BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2016」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
1.世界の石油の埋蔵量と可採年数
(断トツの埋蔵量を誇るベネズエラとサウジアラビア、両国で世界の3分の1!)
(1) 2015年末の埋蔵量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-G01.pdf参照)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-T01.pdf参照)
2015年末の世界の石油確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は1兆7千億バレル(1バレル=159リットル)である。埋蔵量を地域別に見ると、中東が全世界の埋蔵量の47%を占めている。これに次ぐのが中南米の19%であり、以下北米14%、欧州・ユーラシア9%、アフリカ8%であり、最も少ないのがアジア・大洋州の3%である。世界の石油の約半分は中東地域に存在しているのである。
次に国別に見ると、世界で最も埋蔵量が多いのはベネズエラの3,009億バレルで世界全体の18%を占めており、第二位はサウジアラビア (2,666億バレル、16%)である。ベネズエラは2005年のBP統計では世界6位の772億バレルに留まっていたが、2009年統計では1,723億バレルに急増し、2011年以降は現在のような数値に置き換わっている。このような埋蔵量の急激な増加はチャベス元大統領の在任時の政府発表によるものであり国家の威信を示すための政治的要素が強いが、BPは同国にオリノコベルトと呼ばれる非在来型の重質油が2,200億バレルあると脚注している。オリノコベルト原油はこれまで商業生産の方法が確立できず、石油業界では重視されていなかった。しかし同じ非在来型のシェールオイルやオイルサンドが米国、カナダで急速に市場での存在感を高めている。従ってチャベス後のベネズエラの石油産業で若し欧米の先端石油開発生産技術が応用されるようになればオリノコベルト原油が市場に登場するのも遠い将来ではないと思われる。
BP統計上では埋蔵量が1千億バレルを超える国はベネズエラ、サウジアラビアのほかカナダ(1,722億バレル、10%)、イラン(1,578億バレル、9%)、イラク(1,431億バレル、8%)、ロシア(1,024億バレル、6%)及びクウェイト(1,015億バレル、6%)の7カ国である。これら7カ国のうちサウジアラビア、イラン、イラク及びクウェイトの4カ国はペルシャ(アラビア)湾岸の国である。
以下8位から10位まではUAE(978億バレル)、米国(550億バレル)およびリビア(484億バレル)である。米国は一昨年、埋蔵量を大幅に見直し世界11位となったが、昨年に引き続き今年もベストテンに入っている。シェールオイルの相次ぐ発見と開発の結果である。
なお世界上位10カ国のシェアの合計は85%に達し、石油が一部の国に偏在していることがわかる。因みにOPECの合計埋蔵量は1兆2,116億バレル、世界全体の71%を占めている。「生産量」の項で触れるが、OPECの生産量シェアは42%であり埋蔵量のシェアよりかなり低い。これは生産余力或いは潜在的な生産能力が大きいことを示しておりOPEC諸国の存在感は大きいと言えよう。
(続く)
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