*HP「中東と石油」に本シリーズ(1)埋蔵量~(6)貿易(その3)が一括掲載されていますのでご覧ください。
BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2009」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
天然ガス篇(4):世界の天然ガス貿易
(その1):パイプラインによる輸出入
パイプラインによる天然ガス貿易の歴史は古く、現在はユーラシア大陸(ロシア~ヨーロッパ諸国)及びアメリカ大陸(カナダ~米国)を中心に世界各地で広く行なわれている。 2008年の貿易量は世界全体で5,873億立方メートル(以下㎥)であり、輸出国は20カ国以上、輸入国は30カ国以上に達する。なお米国とカナダのように互いに相手国に輸出または輸入を行なっているケースもある。
2008年の最大の天然ガス輸出国はロシアであり、その量は1,544億㎥、パイプラインによる全世界の輸出量の26%に達している。第2位はカナダの1,032㎥、第3位はノルウェーの928㎥であった。これら上位3カ国の輸出量が全世界に占める割合は6割である。4位以下はオランダ550億㎥、アルジェリア375億㎥、米国262億㎥となっており、続く10位までの輸出国を列挙すると、カタール171億㎥、ドイル151億㎥、ボリビア112億㎥、英国105億㎥である。大半の国は欧州・ユーラシアもしくは北米であり、それ以外の地域の国はアルジェリア(アフリカ)、カタール(中東)及びボリビア(南米)の3カ国である。このうちアルジェリアは地中海海底パイプラインによってイタリア、スペインなどに輸出しており、カタール及びボリビアは近隣国に天然ガスを送っている。カタールは世界最大のLNG輸出国であるが(後述)、「ドルフィン・プロジェクト」によりUAE及びオマーンへのパイプラインによる輸出も手がけている。(詳細は「天然ガス輸出上位20カ国(パイプライン、2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-96aGasExportIn2008(Pipeline).htm参照)
一方パイプラインによる天然ガスの輸入状況を見ると、最大の輸入国は米国であり、2008年には1,044㎥を輸入している。第2位はドイツ(871㎥)、第3位イタリア(753㎥)、第4位フランス(367億㎥)、第5位英国(354億㎥)と続いている。上位5カ国で全世界の輸入量の58%を占めている。6位以下にはトルコ、ベルギー、オランダ、カナダ、UAEと続いている。(詳細は「天然ガス輸入上位20カ国(パイプライン、2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-97aGasImportIn2008(Pipeline).htm参照)
既に述べたとおりパイプラインで結ばれた天然ガス貿易では、近隣国が相互に融通するため、輸出国が同時に輸入国となる場合がある。そのため輸入量と輸出量を相殺したNetで見ると、米国、ドイツ、英国及びベルギーの純輸入量は、それぞれ782億㎥、720億㎥、249億㎥、157億㎥となる。この結果、純輸入量で比べるとイタリアがドイツを上回り、米国に次いで世界第2位の輸入国となる。また輸出面ではカナダのNet輸出量は873億㎥、オランダは370億㎥となり、ノルウェーとカナダおよびオランダとアルジェリアの順位がそれぞれ逆転することになる。
(天然ガス篇第4回完)
(これまでの内容) 天然ガス篇(3):世界の天然ガスの消費量
天然ガス篇(2):世界の天然ガスの生産量天然ガス篇
(1):世界の天然ガスの埋蔵量
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