石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2008年版解説シリーズ:天然ガス篇(1)

2008-08-21 | 今週のエネルギー関連新聞発表

BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2008」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

天然ガス篇(1):世界の天然ガスの埋蔵量

1.2007年末の確認埋蔵量

 2007年末の世界の天然ガスの確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は177兆立方メートル(以下tcm: trillion cubic meter)であり、可採年数(R/P)は60.3年である。可採年数とは埋蔵量を同年の生産量で割った数値であるが、これは現在の生産水準をあと何年続けられるかを示している。

  埋蔵量を地域別に見ると上図のごとく中東地域が全世界の埋蔵量の42%を占めている(拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-92a-Gas-reserve-by-re.gif参照)。これに次ぐのが欧州・ユーラシアの34%であり、この2地域だけで世界の埋蔵量の76%を占めており、その他のアジア、アフリカ、南北アメリカなどはすべて合わせても全体の4分の1弱にとどまっている。このように世界の天然ガスの埋蔵量は一部地域に偏在していると言える。

  次に国別に見ると、世界で最も石油埋蔵量が多いのはロシアの45tcm、世界全体の25%を占めている。第二位はイラン(28tcm、16%)、第三位カタル(26tcm、14%)であり、これら3カ国だけで世界の埋蔵量の55%に達する。4位以下、10位まではサウジアラビア(世界シェア4%)、UAE、米国(各3.4%)、ナイジェリア(3.0%)、ベネズエラ(2.9%)、アルジェリア(2.5%)、イラク(1.8%)と続いており、上位10カ国の世界シェア合計は76%である。つまり世界の天然ガスの埋蔵量の6割弱が3カ国で占められ、また4分の3が10カ国に集中しているのである。(詳細は「2007年国別天然ガス埋蔵量(上位20カ国)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-92a-Gas-reserve-by-co.gif参照)

2.1980~2007年の埋蔵量及び可採年数の推移

(詳細は「天然ガスの埋蔵量と可採年数(1980~2007年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-93a-Gas-reserve-RP,-1.gif参照)

 1980年末の世界の埋蔵量は83tcmであったが、2007年末のそれは177tcmである。この間に埋蔵量は2倍強に増加しているが、それは1989年と2001年の2回にわたる大幅な増加を挟みほぼ3期に分けることができる。即ち1980年代は年率4%の割合で伸び、1988年末の埋蔵量は111tcmに達した(第1成長期)。そして1989年には対前年比12%と大幅に増加し、1991年末の埋蔵量は134tcmとなった。その後1990年代は年間成長率がやや鈍り平均2%となり、1999年末の埋蔵量は153tcmであった(第2成長期)。2001年は前年比8.3%拡大して2001年末の埋蔵量は172tcmに達したが、2002年以降は年間成長率は1%以下に停滞している(第3期:停滞期)。

  1980年から2007年までの地域別の埋蔵量の推移と構成比率を見ると下記のようになる。

                   1980   1990   2000   2007  倍率(07/80)   %(1980)   %(2007)

全世界              83     128     159     177        2.1           100%      100%

中東                  25       38       59      73        3.0            30%        41%

欧州・ユーラシア  35       57      60       59         1.7           42%         33%

アジア・大洋州      4       10      12       14          3.2            5%           8%

アフリカ               6         9      12       15         2.4            7%           8%

北米                 10        10        8         8        0.8           12%           4%

中南米                3         5        7         8        2.9             3%           4%

  上に述べたとおり1980年から2007年までの世界全体の埋蔵量は2期にわたる成長カーブを経て、現在は停滞状態にある。世界全体では1980年(83tcm)から2007年(177tcm)の間に埋蔵量は倍増しているが、地域別に見るとアジア・大洋州、中東及び中南米の3地域の成長が著しく、これらの地域では3倍前後に増加している。中東地域が全世界に占める割合は1980年の30%から2007年には41%となっている。これに対して欧州・ユーラシア地域の伸び率は1.7倍と世界平均を下回っており、この結果同地域の世界全体に占める割合も42%から33%に低下、現在では中東が欧州・ユーラシア地域を凌ぐ最大の天然ガス埋蔵地域となっている。

  一方、北米地域の埋蔵量は一貫して減少している。北米以外のいずれの地域も例外なく埋蔵量が増加しているのに比べると極めて対照的である。そして同地域の世界に占める割合も1980年末の12%から2007年末には4%に激減しているのである。

 (天然ガス篇第1回完)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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