4月19日、アルジェリアのオランで第10回ガス輸出国フォーラム(Gas Exporting Countries Forum, 略称GECF、末尾注参照)の閣僚会議が開催された。天然ガス価格の問題が会議の主要議題であり、石油価格と連動させた価格方式を導入するための作業部会を設置することが決定された 。
天然ガスの需給は長期契約が主流で短期のスポット契約は少ないが、現在の価格は長期物で100万BTU(British Thermal Units)当たり7-8ドル、スポット物では4ドル程度と言われる。これに対し原油価格はバレル当たり80ドル前後であり、これを100万BTU当たりに換算すると13-14ドルに相当する。このためガス輸出国の間には現行の価格水準に強い不満があり、今回の会議冒頭で議長のアルジェリア・エネルギー相は価格引き上げの為の生産削減を提案したほどである。
但しカタールのアッティヤ副首相兼エネルギー相は会議直前の談話として、会議では生産削減の議論は行わないと釘をさしており、またロシアのシュマトコ・エネルギー相も会議の主な目的は妥当なガス価格を見出すことにあると述べている。このため会議では生産量削減問題は正式議題には取り上げられなかった。
アルジェリアとロシアはガスパイプラインを通じてヨーロッパが消費する天然ガスの40%を供給している。両国が天然ガスの供給者として共同歩調をとりガス価格の引き上げを狙えば西欧各国にとって大きな脅威になることは間違いない。ロシアからのパイプラインによる天然ガスの供給については、これまでロシアとウクライナ間の交渉が暗礁に乗り上げ、ロシア側がガスの供給を停止した例が一度ならずある。このため西欧各国は両国の交渉に多大の関心を抱いている。
今回はGECFが本格的な体制を整えた最初の閣僚会議である。加盟各国が原油価格に比べてガス価格が安すぎると考えていることは間違いない。彼らは原油にリンクしたガス価格体系を樹立するための理論武装を開始した。近い将来GECFは価格引き上げの具体的な戦略を打ち出すものと考えられる。GECFが「ガス版OPEC」に変身する日はそう遠くなさそうである。
(注)
GECFは2001年にイラン、ロシア、カタール、アルジェリアなど世界の主要な天然ガス輸出国によって結成されている。当初は規約、メンバー資格、常設本部組織も無く毎年各国持ち回りで会議を開いていたが、2008年の第7回会議でカタールのアッティヤ副首相兼エネルギー相が議長に選出され、翌2009年にカタールのドーハに本部(事務局長:レオニード・ボハノフスキー、ロシア)が開設された。
GECFの正式メンバーはアルジェリア、ボリビア、エジプト、エクアトール・ギニア、イラン、リビア、ナイジェリア、カタール、ロシア、トリニダード・トバゴ、ベネズエラの11カ国であり、このほかブルネイ、インドネシア、カザフスタン、マレーシア、オランダ、ノルウェー及びUAEがオブザーバーとして会議に適宜参加している。
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