BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2008」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量及び石油価格のデータを抜粋して解説したものである。
石油篇(5):原油価格
(1)1970年以降の原油価格の推移
(上図参照:拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-97-Crude-Oil-Price,19.gif)
原油の価格水準は1970年代の2度のオイル・ショックで大きく変化した(上図青の実線)。まず1973年の第一次オイル・ショックではそれまでの2ドル前後(バレル当たり、以下同じ)から10ドル強と5倍以上値上がりし、さらに1979年の第二次オイル・ショックでは40ドル近くまで暴騰した(上図の青の実線、なお1970~83年はアラビアン・ライト、84年以降はブレント原油価格)。
第一次オイル・ショックは第4次中東戦争に際し、OAPEC(アラブ石油輸出国機構)が米国及びイスラエル支持国に対する石油供給削減を決定したことに端を発したものであり、これによって原油価格の決定権は欧米の国際石油会社(いわゆるメジャー)からOPEC(石油輸出国機構)の手に移った。
そして第二次オイル・ショックでは1979年のイラン革命及び翌年のイラン・イラク戦争勃発により石油の供給が大きく減少したため価格が急騰した。この時はOPEC最大の産油国であるサウジアラビアが率先して自国の代表油種アラビアン・ライト(A/L)の価格を矢継ぎ早やに引き上げ、他のOPEC加盟国がこれに追随した。こうして1980年末のOPEC総会では基準価格36ドル、上限価格41ドルにまで引き上げられる事態となった。この結果、1980年の年間平均価格はWTI(West Texas Intermediate, ニューヨーク市場)が37.96ドルに達し、Brent(ロンドン市場)36.83ドル、ドバイ原油35.69ドルになったのである。
しかし石油の消費量は1979年をピークとしてその後長期にわたり低迷し、価格も1980年代後半には20ドルを切る水準に下落した。そして1998年には10ドル台前半まで暴落したためOPECは大幅な減産を強いられた。原油価格が20ドル台を回復するのは2000年に入ってからである。
ところが2003年以降、価格は急騰し、翌年には第二次オイル・ショック時の価格を突破、その後も毎年大幅に上昇して、2007年の年間平均価格(ブレント原油)は72.39ドルに達した。5年前の2003年(28.83ドル)に対して2.5倍に上昇している。
(2)現在価格との比較
原油価格(ブレント年間平均)は1980年の第二次オイル・ショック直後に36.83ドルを記録し、その後2004年にはその水準を超え、2007年には72.39ドルに達しているが、7月には史上最高を記録している(上図青の実線)が、現在のインフレ係数を考慮して過去の価格を現在価格に換算したものが赤の破線である。
この実質価格で見た場合、1980年の原油価格36.83ドルは2007年価格では93.08ドルと換算され史上最高とは言えない。そして値上がりの倍率も第一次オイル・ショック前(1970年で現在換算約10ドル)とオイル・ショック時(1980年で同90ドル)との約10年間に9倍も高騰しているのに比べ、今回の2003年以降5年間の価格上昇は2倍強にとどまっている。
(以上で石油篇を終わります。次回からは天然ガス篇です。)
(これまでの内容)
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