芸家にもたいそう大切に育てられ、つつじや椿は昆明なら金殿などの庭園で、蘭なら家族のものに疎まれながらも、家全体を温室状態にして育てている人に少なからず出会いました。ですがサクラソウ園芸家には雲南では今のところ、出会ったことはありません。
実は私の父は熱狂的なサクラソウ愛好家です。そのため、昆明を訪れた父とともにサクラソウ探しに奔走したことがありました。
「 報春花を見たことありますか?」と聞き回ったところ、一般の人が指し示す先に咲くのは、サクラソウとは似ても似つかぬ「ヒメソケイ」。ロウバイのような花で春の日差しが感じられだす3、4月、黄色の花を樹上で咲かせます。昆明植物研究所のコンピュータの中でようやく学名として「報春花=サクラソウ」を見つけたのですが、それほど昆明ではなじみのない花でした。
ちなみに父の調べによると北京での「報春花」はロウバイ。考えてみれば春を告げる花が各地で異なるのは当然といえば当然なのかもしれません。