写真はファドハウスの天井部分。ファドの伴奏に使われてる楽器。左の琵琶のような形をしたものがギターラと呼ばれるポルトガルギター、中央がヴィオラという名のクラシカルギター。二つの音色がファドの歌を時に陽気に、時に物悲しく響かせる。
【ファド・二人目】
10時近くになると、あの重たそうな木のドアを開けて、食事なしで予約した人も入ってきました(食事なしでもいいんだ!)今、思い出すと歌手たちの立つ舞台の後ろが入場門という理不尽さなのですが、歌に集中していて、その時はその空間の使い方に疑問を感じることすらなかったのです。
さらに夜が更けると地元の人が続々と入ってきました。どうやら本番は11時を回ってからのようです。
男性歌手の歌が終わると、次に若くて髪の長い女性がレストランの奥から入口に出てきました。黒い、ウエストを強調するような薄手のドレスがとても似合っています。曲名を告げ、短い挨拶を済ますと、目をつぶって歌いだしました。
ビロードの声。額と鼻の前に響かせる謡い方。悲し気で情緒的な歌でもメロディーを紡ぐように丁寧に歌い上げ、感情に流されない誠実さ。音量はさきほどの男性のほうが上なのですが、この女性の歌声から丘の上の風に吹かれているような風圧を感じ、圧倒されました。
深夜0時を過ぎて、さらに入っている地元の人たち。ますます熱気を帯びる歌と演奏。これからさらに、という状況は明らかだったのですが、未成年の娘も連れていて、さすがに私も眠さが勝ってきたので、後ろ髪を引かれつつ、店を後にしました。
素晴らしい夜でした。お誘いくださったMさん、ありがとう。
(ファドハウスの回おわり。次回はリスボンの市場です。)
https://www.tripadvisor.com/Restaurant_Review-g189158-d1950252-Reviews-Mesa_De_Frades-Lisbon_Lisbon_District_Central_Portugal.html
写真は夜霧にぬれたアルファマ地区の路上の敷石。