HP「中東と石油」に(1)~(3)が一括掲載されています。
BPの「BP Statistical Report of World Energy 2009」をもとに本シリーズではこれまで石油及び天然ガスの埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したが、最後に石油と天然ガスを合わせた形でその埋蔵量、生産量及び消費量についての解説を試みる。なお天然ガスから石油への換算率は10億立方メートル=629万バレル(1兆立方メートル=62.9億バレル)である。
石油+天然ガス篇(2):世界の石油と天然ガスの生産量
1. 2008年の石油と天然ガスの地域別合計生産量
2008年の世界の石油生産量は日量8,182万バレル(以下B/D)であり、これに対して天然ガスの生産量は年間3兆656億立方メートル(以下㎥)であった。天然ガスの生産量を石油に換算すると5,283万B/Dとなり、従って石油と天然ガスを合わせた1日当りの生産量は1億3,465万B/Dとなる。両者の比率は石油61%、天然ガス39%でほぼ3:2の割合である。
生産量を地域別に見ると(上図参照、拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-1-91Oil+GasProductionBy.gif)、欧州・ユーラシア地域が3,633万B/Dと最も多く、中東がこれに次ぐ3,277万B/Dである。但し両地域を比較すると、欧州・ユーラシアは石油の生産量が1,759万B/Dに対して天然ガスの生産量は1兆873億㎥(石油換算:1,874万B/D)であり、天然ガスが石油を上回っている。一方、中東は石油2,620万B/D、天然ガス3,811億㎥(石油換算:657万B/D)と、石油の生産量が圧倒的に多い。
欧州・ユーラシア、中東に続いて生産量の多いのは北米である。北米は石油と天然ガスの比率がほぼ同じであり(石油生産量1,313万B/D、石油換算の天然ガス生産量1,400万B/D)、石油換算で合計2,713万B/Dに達している。
残るアジア・大洋州、アフリカ及び中南米の3地域の生産量はいずれも上記3地域の半分以下である。このうちアジア・大洋州は石油と天然ガスの比率はほぼおなじであるが、アフリカと中南米は中東と同じく石油生産が大半を占めており、天然ガスの割合が小さい。前回の埋蔵量で触れたとおり世界の石油と天然ガスの埋蔵量はほぼ等しく、石油埋蔵量は1兆2,580億バレル、天然ガスの埋蔵量は石油換算で1兆1,638億バレルである。このことから欧州・ユーラシア、北米及びアジア・大洋州では埋蔵量に見合った石油と天然ガスが生産されているのに対し、その他の3地域(中東、アフリカ及び中南米)では今後さらに天然ガスの生産に拍車がかかることが考えられる。
2. 国別生産量(上位20カ国)
生産量を国別に見ると(詳細は表「石油・天然ガスの合計生産量上位20カ国(2008)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-1-91Oil+GasProductionByCountries2008.htm参照)、世界で石油と天然ガスの合計生産量が最も多い国はロシアである。石油換算では2,025万B/Dで、同国だけで世界全体の15%を占めている。ロシアの場合、石油生産量はサウジアラビアに次いで世界第2位であるが、天然ガスの生産量がサウジアラビアの約8倍あるため、石油と天然ガスの合計生産量では世界一となっている。
ロシアに次ぐ世界第二位の生産量を誇るのは米国であり、同国は石油生産量が674万B/D(世界第3位)、天然ガス生産量が1,003万B/D(石油換算、世界2位)であり、石油よりも天然ガスの生産量が多い。なお埋蔵量と比較すると(前回参照)、ロシアは埋蔵量ベースでも世界一であるが、米国は9位である。このことからロシアは当面の生産余力がある一方、米国の場合は国内の石油・天然ガス資源が急速に枯渇に向かっていると言えよう。
3位はサウジアラビアの1,219万B/Dであり(石油1,085万B/D、天然ガス135万B/D:石油換算)、上位3カ国の生産量は石油換算で1千万B/Dを超えている。4位から10位までの生産国は、4位イラン(石油換算633万B/D、以下同じ)、5位カナダ(626万B/D)、6位中国(511万B/D)、7位ノルウェー(417万B/D)、8位メキシコ(410万B/D)、9位UAE(385万B/D)、10位アルジェリア(348万B/D)となっている。このうちアルジェリアは石油の生産量だけでは世界14位であるが、天然ガスが世界6位であるためベスト・テンに入っている。一方、メキシコ及びUAEは天然ガスの生産量は10位以下であるが、石油の生産量が多いため石油と天然ガスの合計生産量で上位10傑に入っている。
3.1970年~2008年の生産量の推移
1970年から2008年までの石油と天然ガスの合計生産量の推移を追ってみると(詳細は 図「石油+天然ガス生産量(1970-2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-1-94Oil+GasProduction19.gif参照)、1970年(第一次オイルショック前)の石油と天然ガスの合計生産量は65百万万B/D(石油換算、以下同じ)であり、生産量はその後1980年までは5年ごとに1,100万B/Dずつ増加し、1980年の合計生産量は88百万B/D(石油:63百万B/D、天然ガス:25百万B/D)に達している。5年毎の増加の内訳はほぼ石油が700万B/D、天然ガスが400万B/Dであった。第二次オイルショック(1979年)を契機に1980年代前半は石油の生産が減退し、1985年の石油生産量は57百万B/Dにとどまった。しかし天然ガスの生産は着実に増加し1985年には28百万B/D(石油換算)に増加、その結果合計生産量は86百万B/Dとなっている。その後は石油および天然ガスともに生産は増加し、1990年には合計生産量が1億B/Dに達した。
その後も石油と天然ガスの生産はともに一貫して増加し、2000年には1億16百万B/D(内訳:石油75百万B/D、天然ガス41百万B/D)、そして2008年には1億35百万B/D(内訳:石油82百万B/D、天然ガス53百万B/D)に達している。1970年と2008年の生産量の伸びを比較すると、合計生産量では2.1倍、石油と天然ガスのそれぞれの増加率は石油1.7倍、天然ガス3.1倍であり、天然ガスの生産が急速に伸びていることがわかる。これを比率で見ると1970年には石油と天然ガスの比率が石油74%、天然ガス26%であったものが、その後天然ガスの比率が徐々に拡大し、2008年には石油61%、天然ガス39%となっている。現在天然ガス田の開発が活発に行われている他、パイプライン及びLNGのサプライチェーンも急速に整備拡充されている。従って生産に占める天然ガスの比率は今後更に高まるものと思われる。
(石油+天然ガス篇第2回完)
(これまでの内容)
石油+天然ガス篇(1):世界の石油と天然ガスの埋蔵量
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前田 高行
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