*HP「中東と石油」に本シリーズ(1)埋蔵量~(6)貿易(その3)が一括掲載されていますのでご覧ください。
BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2009」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
天然ガス篇(5):世界の天然ガス貿易(その2):LNGによる輸出入
1964年、アルジェリアからフランス向けを皮切りに始まったLNG貿易は、近年輸出国、輸入国及び貿易量それぞれの面で急速に拡大している。2008年のLNG輸出国の数は15カ国、輸入国は18カ国に上り、それらの国々が取引したLNGの総量は2,265億立方米(以下㎥)に達した。(米国は輸出及び輸入の両方を行なっているため、LNG貿易に関与している国の数は32カ国である。)
まず輸出面で見ると、最大のLNG輸出国は中東のカタールであり、同国は昨年1年間で397億㎥を輸出、世界全体の輸出量の17.5%を占めている。これに続くのがマレーシアの294㎥(シェア13%)、第3位がインドネシアの269㎥(同11.9%)である。これら上位3カ国で世界のLNG輸出の42%を占める。4位以下はアルジェリア219億㎥、ナイジェリア205億㎥、オーストラリア202億㎥、トリニダード・トバゴ174億㎥、エジプト141億㎥、オマーン109億㎥となっており、以上の9カ国が年間輸出量100億㎥を超える国である。そのほかにLNGを輸出している国々はブルネイ、UAE、エクアトール・ギニア、ノルウェー、米国及びリビアがある。(「LNG輸出国(2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-96bGasExportIn2008(LNG).htm参照)
次にLNGの輸入を国別で見ると、最大の輸入国は日本である。日本の2008年の輸入量は921億㎥で世界全体の4割を占めている(上図参照)。第2位は韓国の366億㎥(シェア16.1%)、第3位はスペイン287億㎥(シェア12.7%)であり、これら3カ国だけで世界のLNG輸入の7割に達する。3カ国に続くのが、フランス(126億㎥)、台湾(121億㎥)、インド(108億㎥)であり、以上6カ国が年間輸入量100億㎥を超えている。このほかLNGを輸入している国は、米国、トルコ、中国、メキシコ、ポルトガル、ベルギー、イタリア、英国、ギリシャ、プエルトリコ、ドミニカ、アルゼンチンである。(「LNG輸入国(2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-97bGasImportIn2008(LNG).htm参照)
LNG貿易には輸出国におけるガス液化及び出荷設備の建設、LNG運搬船建造さらには輸入国におけるLNG受入設備および再ガス化設備の建設に巨額の投資が必要であるため、これまで普及のペースは遅かった。しかし天然ガスは石油や石炭に比べて環境負荷が低いとしてその評価が高まっており、また世界各国に出荷あるいは受入設備が次々と完成して、LNGのサプライ・チェーンが整備されつつある。LNG出荷設備の新設が輸入国の増加をもたらし、また受入設備の増強により、新たにLNG輸出に参入する国が生まれるなど、LNG貿易拡大の好循環が始まっている。これによってLNG貿易は今後安定的に拡大するものと思われる。さらに輸出入国の数が増えることにより、スポット市場も成長するため、今後国際的なLNG取引がますます盛んになることは間違いないであろう。
LNG貿易の拡大を1997年と2008年で比較すると、量的側面では1997年に1,113億㎥であった輸出入量は、2008年には2倍の2,265億㎥に増加している。また輸出国の数は1997年には9カ国であったものが、2008年には6カ国増加して15カ国に達している。1997年当時は国別輸出量ではインドネシアの357億㎥がもっとも多く、これに次ぐのがアルジェリア(243億㎥)、マレーシア(201億㎥)であり、この3カ国がLNGの三大輸出国であった。カタールはこの年に始めて日本向けの輸出を開始したばかりであり、オーストラリア、ブルネイ、UAEの輸出量はカタールを上回っていた。
ところが2008年になると、上述の通りカタールが世界最大のLNG輸出国となり、97年に首位であったインドネシアは、マレーシアに次ぐ第3位となっている。また輸出国が多様化したため、全輸出量に占める割合も97年のインドネシアが全体の3分の1を占めていたのに対して、08年首位のカタールのシェアは17.5%にとどまっている(「LNG輸出の比較:1997年 vs 2008年http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-91bLNGExport97vs08.gif参照)。
同様のことを輸入面で比較すると、1997年にLNGを最も多く輸入したのは日本の643億㎥であり、全世界(1,113億㎥)の実に6割を占めていた。同年、日本に次いで輸入量が多かったのは韓国(157億㎥)であり、続いてフランス(92億㎥)、スペイン(67億㎥)、台湾(41億㎥)であった。2008年の日本の輸入量は921億㎥(上述)であり、97年に比べて4割強増加しているが、世界輸入に占める割合は4割に低下している。この間、韓国は2.3倍に増加、スペインは4.3倍に増加してフランスを抜いて世界第3位の輸入国となっている。また97年には輸入実績の無かったインドが2008年には世界第6位のLNG輸入国となっている。(「LNG輸入の比較:1997年 vs 2008年http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-91cLNGImport97vs08.gif参照」。
(天然ガス篇第4回完)
(これまでの内容)
天然ガス篇(4):世界の天然ガス貿易(その1):パイプラインによる輸出入
天然ガス篇(3):世界の天然ガスの消費量
天然ガス篇(2):世界の天然ガスの生産量
天然ガス篇(1):世界の天然ガスの埋蔵量
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前田 高行
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