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写真は香港・鹿鳴春の北京ダックを切り分けるシェフ。バックの人の動きが速すぎて、写真に撮ると、みな、お化けのように残像化されてしまう。
今回は長いので、目が疲れない程度にお読みください。
【さすらいの鹿鳴春】
北京では「北京ダック」、天津では自称「天津ダック」、雲南では宜良の「北京ダック」を味わっていたので、やはりここは、香港でも、と香港の北京ダックの店「鹿鳴春」に向かいました。
場所は、あくまで目抜き通り(の終わりの方)にあるのですが、やはり予想通り、どこから入ったらいいのか分からない、ごちゃごちゃとした雑貨屋さんの狭い階段を登った2階でした。
あまり中国に行ったことのない、母も同行したのですが「こんなところにお店があるの?」といぶかること、いぶかること。
(中国の、とくに地方にいくと、地元の名士のアテンドによる、おいしいお店というのは、一見さんでは、絶対見抜けないような、納屋を通った先、などといった不思議な場所にあります。まさに隠れた名店。というか隠れてなければ、名店とはいわない、といわんばかり。かの小平が上海に行くと通っていたという中国式マッサージにひょんなビジネスのつながりで行った知人も「どの場所にあったか、一度、行っただけでは、わからん」と行っていました。税法の関係などでもあるのでしょうか。謎です。)
さて、店に入ろうとすると、入り口のウェイターに「予約は?」と聞かれ、していないと答えると、大げさに首を下に向けて、横に何度も振り、ため息までつかれる始末。
妙におおげさです。
さて、日本ではここで断られて終わるのですが、粘るとたいてい道が開けるのが中国。しばらく様子を見ていると、
「1時間で食べ終われるか?」と聞かれ、うなずくと、予約席の札を外して、すばやく円卓が用意されました。
店員4人がかりで流れるようなスピードで、メニューが用意され、こちらもとにかく急がなくては、と、ビールと茶、それに「北京ダックコース」一人あたりにすると1000円弱のものを注文しました。
その次の瞬間にはコップにはビールが、茶碗にはジャスミンティーがなみなみと注がれてゆきます。ともかく数人のウェイターがぎっしりつまった円卓の間を縫うように、踊るような足取りで回遊しては、飲み干すと、すばやく次を注ぐ、という調子でまったく落ち着くことができません。ベテラン店員に囲まれるというのも、ものすごい威圧感です。雰囲気だけで手のひらが汗ばむような緊張感におそわれます。
【自由すぎる!】
さて、落ち着く暇もなく、すごいスピードで取り皿が並び、おつまみ(キャベツの甘酢漬け、ピーナツの塩まぶし・くせになるほどのおいしさ)、フカヒレスープ、くらげ、ハムなどの冷菜、青菜のニンニク炒め、エビチリなどが次々と現れました。
いずれも最高の「塩梅」で、スルスルとお腹におさまっていく、なんというか天にものぼるようなフルコース。日本を思って後ろめたい気持ちが払拭しきれないまま、食べていたのですが、やがて何かが弾けるように食に没頭してしまいました。それほど味に力があったのです。
やがて、こちらの食のスピードが勝ったのか、メインの北京ダックまでに、ようやくあたりを伺う余裕ができました。
複雑に入り組みつつも小学校の40人教室2部屋ほどの広さに5人のウェイター。すべて白黒のタキシード姿なのですが、なぜ香港で料理屋を舞台にした喜劇映画が量産されていたのかが、よーく理解できました。
ある人は、厨房に入っては、すました顔で出てきて、口だけモグモグとさせていたり、
ある人はせわしげにビートたけしさんのように首を痙攣させながら、自分も茶を淹れつつも、若手に茶を入れるように指示していたり、
目は上下に宙を浮いたようで頭がパンチパーマの人などは、広東語でいろいろしゃべっては、時折、つい歌まで。
皆、常に何かをせずにはいられない。そしてあまりに一生懸命で自由すぎる! だから仕事を遂行しようとただならぬ情熱を発しつつも、なぜかそこはかとなくコミカルになってしまうのでした。
最後の北京ダックまで、絶品路線を堪能し続けましたが、個人的には笑いのツボにはまってしまい、押し隠してはいたものの、お腹が吊るような思いでした。
香港から中国本土へ資本は移っているとも聞きますが、老舗の名店、かくあるべし、との思いを強く持ちました。 (脱線・おわり)
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