写真の奥に見えるのは大西洋と地中海。強風が吹いていて、海も荒れているが、ラクダは、どっしりと構えていて強風にもびくともしなかった。
【ラクダに乗って地中海と大西洋を一望する】
陽気なラシードさんと10人ほどの団体を載せて、すぐにミニバンは出発しました。私が日本人だとわかると、
「JTBの添乗もよくしていますよ」
とウインク。勘で選んだツアーで心配していたのですが、審査が厳しいと聞いているJTBのツアーもされていると聞き、すっかり気が楽になりました。
さてタンジェの港から車での移動中に見えるのは、抜けるような青空と風化した白い岩、アスファルト道路に豪邸らしき家の白い壁のみ。あんまりスペインと変わらないなあ、と思っていると、スパルテル岬に到着しました。
眼下に拡がるのは地中海と大西洋。強風が吹いていて、緑の海を走るように白濁した波が打ち付けています。厳しい海。
そういえばユーラシア大陸でもっとも大西洋にせり出したポルトガルのロタ岬も風が強かったなあ。
(大西洋に出るって、昔はすごくハードルが高かったんだろうなあ。)
ただ違うのは、ここにラクダがいることです。
さっそくツアーの人たちがラクダと記念撮影をはじめました。なるほど、モロッコらしい写真はこうやって作るのかと、私も、さっそく乗ってみました(一人2ユーロ)。ヒトコブラクダの背にモロッコ特有の布地が置かれていて、その上にまたがる。すると使役人の合図によってラクダは前後にゆらすように、おだやかに起き上がって直径5メートルほど歩いてくれます。
以前、タイでゾウに乗ったときは剛毛で指に刺さったものですが、ラクダの毛はやわらか。そして顔のやさしいこと。このお顔は頭数が多く、ほとんどの時間はもぐもぐエサを食べていて、たまーに客を乗せる仕事がくる、というホワイトな労働環境のたまものなのかもしれません。
【おみやげの初心】
次に行ったのがヘラクレスの洞窟でした。歩いてすぐです。
洞窟によって強風から守られているので、その入口付近は小さなお土産屋さんがいっぱい並んでいました。
客は我々だけ。この状況で同じツアーのアメリカからきたご家族が、薦められるままに買う買う! なにかにとりつかれてしまったみたいです。モロッコ風の帽子やおもちゃの刀、モロッコのロゴ入りTシャツ、なにかの棒・・・。浅草でもロゴを替えれば売っていそうなものばかり。しかも買うとすぐに身に付けて、うれしそうにはしゃいでいます。地元に経済効果をもたらす優良観光客って、こういうことかしら?
「もともと洞窟はあったのですが、小麦を粉にするための石の円盤を長い間、切り出していた採掘場になりました。ほら、ここに丸く切り出したうろこ状の跡があるでしょう」
と丸い形に削れたあとを指してラシードさんが丁寧に説明してくれました。
真面目に説明を聞いていても、洞窟からのぞく海も見ていても、視線は不思議なおみやげ物を身に付けてしあわせいっぱいの家族に吸い寄せられてしまう私。こういうおみやげものも必要なのだ、と、遠足で筑波山に行ったときの初心に還る思いでした。
そしてようや旧市街・メディナの城内につきました。これぞモロッコといった趣で小さな石畳のくねくね道を一人きままに歩いたら、あっという間に迷子になりそう。
(つづく)